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AKBのビジネスモデルを需要曲線から考えてみる

今日の話はアイドルグループのAKBです。

が、AKBの話をするまえに。。。。


簡単に需要曲線の説明をする


みなさんは需要曲線というグラフを見たことがありますか?

こんなグラフです

これはどういうことを意味しているかというと、あらゆる商品やサービスは、世の中の需要というものが価格と連動している、ということです。

もっと単純に言えば、
・価格を高くすれば需要が落ちる(売れなくなる)
・価格を安くすれば需要が増える(売れる)

ということを示しています。

この概念自体は私もなんとなく理解していたのですが、このグラフの重要性に気がついたのは私が経営大学院で「ミクロ経済学」を受けていたときです。この概念を適用するだけで、多くのビジネスモデルが理解しやすくりますし、非常に使いやすい考え方です。

ちょっと例で考えてみましょう。

ある腕時計の例

腕時計があったとします。そして消費者が二人(Aさん、Bさん)いたとしましょう。

Aさんはこの時計を5,000円なら買いたいと思っています。
Bさんはこの時計が非常に気に入り、10,000円出してもいいと思っていたとします。

この場合、時計の価格をいくらにすればいいでしょうか。たとえば7,000円に設定したとします。そうすると5,000円なら買いたいと思っていたAさんは購入をしません。一方で10,000円出しても良いと思っていたBさんは、価格が7,000円ですから、当然買ってくれます。

つまり売上は

Aさん→0円(買ってくれない)
Bさん→7,000円(買ってくれる)

ということで、7,000円になります。

では価格を5,000円にしたらどうでしょう。
同じように考えれば、今度は先程は買わなかったAさんは、5,000円なら買ってもいいと思っているわけですから、今度は買ってくれることになります。当然10,000円の価値を感じているBさんも、5,000円なら喜んで買ってくれますので、

Aさん→5,000円(買ってくれる)
Bさん→5,000円(買ってくれる)

ということになり、売上は10,000円。となります

売上だけを考えれば、価格を5,000円にした場合が10,000円で、7,000円の場合が7,000円なので、価格の設定は7,000円より5,000円のほうがよかったということになります。(材料費とかを無視していますが)


ここで重要なのは、価格は通常一つしかつけられないことです。売上を最大化するためには、Aさんに5,000円、Bさんに10,000円で売り、合計で15,000円を売り上げることです。
ですが、一つの価格ではそれは不可能です。

逆に言えば、その人が潜在的に持っている、モノやサービスの価値の最大金額を払ってもらえれば、売上は最大化されます。Aさんに5,000円、Bさんに10,000円払ってもらうのが一番いいですよね。



AKBのビジネスを需要曲線で考える


実はAKBグループは、この需要曲線を考えると、画期的な事業モデルです。AKBについては、みなさんもご存知でしょうが、どういった仕組みなっているかを改めて整理します。

・AKBは日本の女性アイドルグループ
・コンセプトは「会いに行けるアイドル」
・全国各地に姉妹グループが存在(海外にも姉妹グループ)
・総勢数百人ものアイドルが在籍
・専用会場での講演、コンサート、CDの販売
・握手会の実施(実際にアイドルと会話ができる)
・総選挙の実施(ファンからの投票で、人気No.1を決める)

ざっと説明するとこんな感じです。(すいません、私はファンというわけではないので、だいたいの説明です笑)

東京だけでなく、地方都市などへの展開や、ファンを引きつけるための握手会や総選挙制度など、そのマーケティング戦略は緻密そのもの。全くアイドルに興味のない私でも、AKB登場以前とAKB登場以後では、この領域のビジネスモデルが一変したと分かるほどです。事実、AKBの事業モデルに類似のアイドルがその後多く出現し、業界のスタンダードモデルになったと言っても過言ではありません。


私がこの中で最も注目しているのが「総選挙」の制度です。これが間違いなく彼らのビジネスを大きくした大きなエンジンの一つです。


さきほど説明した需要曲線から考えてみましょう。AKBのファンと言っても、その温度感は当然バラバラです。”毎月3,000円くらいなら払ってもいいかな”と思うライトなファンもいれば、”全財産をつぎ込んだって惜しくない”と思っている熱烈なファンもいるはずです。

この総選挙、よく知られている話ですが、ファンの投票権は1人1票ではありません。CD1枚につき1票です。つまり、1人で何百票も投票することが可能になります。

つまり、上記の3,000円くらいなら払っても良い、と思っているライトなファンだったらCDを1枚買えばいいですが、全財産をつぎ込んでもいいと思っているファンであれば、100万円分投票権を買っても良いのです。

何百枚も投票権を獲得するためだけにCDを購入した猛者の話を聞いたことがあるかもしれませんが、実際に数十万単位でCDを購入したファンは少なくありません。

これは需要曲線で考えれば理想的な収益モデルになります。3,000円しか払いたくないというライトなファンと数十万払っても良いというファンの両方を取り込むことができ、そして彼らが感じているAKBに対する価値をギリギリまで支払ってもらうことができます。

需要曲線の総取り、に近いことをしているのが、AKBの総選挙という制度なわけです。

これは、あらゆるビジネスでやりたくても、なかなか実現できないことです。


ちなみに、AKBは「1円も支払いたくないが、曲は好きだ」というユーザーも一定の収益を上げることに成功しています。それはYoutubeです。

こちらがAKBのYoutubeチャンネルです。
(姉妹グループはチャンネルが別)

AKBのYoutubeですが、彼女たちの楽曲をフルで聞くことができます。チャンネルの視聴回数 1,733,373,948回(2019/07/13現在)です。

これ、桁がわけわからないですよね。17億回です。

ユーチューバーの収益が1再生0.1円くらいと言われていますので、これだけで1.7億円の収益をあげていることになります。

1.7億円ですよ・・・。

この再生回数に寄与しているのは当然ファンたちですが、1円も払いたくないという人もその多くが、彼女たちの曲をYoutubeで再生しています。

つまり、AKBに全くお金を払いたくない、というファンからすら、一定の収益を上げることに成功しているのです。



これと対象的なのがジャニーズです。ジャニーズはこれとは別のモデルで事業を拡大しているのですが・・・。それはまた別のお話。


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