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2024上位校頻出問題① 流水算+旅人算

今年の入試を振り返って

2024年の中学入試もひと段落しました。筆者も解説を書く予定だった学校はほぼ書き終え、それ以外にも気になる学校の入試はいくつか解き終えました。1月から合わせるとのべ60校ほど解いたのですが、その中で難関校に関して気になる出題をいくつかまとめていこうと思います。

各学校の算数の解説は他の記事をよろしければご覧ください。

流水算の出題が気になった

「流水算」といえば、流れの速さを加味した算数の速さの問題です。
たとえば、200mの川のAB間で、流れの速さが10m/分のとき静水時40m/分の船が下るときにかかる時間は、
            200÷(40+10)=4分
になるアレです。川の流れの速さを加えたり引いたりしている点で、単独でも旅人算と近い処理をするのが特徴です。

これが難関校では「流水算+旅人算」として出題されていました。
たとえば麻布中の大問3

2024年麻布中入試問題より

次に女子学院中の大問7

2024年女子学院中入試問題より

さらに洗足学園中(第3回)の大問3(4)

2024年洗足学園中入試問題より

麻布中、女子学院中の入試では勝負を分けそうな大問になります。麻布中は試験時間が十分にあることを考えても避けて通れないでしょう。
女子学院中は試験時間が40分しかなく、これが最後の大問であることから、他の問題に時間と労力を振り切って正答率を高めれば合格自体は十分できると考えています。
一方、洗足学園中は取り上げた3問の中では際立って難しく(流水算+旅人算までにいく過程が長い)、受験生のレベルを考えても解いた受験生はほぼいないでしょう。大問3(4)という小問の1つであったことからも、捨てても精神的にも得点的にも影響はほとんどありません。


「流水算+旅人算」の解き方

基本的には他の速さと同じです。ただ、組み合わせ方によって「流速」が相殺(打ち消し合う)することが出来ます。具体的にみてみましょう。

○麻布中の問題


①②のケースともに、向かい合って進み、出会っています。速さだけに注目すると、
① (ア静+流)+(イ静ー流)= ア静+イ静
② (イ静+流)+(ア静ー流)= ア静+イ静
とどちらも速さ(の和)が同じになっています。
よって、①、②のどちらの船も進んだ時間は同じであり、進んだ距離がそのまま速さの比になります(時間一定というやつですね)。

まとめるとこんな感じ。あとは流水算の基本である、流速が一定の場合は上りの速さと下りの速さの平均が静水時の速さであるということを使って答えを出しましょう。


○女子学院中の問題


こちらも基本的には麻布中の解き方と同じです。

①の速さ(の差)は、(J静+流)ー(G静+流)=J静ーG静
②の速さ(の差)は、(J静ー流)ー(G静ー流)=J静ーG静
(計算に関してはプラマイの話ではなく、線分図を用いるとスムーズです)

と、どちらも一定であるので、①と②の進んだ距離の差の比が
            1920:2400=4:5
よって、その差が開くのにかかった時間の比も4:5になります
(速さが一定だから)。
それすなわち、J子のAB間の下りと上りにかかった時間の比が4:5ということなので、速さの比は5:4になります。

(それ以外の答えは(2)320、40、9600、(3)15,47です)

○洗足学園中の問題

こちらは上記図に辿り着くまでが長いので、簡単に。
この形は上りの最中に落とし物ををした等の状況でよく出題されるので、ぜひ知っておきたいパターンです。
図から旅人算の形を探すと、
ア=□÷{(静−流)+流}=□÷静
イ=□÷{(静+流)−流}=□÷静
となっていることが分かります。
つまり、どちらの時間もかかった時間は等しくア=イとなります。
(問題の答えは50m/分です)

かつて灘中の入試で出題され、様々なテキストでも見かける問題です。でもほとんどの受験生は初見では解けないでしょう。経験していれば解けるタイプの問題です。
個人的には、誘導がある大問で出題されると美しいかなと思います。前半で速さを組み合わせる作業に慣れ、そこから自分で組み合わせることに気づかせるような問題など。いきなり出題されるとびっくりした受験生が多かったはずです。出題する側もムズカシイ・・・。

ここから学ぶべきこと

さて、私がこの記事を書いた理由はこの流水算の問題を解けるようにしておこう、ということだけではありません。難関校で出題された問題は他校の参考問題となります。また、難関校はこのレベルのことまで求めているという点から、じゃあ通過算ならどうなるのか、時計算なら、動く歩道やエスカレーターなら・・?という別の分野での深堀りにつながっていきます。
(この辺りからは研究するのは講師の仕事なので、任せてください)
来年度以降、受験生が学びを深く、そして正しく学習できるように我々講師や保護者の皆様にも何か気づきになるようなことを残していけるようになればと思います。

次回も別の分野での紹介をします。あと2つほど書きたいことがあります。
お楽しみにお待ちください。

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