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あけましておめでたでございます

大晦日は、ゲゲと二人で自宅でゆっくりと過ごした。年越しそば(出雲そばに海老天トッピング)を仲良くすすりながら、「ガキ使」を観て笑いおさめ。どこにでもあるような大晦日である。

ここのところ、毎年大晦日は仕事だった。こんなにゆっくりと過ごす大晦日は何年ぶりだろう?思い出せないくらい久しぶりのことだった。

カウントダウンパーティーで盛大に賑やかに年を越すのもいいけど、そばのお出汁がホッと染み入るような年越しもいいものだ。(歳かな?)
それに、今は妊娠中の身。カウントダウンパーティーなんて行かなくても、充分スペシャルな年越しだ。

年が変わる瞬間まで、妙にはりきったゲゲが逐一報告してくれた。「あと5分だよ!」「あと3分!」「あと1分だ!」「5.4.3.2...」

そして、0時・・・

「「あけましておめでとう!」」

こうして私たちの2016年がはじまった。

年が変わって間もないうちに、ゲゲと友人とで初詣に出かけた。人ごみ嫌いな私の初詣は、いつも人が引いた三が日過ぎてからだったけど、今年は出産のことがあるので早々に行くことにした。

何かお願いしたいことがある時ばかり、虫のいい話で神様には申し訳ないけど、神様はそんなことで怒ったりしないはずだ。と思いながらも一応その分、お賽銭はふんぱつした。

ゲゲと二人で鈴を鳴らして、パンパン!

「「元気な赤ちゃんが産まれますように!」」

安産祈願したのちに、みんなとおみくじを引いた。一番運勢の悪かった人が、出店のたこ焼きを奢るというルールのもと、せーの!で開いた。

吉!小吉!末吉!吉!小吉!

みんな同じような結果だった。誰が一番悪いのかよくわからなかったので、たこ焼きはみんなで買って食べた。

ちなみに私は小吉。出産については「易し 安心すべし」ということだった。それに加え、なんとなく穏やかであたたかな一年になりそうな句までしたためられていた。

長閑なる 春の野中を 家人と
心安けく 行く心地かな

安産祈願のお守りは、ゲゲの希望により白い袋に入れてもらった。それは、ミルクのような優しい色のものだ。

きっとこれで大丈夫。

実家には帰らなかったけど、初詣をすませて、あご出汁のお雑煮を食べて、特番を観て、ゆっくりと元日を過ごした。これまたどこにでもある元日である。

しかし、翌日のことだ。お風呂上がりに乾燥対策のボディークリームを塗っていた時、体に異変が起きた。

妊娠効果で期間限定ボインになった私の胸の先から、何やら液体があふれ出たのである。

!?

期間限定ボインにクリームを塗りこむ際、それなりの圧がかかる。その圧により、何かの液体が絞り出されるようだ。それがまた、ミルクのような優しい色をしているのだ。

まさか、母乳!?

「ゲゲちゃん!見て!何か出る!」

今年一番の出来事(そりゃそうだ)に戸惑った私は、恥じらいを捨ててゲゲの目の前で絞り出して見せた。

「まさか、母乳!?」

ゲゲも同じ意見だった。

私は試しに舐めてみた。それも、とっさに自分の胸を持ち上げて、舌でペロッと直に舐めたのだった。
ゲゲはそんな私を見て、何してんの?とギョッとして笑った。(もしかしたらこれが初笑い?)
そして、自分で舐められるくらいに私の胸がボインになっていたことに、二人で驚いた。(期間限定だけど)

それはさて置き、液体の味である。

「甘くない...というか苦い...」

その苦みはボディークリームの味だと思われた。いまいち液体そのものの味はわからなかった。

そもそも、母乳にはまだ早いような気がした。そうなると今度は病気じゃないかと心配になってくるものだ。

調べてみると、それは母乳でも病気でもなく、分泌液らしかった。母乳に含まれる栄養素などは一切ないただの液体。

「な〜んだ...」

にしても、妊娠して、体がどんどんと変わっていくのを実感する。そして、妊娠していることを実感する。

それは、嬉しくもあり不思議でもあり可笑しくもあり驚きもあり、神秘的でもある。

膨らんだお腹も、期間限定ボインも、丸くなった顔や体つきも、肌荒れも、変動する食欲も、胸からあふれ出る分泌液も、増えていく体重も、私の中に小さな命が在るという印なのだ。

そうして小さな命は合図する。ここにいることを、めいっぱい、私たちに教えるのだ。

北の方に積もった雪がとける頃、君に会えるね。

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