1.2.1 自ら問題解決を行うことの意味 | さのかずや修士論文

1.2 研究の目的

この研究の大きな目的は、これまで挙げてきたような絶望と幸福の状況、その中で多くの人々が思考を停止させている状況の中にいながらも、現状に問題を感じている人々が、自分の、あるいは自分の周りの人の力で、自分の、自分の身の回りの問題解決へのアプローチが行えるようになることである。またそうした活動の連環により、ゆくゆく「第三の柱」になりうる取り組みのきっかけを、企業でも行政でもないところからできるだけ多く生み出していくことである。

そのために筆者は、ある地域に愛着を持って暮らす人々、そして離れて暮らしていてもその地域に愛着を持つ人々が、たとえ別の場所で別々の暮らしを送っていたとしても、それぞれのできることを認識し、能力や知識を共有し、協業して地域に関する問題解決を行えるようにしたいと考えている。そうした一連の活動が継続的に行われるための場として、プラットフォームとしてのメディアを制作する。こうした別々の世界で暮らすクリエイティブな人々を、あるテーマのもとに接続し、実際の地域コミュニティに還元していくプラットフォームとしてのメディアの制作、あえて大げさな言葉を使うとすれば、こうしたメディアの「発明」こそが、筆者が行う問題解決であり、筆者が形成を試みる「第三の柱」の中核に位置するものである。

本研究においてはその実践として、筆者の故郷である北海道オホーツク海側地域に着目して、そのメディア、およびそのメディアを制作するための筆者・制作協力者の活動が、どのようなコミュニティを形成し、あるいはどのようにコミュニティ形成に寄与し、そのコミュニティに関わる人々が、ゆくゆく「第三の柱」になりうるような新たな取り組みをつくり、広げていくために、どのような影響を与えることができるのかを検証していく。

ここで重要な要素は、

・個人が自ら問題解決を行うことができるようになる
・複数人で何かをつくることができるようになる
・そのために、誰もがアクセス可能な場ができる
・「地方」に焦点を当てて、この場を形成する

という4点であると筆者は考えている。そのそれぞれの意味についてまとめる。


1.2.1 自ら問題解決を行うことの意味

「自ら問題解決へのアプローチを実践する」ということの意味について考える。

モノやサービスに溢れた現代、単に問題を解決するための商品やサービスは無数に存在する。そのため、大抵の問題は、商品やサービスを購入すれば解決するように考えられる。しかしそれらの多くは、大衆に向けて設定された課題を解決するために記号を付与された商品やサービスであり、個々人が抱く本質的な課題を解決するには至らない、思考を止めて満足させるための「まやかしの幸せ」であることが多いと筆者は考える。

これを踏まえて、真の意味で問題を解決するには、広告や特定のメディア、世の中の空気といった曖昧なものに思考を止めて流されることなく「自分の頭で考える」、つまり本人にとって「何が問題なのか」を定義し、そのための行動に実際に取り組むことが重要であり、それが我々個人にとって唯一の「問題解決」の方法であると筆者は考える。その過程において、自分の問題に取り組もうとすることにより、自ら問題を定義する姿勢をとることができるようになっていくだろう。これにより、受動的な姿勢から脱却できるだけでなく、例えば企業、行政の立場に立って問題を捉えるなど、自分以外の立場に立って問題を捉えるということができるようになるだろう。

1.1.5でも述べたが、インターネットにより世界中のあらゆる情報が入手できるようになったこと、そしてメイカームーブメントに代表されるように個人レベルで使うことのできるツールが爆発的に増えてきていることなど、「限界費用ゼロ社会」に近づくにつれ、個人が制作できるもののコストが極限まで下がりつつある。メイカームーブメント推進者は様々な形で「自ら手を動かしてものをつくることの重要性」を語っており、実践を用いた教育の専門家であるシルビア・リボウ・マルティネスとゲイリー・ステージャー(2013)も、スイスの心理学者・認識論者のジャン・ピアジェ(1976)の、習得すべき心理の伝達よりも生徒が自発的に探求し、真理を発見したり再構成したりする必要があるという「構成主義」という学習理論を引用し、メイキング、ティンカリング、そしてエンジニアリングを通して学習することはこの理論と馴染みが良いということを示している。

また文化人類学者の川喜田二郎(1993)は、創造とは問題解決であり、創造性とは問題解決の能力であると述べている。これは言い換えると、問題解決を行うことこそが新しいものを創り出すことであり、問題解決の能力を高めることがすなわち創造性、クリエイティビティを高めるものであると言えるだろう。個々人が自ら問題解決を行う、それを繰り返すことによって、個々人が持つクリエイティビティを高め、次々と新たなもの、我々が本当に必要なものが生まれてくるだろう。これが「自ら問題解決を行う」ということの最も重要な意味であると筆者は考える。


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さのかずや

Freelance BizDev, Technologist / 新規事業と技術演出 http://sanokazuya0306.com

さのかずや 情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修士論文

さのかずやの情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了時の修士論文「特定の地域にまつわるクリエイティブ・コミュニティ形成のためのメディアの可能性」(2017) を全文掲載しています。
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