見出し画像

国際通りでオラは考えた

去る3月の初旬、私たち夫婦はおそらくは17回目になる沖縄旅行に出かけた。沖縄と言っても、ありとあらゆる観光地名勝旧跡から戦争遺跡まで歩き続けた私たち夫婦には、もう行くべき場所もほとんどなく、あちこちうろうろとしていただけなのだが、以前訪れていた頃の沖縄と決定的に違う事があり、今回はそれを書きたい。

まず、単純に、夜の国際通りは楽しい。山国の寒村に住む私たち夫婦にとって、暖かく賑やかな夜の町はそれだけで十分に歓喜の対象になる。冬なのに寒くないという事実は、襟を立てて急ぎ足で帰宅しなくて良いと言う事だし、また厚着もしなくて良いから、体が軽い。しかも国際通り周辺はお土産物屋さん、個性的な雑貨屋さん、沖縄料理屋さん、そして民謡居酒屋から漏れる三線の音。どれもが、この地の持っている異国情緒をフレームアップし、観光客の脳髄をこちょこちょとくすぐってやまない。そうして寒地の猿山からひょいと飛び出して、南の島へ「飛行機」で渡ったというこの距離感で心もウキウキ軽いし、自然、妻の財布のひもはゆるむから余計楽しい。
さて今回も賑やかな週末に歩いてみた国際通りなのだが、以前通っていた頃の国際通りとは何だか空気が違うのである。そう、圧倒的に近隣諸国からの観光客と思われる人たちが多いのだ。アメリカ人から見たら我々日本人も韓国人も中国人も台湾人も区別は難しいのだろうけれど、意外にアジアの当事者同士だからなのか、大体だけれど違いが分かるのである。その当事者視線で見ると、なべて中国本土からの観光客たちが多そうな気がする、気がするだけなんだけど。
うーーん、間違いなさそうだ、などと独り合点していると、突如として「ホテルに戻る前にアイスをくわせろー」と妻が騒ぎ立てる。やむを得ずホテル近く「雪塩アイスのお店」に寄り、妻が塩を振りかけながら満足そうにアイスを食べている間、私は道行く人たちを詳細に路上観察しはじめた。するとすぐにお店に入ってきた中国人と思われる若い家族が気になったのだ。なぜなら彼らが連れていた男の子、おそらく小学校2,3年生くらいだろうか、坊主頭の脇に一部そり込みが入っている。EXILE?それがユニークだったので、私は彼のお母さんと思われる人に、彼の頭を指さしながらニコリとしてみた。すると彼女もうんうんと頷きながらにっこりと返してくれた。
どこから来たのか聞いてみよう。
私「Where did you come from?」
途端、え?と言う顔。
英語が通じない。いや良く聞こえなかったのかな。
私「Mainland of China?」
再び・・え?という顔をされる。
私「チャイナ?」
すると、首を横にふり
「たいわん」と答えてくれた。
ちょっと嬉しくなって
私「フレンズ、台湾、ジャパン、フレンド」
若い母親が答える
「と、も、だ、ち」
「フレンド」ではなく「ともだち」
私はとても嬉しくなって
「そう、ともだち」
続けて「たいわん。にほん。ともだち」
少年と若いお母さんだけでなく、近くにいた旦那さんもニコニコと笑顔を返してくれた。ただそれだけの話だったけど、そうして手を振ってくれバイバイしながら夜の賑やかな国際通り、いけてる台湾家族と別れたのだ。

他愛もない出来事を、こうして改めて文章化するのには、まあ国際通りを埋め尽くすインバウンドの皆さんに対する私たち日本人の受け止め方を考えてみたいと言うことだけど、でもそこを書こうとすると、国ごとの文化の違いを理解せず、ついつい、偏見や決めつけ、先入観で勝手に発言してしまうという恐ろしさがあって、気をつけなくてはいけない。今回の場合、台湾の人は友達で他の国のひとは、と言う意味ではない。
このインバウンドに関わる話は次回の記事でも少し触れようと思っているけれど、でもちょっと書くと、例えばハワイ。そこへのアウトバウンドである私たち日本人は、現地に住むアメリカ人やハワイアンの人たちに対して、今の中国人たちの先達として、訪問先での誇れる行動を取っているのだろうかという大きな疑問がわいてきて考えさせられてしまう。百歩譲ってハワイにすむ白人たちは日本人を苦々しく思っていると仮定しても、では先住ハワイアンたちは、日本人を友達として見てくれているのだろうかなどと、何だか気が気ではなくなってくる。そんな気を揉むような事がぐちゃぐちゃと頭に浮かんできて、過去に私が旅行で外に出たとき、現地のひとに厭な顔をされた経験など思い出され、少ししんみりとしてきてしまう。まあ、ここ国際通りで見ている光景の裏返しがハワイのワイキキなんだろうからと思うと俄然納得してきて気持ちは複雑だ。
みなさんは、いかがだろうか。
それと今回の経験は、少なくともハワイのワイキキで必須の英語(笑)は、那覇国際通りでは必須という訳ではなさそうで、ホッと胸をなでおろしたのだ。英語は英語圏で使えばよろしい、というオチで今回の話は終わり。