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#28 人生のほとんどがスクリーンタイムになる世界で

昨晩、東京で在宅オンライン学習に励んでいる!?大学生の娘と電話で話した。彼女の目下の悩みは「家にいても大学から出された課題はなかなかはかどらず、気づけばスマホで延々とインスタのおすすめ動画を見続けてしまったりする」ということだ。そして、スマホを使った時間が分かる、スクリーンタイムを見ては「昨日は5時間!今日は7時間!?」と、長時間スクリーンを見続けていることに愕然とし、落ち込むのだという。分かるよ、分かる。私もそう。大好きな海のすぐそばに暮らしている息子だって、家にいる時間の大半はスマホ片手にゴロゴロしている。

「なぜかスマホが手放せない問題」は、before colonaからの問題で、昨日今日始まった問題ではない。といっても、以前はそこまで酷くなかったように思う。私がスマホを使い始めた10年ちょっと前は、今ほど使いまくっていた気がしない。よくよく思い出してみると、以前のスマホは確か動画も見れなかったし、音楽も聴けなかったし、写真撮ってもすぐにメモリがいっぱいになってしまったし、充電が持たなかったし、ネットにつないでも遅いし、PC用のホームページが上手く映らなかったし、通信料も結構高かった。私が最新機器に疎かったこともあるが、今ほど高機能ではなかったのだ。

それが2020年の今、スマホは私たちの望みの全てを詰め込んだ夢のマシンとなっている。映画館に行かずに映画が観られるし、テレビより面白いドラマや動画が無数にあって、これも見たい放題。CDプレイヤーやウォークマン(古っ!)が無くても古今東西、好みの音楽が聴けるし、新聞無くてもニュースはだいたいわかるし、本を買わなくても読み物はいっぱい、パソコンが無くてもググれるし、レシピだって、切り抜いてスクラップしておかなくても、いつでも検索できちゃう。出歩かずに買い物もできるし、ポチっとやるだけで出前もしてくれるし、ライブハウスに行かなくてもライブ中継で楽しめるし、飛行機に乗らずとも世界中旅行できる。憧れのアイドルの朝習慣もわかるし、友だちにも会えるし、恋人にも出会えるし、なんならお化粧してなくてもお化粧したみたいにして話せるし…、もう、スマホ1台あれば、無人島でも怖くない!気がしてしまうくらいに何もかもが詰め込まれてる(Wi-fiがないか…)。こんなすごいマシンを手にしているんだから、スクリーンタイムが増えないわけがないじゃん!

とはいえ、とはいえだ。「肝心なことはスマホでは無理」だったはずなのだ。before colonaでは。お仕事は職場に行ってするものだし、授業は学校で受けるものだった。人生の中でも特に長い時間を費やす仕事やお勉強は、リアルじゃないとダメ、だったはずなのだ。そして、仕事や勉強の後、友だちとランチをしたりカフェで楽しいひと時を過ごしたり、お疲れ様!と飲み会をしたりするのは、「スマホでは無理」だったはずなのだ。

それが今はどうだろう。仕事も勉強も飲み会すらもオンラインになりつつある。本当に素晴らしいことだと思う。こんな状況下でも仕事をしたり勉強をしたり飲み会したりすることを続けられる環境をつくってくださる方々がいることに感謝しなくては、と思う。ありがたいこと、恵まれていることなのだとは重々承知のうえで、ちょっと心配になるのは子どもたちが”画面”に接する時間、スクリーンタイムだ。

もちろん、この先いつかは、以前と同じように、普通に通勤したり通学したりできる日々が来るはずだし、その日が1日も早く来ることを待ち望んでいる。けれども、その時は「仕事も授業も意外とオンラインで行けるね」となって、いろんなところでオンライン化が進んだ社会になってるのではないかと想像する。それはとてもいいことで、そうなってほしいとも思うのだけど、子どもたちの人生におけるスクリーンタイムは確実に増加するんだろうな、とも心配になってしまうのだ。

昭和生まれの私の人生は、よく考えてみると半分くらいは、スクリーンなしの人生だった。でも2000年代以降に生まれた子どもたちは、一生のうちどれだけの時間をスクリーンタイムに費やすことになるのだろうか。まあ別に、スクリーンタイムが長いこと=悪ではない。確かに首や腰は痛くなり、眼にも良くはないけれど、貴重な情報が得られるし、生活には無くてはならないものだし、なにより、本人が楽しければ別に問題ないじゃないか、と思えば、それはそうだ。

けれど、なんだろう。娘がスクリーンタイムの長さに落ち込んでしまう気持ちもよくわかる。とりたてて見たくも知りたくもなかったあれやこれやを長時間ダラダラと見続け、後で虚しい気持ちになり、自己嫌悪してしまうことが、私もある。たぶん、何も考えず、ぼーっとしてちょっと楽しい気分になりたい、ただそれだけなのだ。そう、授業の合間に友だちとたわいもないおしゃべりをするときみたいに。

家に閉じこもっていて、今学期まだ一度もクラスメートに会っていない女子大生は、友だちとわちゃわちゃしゃべりたい。けれど、それが叶わないから、思わずスマホを手にしてそんな気分になれそうな動画を見続けてしまうのだと思う。早く大学に行ける日が来てほしいね。そして、その日が来たら、できるだけその時間を楽しめるように、スクリーンと上手くつきあう方法を見つけていこうね。

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