2019/9/18 ベビー・ピーの旅芝居 2019 『ラプラタ川』松山公演

京都の劇団、ベビー・ピーの全国ツアー。
何十カ所も回る日本全国ツアーを定期的に行う劇団はおそらく日本にはもう4つ程しかなく、数年前、ベビー・ピーが各地の軒先を巡る旅芝居でツアーを行い、全国を巡る、そんな劇団が増えるかもしれない、と期待した記憶がある。
そして今回はテントでの全国ツアー。前回は観劇だけだったけど、今回は僕も、友人の泰山さんのお誘いを受け、現地受け入れ協力で松山公演に参加することに。

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ベビー・ピーの旅芝居 2019
『ラプラタ川』松山公演
2019/9/18鑑賞・松山公演受け入れ
城山公園ふれあい広場南側 特設テント劇場

遠く、離れた記憶から届く、微かな、でも確かな気持ちをまとった風たちに、憧れるような爽やかな時間。

移住地で、亡くなった子どもと、その母親、日本人移住者のために現地の人たちによって踊られ始めた芸能。土地に現れた出来事の記憶を残すものごと。
芸能、移民のこと、彼らを取り巻く状況のことを、活動写真で取り続けた日本人のこと。
その失われたフィルムを探しに、球体の反対側へ旅立った映画青年。
青年のあとを追った、人たちのこと。


"そのカメラで、よかったらわたしたちのこと、眼差してくれないかな?
Quiero comprobar el último 'mirada' de Ken."


遠いところから、風が吹いてくるような感覚。土地も、時間も越えて。
風吹くところは眼差しのあるところ。次の眼差しのあるところに向かって。
風に吹かれて、旅立った青年の歩んだあとからは、その道から私たちのところに向かって新たな風が生まれ吹いていく感じがした。

記憶の伝承で起こった芸能は、のちに活動写真として記録に収められた。
その後フィルムが失われても、その眼差し、記憶の過程は芸能となり、再び収められたぶつ切りの記録がまた次の物語へと繋がっていく。

片方の球体からもう片方の球体へ、この移動を祝い、私たちの国では収穫祭の時に必ず上演され、そしてこれから行く国でもきっと上演されていくであろう、私たちの友人が作った劇を、ここに上演いたします。
この言葉が、遠く離れた地の者同士の心と記憶がお互いに大切なものである、と伝えてくれる強い希望のようなものを思う。


この話は物語内だけの話でもなく。
ベビー・ピーの主宰・根本コースケさんは、過去に旅のテント芝居の劇団どくんごに脚本、出演で参加し、テント芝居の全国ツアーを体験している。きっと、今回の旅、各地の協力の人は、劇団どくんごの繋がりの人もきっとたくさんいるだろうと思う。
そのほか劇中で使われた映画のパンフレットは、根本さん自身が、中学生のときに実際に観に行った映画のものだとのこと。
いつかの芸能や記録の記憶たちが、時間を越えて旅芝居、新しい風として繋がっていく。

テントでの打ち上げも楽しかった。
いろんな人とあって話して。テントは、少し壁が取り払われるような。
テント・野外は、予期せぬこと、が入って来る。
通りがかりの人だったり、雨だったり、風だったり。
このお芝居自体は劇場でも上演出来ると思うのだけど、
そんなコントロール出来ない自然や土地と出会い続けて行くことが、
またそれを上演中に演者も観客もリアルタイムで感じ続けることが、
このお芝居の物語にとって、大切なことなんだろうなと思う。

旅の生活は大変なことだらけだろうけど(旅でなくても大変だけど)、新たに生まれたこの気持ちのよい風が、次の風に、何年後か、何十年後かに確かに繋がっていけば良いなと、思います。

http://laplatagawa.donburako.com

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