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「テレビ感想」友情〜平尾誠二と山中伸弥『最後の一年』

昨夜は仕事が忙しくて、皆さんの記事もまだあまり読めていないm(__)m
そんな疲れ果てた私がTverで夜更かししてまで観たドラマをご紹介したいと思う。
ネタばれ、あらすじを含みますのでご注意下さい。



長い闘病生活の末に主人を亡くした私は、しばらく「亡くなる」と分かっているドラマを観る事が出来なかった。
人生に「絶対」はないが、「死」だけは誰にでも確実に訪れる「絶対」だ。
それでもこのドラマは観たかった。何故か心が惹かれたのだ。
「ミスター·ラグビー」と呼ばれた平尾誠二と言う方を実は私は生前知らなかった。亡くなってから日本ラグビー界の今日を築いた方だという事を初めて知った。
平尾誠二さんは絵になるような美しいラガーマンだった。日本人で、あれだけ髭の似合う男は珍しいと思う。端正な顔立ちに強靭な肉体、そして、その身体に宿る精神も素晴らしかった。
あぁ、この人はきっと誰にでも愛され、愛せる人だと思ったのが第一印象だった。

しかし、私が観ているのは本物の「平尾誠二」ではない。本木雅弘と言う役者を通して描かれた彼だ。それなのに、まるで本物の彼を観ているかのような錯覚の中、私はドラマに惹き込まれていった。それだけ本木雅弘という俳優がドラマの撮影中、彼を生きたのだと思う。

本編はタイトルにもある通り、現役で活躍していた彼を描いた物ではない。
「胆のう癌」と言う病気に侵されてからの彼を追ったドキュメンタリータッチな要素も含まれている。

「余命二ヶ月」
突然、宣告された妻 恵子さんは、いったいどんな思いで一緒に病気と闘い、向き合ったのだろう。
恵子さんは仲良くされている女優 賀来千香子さんに
「私は主人が好きでたまらないのよ」
と語っていたという。
好きでたまらない人が、後二ヶ月で自分の前から去ってしまう…思わず、十三年前の自分と重なって感情移入してしまった。
平尾誠二さんは奥様の事を優しく「恵ちゃん、恵ちゃん」と何度も呼ぶ。ママでもなくお母さんでもなく「恵ちゃん」と呼ぶ姿に尚一層、ご夫婦の愛情を感じていた。

そして、そんなお二人を支え続けたのが、ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生だった事に私は驚いた。私にとってiPS細胞の医学界での発表は、遷延性意識障害を患う主人へのたった一つ残された光だと思っていたからだ。残念ながら萎縮し続けてしまった主人の脳には間に合わなかったが…。再生医療の今後の発展を願って止まない。

ラグビー界と医学界という違う分野で活躍された二人が結んだ「友情」がテーマの話だが、その背景にはやはり平尾誠二さんの人柄が大きく影響をもたらしていたと思う。
彼は明るく強く、そして知性的であったと当時を振り返る山中伸弥医師はドラマの中で語っている。
ラグビーを愛する山中医師にとって、平尾誠二という人物は憧れだったとも。

夫婦の愛
家族の愛
友情
そして最後までラグビーへ注いだ愛
平尾誠二さんの愛に溢れた53年間の人生を是非、垣間見て欲しい。

たまたま観た「徹子の部屋」で、山中伸弥医師は言っていた。
「最期の一年間が彼は一番かっこよかった」

本木雅弘演じる平尾誠二さんが、やせ衰えた病床で娘に言った台詞が私の心に突き刺さった。

「結婚というものは相手が何を持っているかではない。何もなくなった時、それでも好きでいられるかが大事なんや」

私の拙い紹介で申し訳ないが、是非
平尾誠二さんからの「ラストパス」を受け止めて欲しい。


合掌




本木雅弘、滝藤賢一
日本俳優陣の素晴らしさに悲しみが深いドラマなのに一縷の望みを見出した私は不謹慎なのだろうか。
思いよ、天へ届け!



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