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「エッセイ」雛祭り

私のお雛様は、七段飾りで県で一番高価な物だったと実母が言う。初めて生まれた女の子の孫に裕福だった祖父(実母の父)が、大見栄を張って買ったもので、飾ると当時寝室に使用していた八畳間がいっぱいになってしまった。私達家族はお雛様の時期になると、その隣の六畳の和室に移動して小さくなって寝ていた。
人間よりもお雛様の方が、偉くて高位で居場所を取った(笑)
でも私の記憶に実母と祝った「雛祭り」の思い出はない。三歳のクリスマス・イブに母が家を出て行ったから、あと少し我慢してくれれば「雛祭り」を一緒に祝った思い出が残っていたのにと思う。
新しい継母が来て、最初の年はお雛様を出してくれたが、二年、三年…だんだんと年月が経つうちに寝室を占領してしまう程の雛段飾りを出すのは大変になったのだろう。簡略化され、そのうち私の雛段飾りは物置きにしまわれたままになってしまった。最後にお雛様を見たのは、いつだっただろう。

何度も夢で見たことがある。
専用の箱の中に紙で包まれて眠っている女雛の顔にヒビが入っているのを…
何度も何度も同じ夢を見た。
そのうち、私はそれが夢なのか現実なのか分からなくなった。

子供が全て独立して、両親が大きな和風建築の家を維持するのが苦になってマンションへの引っ越しを決めた時、父から私へ電話があった。

「sanngoのお雛様、市へ寄贈していいかい?」
「いいよ、その方が皆が見てくれるからね」

その時、私は思いきって、ずっと気になっていたことを父に訊ねてみた。
「いいけど、女雛様のお顔は綺麗?割れたりしていない?」
「うん?全部綺麗だよ?どうして?」
「ううん、なんでもない…」

ああ、あれは、やっぱり夢だったんだ。 
良かった。
手離した私の雛様達が、人々の目を華やかに愉しませてくれるといいな…
ずっと眠り続けてきた雛様達が今年も光を浴びると嬉しい。


でも、私の地方では旧暦(4月3日)で「雛祭り」を祝うから、市役所に飾られるのは来月なんだけどね(笑)

雛人形は、その子に降りかかる災厄を払う為に飾られると言われている。つまり雛人形は「厄払い」のための身代わり人形なのだ。
主人が倒れてから、ずっと「女雛の顔にヒビがはいっている夢」を見たのは、夢の中で雛様が私を守っていてくれたのかもしれない。



Mr.ランジェリーさん、また参加しちゃった(笑)
雛祭りの時期と雛人形のお役目、ご存知だったらごめんなさいm(__)m
よろしくお願いします。

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