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短編小説 小人との対話 ~タマゴの黄身と白身⑧上の子編~

『今回は、ある少女のところへ小人さんが現れたお話しです。どうやらタイトルに①とついているので、もしかしたら②以降もあるのかしら…と想像してみるのですが、どうでしょうか。いや、いつの間にか『①』が消えていることも考えられなくもありませんが…小人さんのみ知ることかもしれません。』

⑧上の子編です。とうとう完結です。
あとでこの『タマゴの黄身と白身』は纏めて独立させたいと思います。
多分、有料で読まれる方はまずいらっしゃらないことと思いますが(笑)、万が一読みたいと思ってくださった方は、今は読まずに、纏まったときにお読みいただければと思います。

過去の短編8話分纏まった『小人との対話』は、こちらです。↓

小人との対話『タマゴの黄身と白身』⑦まではこちら↓


では、タマゴの黄身と白身⑧上の子編のはじまりです。

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タマゴの黄身と白身⑧ 上の子編


とくさんが逝ってしまった。
あっという間だった。
苦しんだと言える。
苦しむ時間は短かったとも言える。
でも、短かろうが長かろうが、苦しんだのには違いない。
あたしには、どうすることもできなかった。
数時間前、とくさんは娘を連れて実家に行っていた。父しかいなかくて、三人でしばらく待っていたけど、母と妹は出先からなかなか帰って来ないからと娘と家に戻ってきたのだった。
それからお風呂に入って、なんだかんだ、いつものように談笑して、寒いのにアイスを食べて…
それからどのぐらい時間が経ったのか、1時間だったか、2時間だったか、急に苦しがって、そのまま息が止まってしまった。
最初はいつものようにふざけているのかと思ったけど、それは尋常じゃない苦しみ方で、あたしは気が動転してしまって、震える手で救急車を呼んで、その時時計は2と11あたりを指していた。その時にはもう動かなくなってしまっていた。
病院に運ばれて、到着して施されたことは、死の確認だけだった。日を跨いでいたから、亡くなったとされる日は翌日になってしまったが、呼吸が止まったのは明らかにその前で、多分、1月11日の11時11分だったような気がする。
こんなに急に、こんなにあっけなく、人って死んでしまうの?
子どもたちはどうするの?
あたしはどうしたらいいの?
え?本当に死んでしまったの?
嘘なんじゃないの?
とにかく、何が何だかわからなかった。さっきまで、ふざけて話していた人が、今息をしなくなってしまったことを、どうやって受け入れればいいのだろうか。
それでも、ここにずっといるわけにはいかない。私は、実家に電話を入れた。真夜中だ、起きてくれるだろうか。すると、すぐに父が電話に出てくれた。
 
「お父さん、とくさんが死んじゃったの。」

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