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シンデレラ臨ムーン

書きそびれていることも色々とある気もするが、ひとまずそれらは置いておき、ついに、臨月に突入!という話。十月十日なんてまだまだ先だなんて思っていたら、あっちゅー間に臨月に入った。Xデー(予定日は4月30日!)はもうすぐだ。

妊娠中にちょっとずつベビー用品を揃えて出産準備を整えるもいるだろうが、のんびり屋の私とゲゲは、
「Amazonで注文すればスグ届くし・・・」
と、やっぱりのんびりしていた。

しかし、臨月となればさすがに最低限のものくらいは用意しておくべきだろうか。出産が予定日より早まる可能性だってある。となると、急いだ方がいいかもしれないぞ。

もしも今、早まって産まれてしまったら、ポコを裸のまま家に連れて帰らなければならない。産まれたてのポコにまだ羞恥心が無いとしてもかわいそうだ。出産やつれしてヨレヨレの私が、裸で泣き叫ぶポコを抱いて病院を去るのを想像して焦りだした私は、慌ててAmazonを開くのだった。

しかし参った。いざAmazonを開いてみても、何が必要なのかわからない。まずはネットで情報を集めて、必要なものを書き出すところからだ。
「・・・こんなにたくさん色々いるんだ!」
完全になめていた。

さらに、オムツにしてもおしりふきにしても、ベビーカーや抱っこ紐にしても、メーカーやら形やら素材やら値段やら、たくさん種類があって、目が回りそうだ。
一体どこの何を買えばいいのだろうか。またもやネットで情報を集めては、Amazonでポチった。急がないものはひとまずほしいものリストに入れておいた。

ネットでは、どこかの見知らぬ先輩ママたちや専門家たちが、ありとあらゆることを教えてくれているので助かる。
"オムツは産後でも大丈夫。肌着は用意しておこう。ベッドや布団は3ヶ月もすればいらなくなる。ガーゼはいくつあってもいい。母乳パッドはいる人といらない人がいる。粉ミルクはココのが売り上げNO.1だ。春夏生まれの赤ちゃんにはメッシュ素材の方がいい。"

アカチャンホンポも西松屋もない街で暮らす身としては、それらがAmazonでスグ注文出来、なる早で届くのも助かる。
「本当にスグ届いたな・・・」
翌日か翌々日には、さっそく肌着とロンパースが届いた。こんなに早く届けてくれたにもかかわらず、Amazonはニッコリと余裕の表情を見せるのである。ありがたい。

届いたそれらを出して広げてみると、あたりまえだがとても小さかった。来月にはコレを着ているであろう小さな生き物を守るのが、これからの私とゲゲの使命だ。そう思うと、なんだかたまらなくなって、思わず肌着をギュッするのだった。

しかし、小さいとは言え、お腹の中にいる分には十分デカい。今現在私のココにいて、もうすぐココから出てくるなんて、私の体は真っ二つに裂けたりしないだろうか。私の頭に浮かぶのは、北斗の拳で敵がヤられる時のあのイメージだ。
病院で「何か心配なことや聞いておきたいことはないですか?」と度々聞かれるが、まさか「北斗の拳の敵みたいにならないか心配です」なんてバカなこと聞けないので胸に閉まっているが、かつてない恐怖心でいっぱいだ。

もちろん、先輩ママたちを見る限り、そんなことにはならないのだろう。しかし、どこからどう自分の体を見たって、赤ちゃんのサイズと自分の体を比べてどう考えたって、物理的におかしい。こんなとこからあれくらいのものが出てこられるわけがない。実際アソコが少し裂ける(そうなる前にメスで切る)わけだが、そりゃ裂けるわ!と思う。想像上の痛みに、思わず股間に力が入る。

しかし最近は、医学の進歩のおかげで、無痛分娩というありがたい分娩方法が広まってきている(とは言え、まだ出来る病院は限られているし、費用もかさむらしい)。
出産が痛くないなんてそんなことがありえるのか。どういうわけかよくわからんが、あみ出した人は天才だし、最高だし、それなら10人くらい産めそうな気がするし、絶対絶対、無痛分娩がいいに決まっている。

なのに私は、自然分娩で分娩することにした。
「え!僕なら迷わず無痛分娩にするけどなぁ...さおりんはすごいなぁ...」
ゲゲには感心までされてしまったが、単に、クリニックに紹介された病院では無痛分娩をやっていないというだけで、だったら無痛分娩をやってる病院に移ればいいのだが、うんまあそういうことなので、大した決意をしたわけでもなくて、病院選びをサボった結果と言えばそうで、全くすごくないのである。

もちろん、それだけが自然分娩を選んだ理由ではない。痛いのは嫌で嫌で仕方がないのに、なんとなく、痛みを知っていた方がいいというか、知りたいというか、そんな気がして、気持ちが無痛分娩には至らなかった。
もしも、紹介された病院が無痛分娩をやっていたらそうしたかもしれないが、わざわざ病院を移ってまでしたいとは思わなくて、こうなったという感じだ。

これまで私は、なるべく楽な方へ楽な方へ進み、我慢も努力も出来るだけ避けてきた。そんな、ぬるま湯に浸かりすぎてふやけきった私の心身が、無痛分娩でなく自然分娩という意外な(余計な)方向性を見せたので、自分でも驚いている。

母は強しと言うが、それなのか。そう言われれば(別に言われてないけど)強くなった気が、したのもつかの間、Xデーが近づくにつれ不安が増大し、メッキが剥がれてきた。
「やっぱり無痛分娩にしときゃよかった!!」
と後悔したところで、今さらなのである。

出産の痛みについては、鼻からスイカとか肛門からボーリングの玉とか、わけのわからぬ例えがたくさんあるが、どの例えも、とにかく尋常じゃなく痛いことを表している。
なにが"痛みを知りたい"だ。知らなくてすむ痛みをあえて自ら知りに行くなんて、バカみたいだ。鼻からスイカが出る痛みなんて知りたくない。

しかし、病院はもう変えられないので、腹をくくるしかない。せめて上手く「あべし!」と叫べるようにしておこう。Xデーはもうすぐなのだ。

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