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スタジアムを折れて

 スタジアムを折れて相生町一丁目の交差点を右に進む。二つ通りを過ぎたところにある駐車場でなんだかよくわからない会議をやっている車を横目に見ながらずっと歩いて本町に出ると爽やかな潮風が流れるのを感じる。まだ海は見えない辺りだが、もう海辺なのだと思うと少し開放的な気分になる。後ろではデイゲームの喧騒が聞こえる。ちょっとしたお祭りのような町なのだ。
 少し見上げてジャックに挨拶をして、クイーンを横目で見ながら県警の前のカフェで一休みして、前はbankartで運河を眺めながらビールを飲んで二時間近く時間を潰したことを思い出した。一人にしろ二人にしろそれは中々楽しいことだ。友人の可愛らしい黒髪の娘がクイーンズスクエアで働いていて可愛らしいその顔を拝みにいってもよかったのに、いざとなったら気恥ずかしいのと、眺めていてたまらなくなったらどうしようか?と思っていたら手前の手前で通りを眺めて時間を潰す算段になったのだった。横浜は不思議なところで、ハードボイルドが似合うけどファンタジーは中々難しい。怪談は坂の上にでも沢山転がっているが、埋め立て地には寂寥とともに近代の歴史が眠っている。海から山手までもしくは大岡川の川上まで川の間の町はちょっとした出会いに溢れている。
 静かな時も騒がしい時も同じ感触で広がる横浜の時間は独特の味がある。少しの勇気で開けていくのだ。

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