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自転車で訪れるビジネスホテルの新しい活用。山口県のご婦人との語らい。「おかえりプラン」を妄想してみる

旅をしていると,普段お会いしないような人と沢山出会う機会に恵まれます。
そして,なんとなくいろんな方から声をかけられるのですが,旅というのは,知らない人となんとなくふわりとした会話をすることで,人生の中で,また一つ豊かな1ページとして刻み込まれることがあるんですね。

今回は,前回の島根県へ行く前の出来事。下記がスタートだったのですが,「はっ」,と思い出したんですね。

実は,とある仕事で山口県へ訪れまして,その時は周南市のビジネスホテルへ滞在していました。
基本的に大浴場があるビジネスホテルだけを選ぶのでこの日も仕事が終わり,夜遅くに大浴場へといそいそと足を運んだわけです。

大きめの湯船と,4つほどのカランがあるお風呂場。

大きくも小さくもなく,充分に足を伸ばせるし,ゆったりリラックスできるサイズでした。

さて,湯船に浸かっていますと,70代ほどのご婦人,,ということにしておきますがご婦人が入ってきました。

ビジネスホテルだと流石にあまり挨拶をするということも皆無だったのでのんびりしていたのですが,ふいに

「こんばんは。」

と声をかけられまして。ご挨拶なので

「こんばんは。」

と返事をしました。ご婦人から「どこからきたの?」と聞かれたので,「東京です。」と答えると,
「まあ,よく遠いとこからこんなところまできてくれたわねー,ありがとう。」
と,土地へ訪れた外部の人間を快く受け入れて下さいました。
ちなみにこの時期はまだコロナ最中の終焉の頃でして,快く受け入れてくれたので,なんとなくホッとしたのを覚えているんです。

さて,ここからご婦人との会話がスタートします。

毎回不思議に思うのですが,なぜか身の上話をどこの温泉場でも聞くんです。
それは,東北の露天風呂が多かったですが,(また後日記事にしたいと思います),今回はビジネスホテル。

ご婦人には,どうやらお一人娘さんがいらっしゃるようで,広島県に嫁いだそうな。ご婦人は娘さんに会いたいのだけど,なんとなく広島県に行った理由がご主人側の家の方へ嫁いでしまったとのことで,,

「娘に会いたいんだけどね,なんだか会えなくて,,涙がこう,ポロポロ出ちゃうの。」

と,ご自身の目の下から涙がつたる姿を指先でジェスチャーで表現してくれたのです。

涙が,ポロポロって,きっと自分の口からこの人生において一度も発したことのないワードだな,,と聞きながらポロポロが脳内にリフレイン。

話を伺った後で,

「それはお辛いですね。娘さんも寂しがってると思いますよ。」

すると,ご婦人は,

「そうなの,体もそんなに元気じゃないからそんな広島までも行くこともできなくて,それでここに毎月来てるの。」

と,娘と会えない寂しさを紛らわすためにビジネスホテルに来ているということらしいのでした。

「え,毎月来てるんですか?ビジネスホテルに?家はお近いんですか?」

と伺うと,

「近いの。自転車でここまで来てるのよ。」

とのこと。

なんと!自転車で来れる距離で,ビジネスホテルに毎月泊まりに来てるとは!!

と意外にも新しい発想で衝撃を受けたのです。

「ここはね。朝食が美味しくて,それにお風呂もこうやってあるでしょ。だからそれを毎月楽しみにしているの。」

とのこと。

なるほど,ビジネスホテルというのは,ビジネスに限らず,ある人のある角度から見れば,
それは東北の露天風呂と変わらぬ癒しの空間になるのね,と腑に落ちたのでした。

だから,ビジネスホテルであっても,誰かにとっては,

とても楽しみにしていた極楽な温泉場

であって,そこで出会った人はきっとおしゃべりを楽しむことができる社交場になるのだなあと。

と,お話を伺っている間に,,気がつけばのぼせ寸前なわけです。(これもよくあります)

「近場で楽しみがあるって素敵ですね。」

と感想を述べ,失礼します,とお風呂場の交友を後にしたのでした。

東京へ戻ってからも,なんとなくご婦人のような方は多いのだろうなと考えてました。

ようするに,高齢化社会において,旅に行きたくても,

足が悪くなって遠出できない。でも,ちょっぴり非日常を味わいたい。

とか,

大きなお風呂と朝食を楽しみたい。
夜にたっぷり食事をとりたくない人は健康や血圧の問題から控える人は少なくありません。
だから朝食だけ楽しみたい。
非常にわかりやすいコンセプト。

などがリアルなニーズとしてあるのですね。
それは住んでいる家から近ければ近い方がいい。

自転車で来れる非日常。

私が思っていたようなビジネスホテルの概念をご婦人はとても良い意味で崩してくれたのです。

そう,ビジネスホテルとは,ある人から見れば,止まり木のような寝る場所にすぎなかったり。

しかしながら,ある人から見れば,非日常空間の素敵な温泉場でくつろげるひとときの場所であったり。

もはや自転車で訪れる温泉場とは,私の新幹線で出かける旅と変わらないんです。

だから「こんにちは。」,という挨拶や出会った人との対話もご婦人は楽しみにしているのかなとも。

だって旅だから。

であれば,毎月来て良かった,と思ってもらえるおもてなしを主体とした,サービスの構築をしてみても良いのではと思います。

きっと,ご婦人たちは,

「おかえりなさい」

と言ってもらえたら,もっと喜んでもらえると思うんです。

月に一度だけ,楽しみにお越しくださる方への

「おかえりプラン」

こうして,地域の人たちを見守る場所であっても良いのかなと。

人は必ず最後は1人。

最期まで「おかえり」って言ってもらえる場所が近くにあったら,
幸せだろうなー。

と,朝食会場で嬉しそうな笑顔でいるご婦人の方を見て思うのでした。

お読みいただきありがとうございました。

沢山の愛情が広がりますように。

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