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三浦半島釣り魚図鑑(15) アカカマス(かます)

秋のある日、カマスブームがやって来た。それまで放課後釣りの釣果は、ベラやカサゴが少し釣れるくらいだったのが、急にカマスが釣れるようになったのだ。日も短くなって来たので、釣りができるのは1時間ほどしかないはずなのに、防波堤の先から投げると面白いようにかかるらしい。

そうそう、今まで釣りはアオイソメなどのエサや、オキアミのサビキで釣っていたのだけれど、このカマスはルアーで釣るのだそう。カマスというのは戦闘意欲が高いので、小さな魚めがけておそいかかってくるのだそうな。なので、イソメなどのエサではなく、キラッと光る小魚のようなルアーめがけて喰いついて来て釣れるという。そして、イワシなどの小魚が回遊して岸の近くに来ていると、それを追いかけて漁港の中までやってきて、まぎれこんだルアーの小魚を食べるので釣れる、ということらしい。

それならば、と私もついていってみたのだけれど、投げられるポイントが限られている中、何人もの釣り人がいるので、投げることすらままならない私がやってみても釣れそうにないどころか、ルアーをなくしてしまうのが関の山なのであきらめた。それでも、昼間から釣りをしに来ている常連さんの釣り人の方たちは、放課後釣りの少年たちが来ると釣れる場所を譲ってくれたり、釣れた時のサポートなどもしてくれているようで、ありがたい。

ちなみに、擬似餌のワームや、餌のイソメでも釣れないことはないようなのだけれど、やっぱりルアーがよく釣れる。子どもたちは釣りの先輩に教えてもらったりしながら、よく釣れるポイントや、ルアーの種類、大きさなどを試しているうちにどんどんカマスを釣るのがうまくなっていった。

釣りたてのカマスは、うろこが薄いピンク色に輝いていてそれは美しい。家に持って帰ってくる頃には、薄い褐色になってしまっているのだけれど、それは夕焼けが映っているからピンクなのか、本当にピンク色なのかは結局未だによくわからない。

カマスにもいろいろあるようで、うちの近くで釣れるのはどうやらアカカマスと呼ばれている種類らしい。本カマスとも呼ばれ、カマスの中でも味がよいとのこと。釣り人や漁師さんも普通にカマスと呼ぶことがほとんどだけれど、このカマスの他に、ヤマトカマスとかクロカマスと呼ばれている種類があるそう。見分け方は、背ビレと腹ビレの位置。こちら↓のサイトを参考にしました。

魚は釣り上げると、背ビレや腹ビレは身にぴったりくっついてたたまれてしまうことが多いのだけれど、手でヒレを起こして見てみると、背ビレのほうが腹ビレよりも後ろについている。これがアカカマスらしい。カマスの背ビレは2つあって、尾に近い部分にももうひとつ背ビレがある。赤と名前につく割には、赤っぽい感じはせず、どちらかというと黄色っぽいように感じた。

他に気になったカマスの特徴は、歯がものすごく鋭いこと。戦闘的だというだけあって、鋭い歯が、受け口のあごにびっしりついている。この歯で小魚を喰いちぎるのに違いない。

そして、あの大潮の日、息子はそれまでにない最高の17匹のカマスを釣って、ヤバイ!ヤバイ!と言いながら帰って来た。たった1〜2時間ほどの時間、投げればすぐに釣れたらしい。一緒に行った友達みんなが10匹以上のカマスを一度に釣り上げていた。後から考えてみたら、その日はほとんど皆既月食だという部分月蝕の日。海は月の満ち欠けとの関連が深いというけれど、やっぱり何かあるのだと思う。

17匹も釣れた日のカマスは、少しづつご近所にお裾分けして、フライ、刺身、塩焼きのカマスづくしで平らげ、それでも食べきれない数匹は一夜干しをつくってみた。開いたカマスを塩水にしばらくつけたあと、夜から次の夜まで、丸一日干す。カマスは身が柔らかい分、水分が多い魚なんだそうで、一夜干しにはもってこいなんだそう。

カマスの刺身は意外にもおいしく、私は一夜干しもかなり好きだったのだけれど、子どもたちは柔らかい普通の塩焼きやフライのほうが好きだというので、手が掛かる一夜干しはそれきりつくっていない。

漁師さんに以前おすすめされて作り始めたカマスのフライはうちでは一番人気で、結局カマスはフライがいいと言われる。3枚に下ろした身を、水と卵と小麦粉のバッター液(卵は少量の時には使わないことも)とパン粉をつけて揚げ、タルタルソースをかけて食べる。パン粉やソースがつくので、唐揚げよりも少量でも満足できるのがいい。そして、おかずとしても魚っぽさが薄いので、魚に飽きていても普通に食べられるのが嬉しい。釣りを釣るという行為ではなく、釣果だけで考えるなら、さばきやすくておいしいカマスのような魚が一番うれしい。

そんな風に食卓を賑わせてくれたカマスも、冬の訪れとともに、ぱったりと釣れなくなった。釣れなくなると足が向かなくなるようで、熱狂的に釣りに通っていたブームも最近ではやや低調。また魚がバンバン釣れるようになるのは春がくる頃なのだろうか。

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