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迷子の迷子の子猫ちゃん

noteを見るようになって、短歌や俳句に接する機会が増え、短い言葉で、季節や思い出や奇跡を表現するのって素敵だなって思います。また、今って初秋なんだーとか、季節感を感じられてとても嬉しいです。

さて、先日、おしゃれ女子を気取って、前に書いた「家出用のリュック」で、東京のとある街に繰り出した。アップダウンの多い道の横道に逸れると、雑貨屋さんや隠れ家的なカフェやレストランがある。おしゃれ女子たるもの、雑貨屋をのぞいたり、表にでているカフェのメニューを眺めたりする。が、お昼どきをすぎても、まだ私はランチを食べられずにいた。

そもそも、いちいちお店がおしゃれすぎるのである。隠れ家的すぎて、入ったら二度と出てこられないのではないかと思ってしまう。札幌に住んでいたころ、雑誌に載っているおしゃれカフェ巡りをしていたら、ふらりと入ったお店が、仲間うちだけのお店だったらしくてすごく気まずい想いをしたり、財布を忘れて同僚に届けてもらったり(それは私のせい)、いろいろと失敗をして、すっかりおしゃれカフェが苦手になってしまったのだ。(普通のおしゃれ女子はそこから楽しみを見つけだすのだろうなー)

ということで、夕方の時間になっても私はランチが食べられず、とっくにその街のおしゃれ界隈は通り過ぎて、高速道路の近くの大通りに出てしまった。とにかく、どこかの駅に行くしかないので、青看板を見て、駅名のほうへ歩いていく。おしゃれな路地ではない。

橙が空から溶け出した夕方の時間。地元民に愛されていそうな中華料理屋やそば屋も閉まっている。コンビニばかりにやたら出くわす。バス停にいつまでも来ないバスを、永遠に待っているかのような初老の女性がベンチに腰掛けている。自転車で脇を通りすぎる人がいる。セミの鳴き声と、大通りを走る車の音。(未来では、車の音なんてしなくなるのだろうか)じんわりと汗がリュックのひも部分に接している服を濡らす。

まったくおしゃれでもない、目的もない、発見もない、情緒も出会いも経験もない、ただひたすらに、歩いているだけだ。というより、これはあれだ。迷子だ。

それでも私は、楽しかった。
なんか知らないけど、歩いていて楽しかったのだ。

ようやく地下鉄の入り口の看板が見えた。駅のすぐ近くに「サブウェイ」があった。ランチタイムなど関係がない、チェーン店のサンドウィッチショップ、最高である。

そうして私の何にもない冒険は終わった。帰りの地下鉄でシートに座って、私はびっくりするくらい疲れていてすぐに眠ってしまった。耳に歩いていたときのセミの声と車の音がなんだかこびりついている。

夕飯の材料を買って帰ろう。

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