衝撃!密着!出産24時!-その3-

先日の検診で、予定日より遅れるだろうと言われた。臨月に入ると、お腹の位置(胎児の位置)が下がってきて、出産に向けた体作りは仕上げにかかるのだが、私のお腹はまだ高く、準備が整っていなかった。

それなのにこうして分娩室にいるのだから、今、私の体は大急ぎで準備をしていることだろう。このドタバタが私らしいといえば私らしい。そしてきっと、同じようにポコも大急ぎで身支度しているのだと思う。

ポコ、がんばろうね。慌てなくていいから、どうか、無事に、元気に生まれてきてね。

ああ、もう少しでポコに会えるんだ・・・!

分娩室に入ってから、どのくらい経っただろう。一体、今は何時なんだろう。

「失礼しまーす」という声と共に誰かが分娩室に入って来た。配膳係のおばちゃんが昼食を運びに来たのだ。なるほど、今は昼食時らしい。配膳係のおばちゃんのお陰で、時間を知ることができた。

この先どのくらいかかるのだろう、この痛みと苦しみはいつまで続くのだろう。

あいたたたた・・・!

ポコ、やっぱりなる早でおねがい!!!

PM12:00 病院/分娩室

おばちゃんが運んでくれた昼食は、手をつけられることなく冷めていく。とにかく食欲がなく、食べる気になれない。この食欲なさは、風邪をひいたりして食欲がないのとはわけが違っている。

「食べないとこの先がんばれないから、がんばって食べましょう!」と助産師さんは言うが、私は心の中心でNOと叫ぶ。
「こんな時に食えるかー!」(朝食ぶり二回目)

食べ物を口に入れて噛み砕き、飲み込んで消化する、そんな当たり前のことが今の私にとっては極めて困難な作業なのだ。

他にも困難なことがある。トイレだ。

度々、助産師さんに手を引かれてトイレに行く。だけどもトイレなんてできれば行きたくない。体勢を変えると痛いし、歩くのも辛いし、呼吸が乱れて苦しいし、なんか吐き気までしてきた。

しかし、尿がたまると産道が圧迫され赤ちゃんが出づらくなってしまうのだそうだ。そういうことなら這ってでも行かねばならない。赤ちゃんのためならエンヤコラだ。

目指すトイレは、分娩室内、5歩も歩けば着く距離にある。なのに、やけに遠く感じる。着いたら手すりに捕まり、そのまま壁にもたれかかるようにダラリと便座に座り、そのまましばらくはトイレに缶詰になる。トイレに行く度にスッキリするどころかグッタリなのである。

まるであの日のようだ。私は酔っ払い、トイレで身動きがとれずにいた。ワインを飲んだわけでもないのに吐瀉物は赤く、体が震え、寒くて寒くて、あの時はこのまま死んでしまうんだと思った。だけど今日の方が何倍もキツいし、いよいよ死にそうである。

「がんばっておしっこしましょう!」私の下着をおろしながら、助産師さんが励ましの声をかけてくれる。人に励まされておしっこするなんて、そうあることではない。出来る限り声援に応えたいとは思うのだが、残念ながらおしっこは出てくれない。

おしっこなんて、こうして便座に座っていれば勝手に出るもんだと思っていたが、私たちはふだん、多少なり力むことでおしっこを出しているらしい。ということを身をもって知る。しかし、今は到底力めそうにない。

だって痛いんだもん!

ううう・・・・・・!

食事もトイレもままならなず、激しい痛みに苦しみ、汗とかいろいろぐじゃぐじゃになりながら、必死に闘う私の姿を、ゲゲは今、どんな気持ちで見ているのだろう。

ゲゲ・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・・そういや、ゲゲは?

つづく


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リリス

十月十日道中膝栗毛

妊娠発覚から出産まで 山あり谷あり 十月十日の旅記録
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