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ママはもんだいガール

6ヶ月になる頃からようやく膨らみ始めたと思ったお腹は、グングン膨らんでいき、7ヶ月になる頃には一目で妊婦だとわかるくらい膨らみまくった。そしてそれは現在進行形で膨らみ続けている。

昔、元祖巨乳アイドルの細川ふみえが、自分の胸が大きすぎて足元が見えないということを言っていたのを思い出した。
私も今、自分の足元が見えない。見えるのはパンと膨らんだお腹の曲線である。(胸もそれなりに大きくはなったが...)
「細川ふみえが言っていたことはこういうことか!ていうか私よくそんなこと覚えてたな!」

今では細川ふみえの気持ちも、太っている人が靴下を履きづらいという気持ちもわかる。何気ない生活の動作も、以前と同じように動くのが難しくなってきた。寝転んで『相棒』の再放送を観るのさえ、体勢を選ばないとシンドイ。

「これもダメ、これも、、、これもダメだ!」
服もサイズが合わなくなった。ウエストに余裕があったジーンズは、ボタンどころか社会の窓さえ閉めれなくなった。これなら大丈夫だろうと袖を通したワンピースも、元の可愛いシルエットを描かない。
「着るもんがねええええ!」

ブラジャーも苦しいのでしなくなった。服によってはノーブラがバレるので、仕方なくすることはあるが、ほぼノーブラだ。
というより、ノーブラでもバレないような服を着るようにしているので、大体ノーブラである。そしてノーブラでもバレないような服を着るようにすると、大体同じ格好となる。

しかし、私は服が好きで、オシャレを楽しみたい人なので、ノーブラを基準にした服選びは、自らの楽しみを奪う行為なのだ。毎日とは言わない。せめて外出する時、三日に一度でいいから、オシャレを楽しみたい。
買い物に着て行く服がないから、ネット通販サイトでマタニティ用の服を探してみる。マタニティ用のブランドやショップは色々とあるようだが、売っているのは似たような服ばかりだ。
黒のジャンパースカート、ボーダーのスウェットワンピース、裾が長めの紺色のカットソー、それに超ハイウエストのレギンスを合わせる以外の服はないらしい。

赤文字系青文字系たくさんのファッション雑誌やブランドがあるのに、妊婦系となると急に選択肢が取り上げられてしまうのだ。
確かに妊婦の服は、機能性が大事になってくる。締め付けないとか、お腹の赤ちゃんに優しいだとか、授乳しやすいとか、楽チンだとかを妊婦は求めている。
「だからといってそれに応えたら皆この服になるのか?これ以外の服はありえないのか?形はいいとして、せめて色とか!」
そして結局何も買わないでサイトを閉じるのだが、三日に一度のその日になれば、あんな服でも注文しとくんだったと思うのだった。

しかし、そんなことは些細な問題である。もっと深刻な問題が『かゆみ』だ。かゆみに比べれば、動作のし辛さや着る服のことなんてゾウにハエがとまるくらいのもんだ。ハエにとまられたゾウも意外と鬱陶しかったり困っていたりするかもしれないが、そんなのは例えである。

私は幼少期からアトピーに悩まされてきた。アトピーの症状は、個人差があるものだが、私の場合、症状が出たり出なかったり、その都度、軽度だったり重度だったりバラバラだ。
環境の変化やストレス、なにかちょっとしたキッカケで症状が出たり、悪化したりする。かと思えば、自分がアトピーであることを忘れてしまう程、症状が出ないこともある。

アトピーは完治することはない。かゆみを抑える薬を塗り必死で体質改善をし、症状を抑えることは出来る。しかし、それは一見治ったように見えても完治ではない。アトピーの特効薬を作ればノーベル賞だと言われている。

妊娠をすると体質が変わり、症状が出なくなる人がいると聞き、私は淡い期待を抱いていたのだが、その期待は打ち砕かれ、実際には、妊娠してから、残念なことに悪化した。

はじめは、ちょっと肌が荒れたのを感じたくらいだった。そのうちにあちこちがかゆくなった。我慢できないほど、夜も眠れないほど、かゆくて仕方ない。血やカサブタや赤みで、見た目も醜くい。鏡で自分を見るのが怖いくらい。その辛さとイライラが募り、またかゆくなるという悪循環に陥った。

皮膚科に行って塗り薬を貰った。妊娠中のステロイド剤は赤ちゃんに悪影響だという説もあるようだが、産婦人科と皮膚科の先生に相談してみると、心配ないということだった。それよりも、眠れないとか辛いとかが体や精神によくないから、最適の治療を施すのがいいと言われた。今は塗り薬と保湿剤でなんとかしのいでいる。
(※この辺りは先生や状態によるみたいです。同じような悩みを持っている人も、自己判断せず病院で相談して治療して下さい。)

私の場合、もともとの体質によりかゆみと闘わざるをえないのだが、妊娠中は、そうではなくてもかゆくなることがあるそうだ。
特に、お腹。お腹が膨らむ際、皮が引っ張られることで乾燥しやすくなり、かゆくなる。中には眠れないほどのかゆみに襲われ、苦しい思いをする人も少なくないようだ。

妊娠したら毎日幸せ。未来を夢見て、胎動を感じればよろこんで、お腹をさすりながら優しく声をかける。感動的な出産ののち、天使のような赤ちゃんの寝顔に癒される。
なんていいことばかりと思っていたら、つわりにかゆみに肥満、胸の痛み、情緒不安定、出産の激痛に夜泣き、我慢が山ほど待っているのである。

「かいーよー!かいーよー!」
私がかゆそうにしていると、ゲゲが薬を塗ってくれる。背中など手の届かないところを塗ってくれるのは助かるし、実はそんな時間を気に入っている。
もちろんかゆみなんて無い方が万々歳なのだが、文字通りかゆいところに手がとどく気持ちよさと、背中から聞くゲゲの声と伝わる手のぬくもりが心地よい。この時間を過ごせるなら、かゆみも悪くないと思える。

たかがお腹の中に収まる程度の小さな生き物が人に与える影響は、そのサイズからは想像できないほど大きい。

赤ちゃんは私にありとあらゆる影響を与えてくる。小さくても命。なめてもらっちゃ困ると言わんばかりだ。
その影響は、決していいことばかりではないが、きっと無事に生まれてきてくれたら、全て吹っ飛ぶのだろう。小さな手が私を掴めば、そんなことも良かったと思えるのだろう。

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