4.1.2 調査の結果 | さのかずや修士論文

調査結果としては、筆者は大きく下記の3点に対して何らかの可能性が見られることを期待していた。

・オンラインで場をつくれているか
・オフラインに影響を及ぼすことができているか
・地域に「第三の柱」となりうる影響力が生まれる兆しがあるか

下記に、インタビューから得られた発見、気付きについてトピックを挙げ、それらがどのように上記3点に寄与しているのかまとめる。

◆筆者がポジティブに捉えている意見

同じような感覚を持っている人の発見
→共感を生む場の形成

「連載やインタビューを見て、外に出た人はやっぱり地元が恋しいんだな、自分だけじゃなかったんだ、と認識できた」(鈴木さん)
「田舎は狭いから、人のことがすぐ分かるみたいなの(大体のことはみんな知っているという認識)があるけど、全然初めて知った人ばっかだった」「私の中の考えでは、情報がめっちゃ狭いというか、広いところから物事見れないというか、そこのコミュニティだけでいろんなことが完結してしまっている感じがしてて、この人たちすごいみたいな」(江渕さん)
「かなり近い感覚で仕事をしていた、『地域おこさない』という言葉が素晴らしいなと思った」「それを軸にしていろんな人を繋いでいくっていうのが共感した」(西野さん)
「一度載せて頂いている側からすると、例えば、同じようなベクトルの人たちがあそこに書いてあるので、その人となんか交流してみたいなって思えるようになったし、そういう自分の情報を知ってもらえるだけじゃなくて、オホーツク島を介して他の活動を知れるすごく良いツールだなと感じた」(山上さん)

どこにいても地元に貢献できる感覚
→地元に貢献できる場の形成

「この場所のためになることをやれてるっていうことがうれしい」「貢献できているっていう実績のようなものが残せたら、ロールモデルというか、そういう証明になるといい」(鈴木さん)
「若い人たちが見てくれているサイトで、Uターンしたひととして見てもらえるのがうれしいし、ぼくは実家が自営業だから特殊だったかもしれないけど、帰ってきやすい環境というか、「オホーツク島」がひとつの参考になるんじゃないか」「外へ出た若い人たちが、こういう人たちも外出て戻ってきたんだ、自分もまた戻ってこれたらな、と思ってもらえたらいい」(山上さん)

コンテンツを見て自分の意識・行動が変わった
→オンラインで相互に影響を与え合う場の形成、そうした人を介してオフラインにも影響

「『変なことやるべ』を見て、今まではためらっていた『地元の街中で写真を撮る』ということができるようになった」「まだ見えてない人がいっぱいいそう」(鈴木さん)
「自分の地元にも(百貨店社員としての仕事で扱えるような)工芸品を作っている人がいるということに気づけたのは(自分にとって)大きい」「実際動くまではいけていない」「オホーツクとは?ということを考えている人がこんなにいて、オホーツクというのはかくも愛される土地なのか、と気づくことが多い」(田中さん)
「『オホーツク』っていう圏内でものごとを考える、というか、地元のことを前よりは考えるようになってきたような気がする。(町の)広報誌を見ていま人口どのくらいなんだろう、とかみるようになったり」
「『オホーツク島』と名付けてくれたことで、ただの道東って言う感覚よりは、オホーツクっていう地域的な距離、範囲に固まった、それによってここからここまでって自覚できるようになった」
「今まで地元どこ?って言われたとき、『佐呂間』っていうのが恥ずかしい気持ちがあった。言っても場所がわかんないだろうと思って。田舎者意識?みたいなものがどこかにあったのかもしれないけど、『オホーツク島』ってやってくれたことにより、気恥ずかしさがちょっとなくなってきた」「地元に対する微妙な気持ちが前より全然なくなった」
「(さのがトマド氏と「オホーツクが熱い」というやり取りをしているのを見て)面白がってくれるなら出したほうがいいのかな、外から見たら楽しいのかな、と気づいた」「全校生徒20人くらいのクソ田舎だったから余計そういう(田舎が恥ずかしいという)意識があるのかも」
「いまぐらいの年令になって、いろんなこと見たことによって、危機感のようなものが大きくなってきた」「前はそう思うだけだったけど、いまはどうにかできることってあるかな、と思うようになってきた」「ここ1年くらいで思い始めてきたこと」(江渕さん)
「『オホーツク』の位置づけ方ですかね、ここ(北見)にいると中に入りすぎちゃって、周りから見た丁度いい距離感みたいなものが見えなくなってしまう」「こっちに住んでるとそもそも(オホーツクは全部)自分たちが知ってる世界だと思ってしまうけど、実際は北海道の外から見てる人とすごいギャップが生まれている」
「実際にこう奥地に入り込んだ姿だけを見せるんじゃなく、オホーツク全体の「未開の地」感覚が見えてないと、引いてみえるからこそ(外の人の)興味をひける」(西野さん)
「もともと自分たちの会社のことばかり発信していたが、会社に魅力を感じてもらうには地域にも魅力を感じてもらわなくてはならないことに気づき、土地のことをうまく発信してくれる『オホーツク島』や『道東テレビ』と協力して発信したほうが、僕たち的にもプラスになる」「積極的に上手に発信してくれる人たちが現れたことで、その次にどうやったら継続的に住んでもらえるだろう?とかその先のことを考えられるようになった」
「もともと自分たちの会社のことばかり発信していたが、会社に魅力を感じてもらうには地域にも魅力を感じてもらわなくてはならないことに気づき、土地のことをうまく発信してくれる『オホーツク島』や『道東テレビ』と協力して発信したほうが、僕たち的にもプラスになる」「積極的に上手に発信してくれる人たちが現れたことで、その次にどうやったら継続的に住んでもらえるだろう?とかその先のことを考えられるようになった」(山上さん)

コンテンツに参画することで自分の意識・行動が変わった
→そうした人を介してオフラインにも影響

「なんとなくいつかは地元に帰るものだと思ってたけど、真剣に考えながら文章書いてみて『あれ、結構難しいんじゃないか?』って気づいた」「記事を書くために考えてみないとわからないことだった」「『じゃあどうしよう?』という漠然としたところを具体的に考えるようになった、だんだんリアルなことになってきた」(田中さん)
「一番大きなのは、ぼくみたいに戻ってきてくれる人が増えてほしいな、とさらに強く思うようになった」
「あとは例えば…発信の仕方も、見せ方とかもオホーツク島のコンセプトがしっかり通ってるから、ぼくらも発信するときは一本筋を通したいな、と」
「こういう企画を、オホーツクに住んでる人は簡単に発信できますけど、オホーツクに住んでない人がやってるのはいない(から素晴らしい)と思う」
「取材された側としてはめちゃめちゃうれしいですよ、そうなったらその人がオホーツク島のファンになって、もっと紹介したくなる、そういう正の連鎖になったら、そういうひとにどんどん取材重ねていったらいいんじゃないかなと」(山上さん)

周りから嬉しい反応があった
→オンラインのメディアがたくさんのひとに届くことによりオフラインに影響、その事実が影響力が生まれる兆し

「親が喜んでいた」
「10年くらい直接会っていない地元の友だちが『こんな田舎にも面白いことがあるんだ、と思って感動した!』と言ってくれた」(鈴木さん)
「何かしら活動してる人がいる、っていうのが分かるだけでも、取り組みは活発化する」(西野さん)
「ずるいね、って言われましたね、すごいね〜とか。結構みんな見てるんですよ、取材されたそうじゃんって言われたりとか、自慢ですね」(山上さん)

自分もメディア/コミュニティを盛り上げたいという気持ち
→更にメディアの発信力、コミュニティの活動が増し、影響力が生まれる兆し

「もう少し関わりたい」
「お願いされてデザインつくるだけでなく、こっちにいるからこそできることとか」
「Instagramのストーリーとかなら気楽にできるかも」(鈴木さん)
「意外と地方の人材のアーカイブって見たことない、それがきちんと出来上がると活動が活発化していったり、外から地域の見え方も変わってくる」
「こっちにいる人のインタビューの記事化とかはぜひ手伝いたい」
「(地域で活動している人が、インタビュー記事のような形で)メディアとして、コンテンツとして集まって動き続ける、となると、長期的なコミュニティになっていく、それが大事なことだと思う」(西野さん)

☆さほど重要でないが印象的なもの

クマ村長を中心とした解釈の具合がいい
→そのコンテンツをさらに育成

「クマ村長のお陰で、いわゆるウェブメディアと呼ばれるものと違う印象を受ける」
「こういうカラーをもっと出していきたい」(鈴木さん)
「『オホーツク』をどうにかしたい、ではなく『オホーツク』を触媒にして何かをしたい、という(意図を見せている)のがうまい」(田中さん)
「クマ村長と子グマちゃんとフクロウ博士、ああいうユーモラスなのは親しみやすい、堅苦しくない感じ」
「読み手としてわかりやすい」(江渕さん)
「いいキャッチー度合い」
「都会の人がイメージするオホーツクと(オホーツク側から発信したいこと)の距離感が秀逸だなと思って見てる」
「真面目な話とかも、クマ村長とか子グマちゃんとかのやり取りも読んでて楽しい、表現の仕方も」(西野さん)

インタビューのフォーマットが統一なのが見やすい
→編集の工夫を継続

「インタビューとかも質問事項が結構一緒なのは見やすい、やりたいことが見えてる感じ」(江渕さん)

◆筆者がネガティブに捉えている意見

反響がうまく集められていない
→感想共有の場としての完成度の不足、感想を寄せてもらえるためのメディアの見せ方の工夫

「最初のころは身内で『書いてるんだね〜』って言われたとかくらい、だからどう、というほどのこともなかった」(田中さん)
↑↓
「連載やインタビューを見て、外に出た人はやっぱり地元が恋しいんだな、自分だけじゃなかったんだ、と認識できた」(鈴木さん)

まだ実際に行動を起こすまではいけていない
→行動を励起する場としての完成度の不足、行動を励起するほどのオンラインからオフラインへの影響力が不足

「やろうと思えば仕事で扱うこともできるけど、リスク取って主体的に仕事にするような気持ちにはなれていない」
「軍司さんとか山上さんとかがどういう思いを持ってやっているのか知りたい」(田中さん)

顔を合わせることの重要性
→メディアそのものがオンラインからオフラインへ拡張する必要性

「実際(2016年10月のマルチネレコーズ主催の)イベントで佐野さんと会ったことが大きい気がしている。ネット上で知り合っても完璧な知り合いじゃないという感じがあるけど、実際話してよりその人に興味が持てる、さらに興味深く見れる、というのはある。あの時会わなかったらそこまでちゃんと(オホーツク島を)見てないかもしれない」(江渕さん)

☆さほど重要でないが印象的なもの

クマ村長がとがりすぎ
→当該コンテンツの改善

「噛み付くところがちょっとトゲトゲしい」
「これ佐野ちゃん(運営本人の思想が出すぎ)じゃん」(田中さん)


これらをもとに、前述の3つのポイントについて、インタビューを通してどのような意見が得られたかまとめる。

◆誰によってどういう場が形成されつつあるのか

→北海道オホーツク海側地域に関係のある人々による、共感を生み、オンラインで相互に影響を与え合い、どこにいても地元に貢献できる場が形成されつつある

◆誰にどういう影響を与えられているのか

→オンラインのコミュニティに参加している人を介して、オフラインの人(オンラインのコミュニティにいない人)に意識変革や行動を促す影響を与えることができつつある

◆誰に対するどういうかたちの影響力なのか

→メディアの信用と存在感が増し、コミュニティの活動が増していき、その噂が広がっていくことによって、存在感が増していく。さらに地域の既存のコミュニティを巻き込み、地域の民間セクターや政府セクターに対する「オホーツク島」に関係するコミュニティとしての影響力につながる


以上が事後のインタビュー調査によって確認できたことであり、これらは筆者が活動前から予測していたことと非常に良く合致しているものであると考えている。


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さのかずや

Freelance BizDev, Technologist / 新規事業と技術演出 http://sanokazuya0306.com

さのかずや 情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修士論文

さのかずやの情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了時の修士論文「特定の地域にまつわるクリエイティブ・コミュニティ形成のためのメディアの可能性」(2017) を全文掲載しています。
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