ファイナルデスティネーション

(2017/4/24 改訂…一度PCから投稿したものをiOSで編集したせいか、文章の一部がきえてしまってわけわかんないじょうたいになっていたのでかきなおしました)

前頁では階名(移動ド)について説明したが、今回扱うのは、より包括的な「度数」という概念である。階名が、ある調の基準音からの距離を表すのに対して、度数は、特定のある音を基準とした距離を表す数字だ。これは特に、ハーモニーや和音の構成を語るのに役立つ。これらは楽曲の調よりも、はるかに頻繁に移動するためである。

やや脇道に逸れるが、ある二音間の距離のことを「音程」ともいう。よく音痴な歌などを指して「音程が悪い」と言ったりするが、これは使い方としては誤りで、音の高さのことはそのまま「音高」あるいは「ピッチ」と呼ぶ。


さて、音楽に関するあらゆることと同様、度数もまた暗号からなる。以下に、度数による距離(音程)の表記法を列記する。

ドを基準としたとき、レは2度、あるいは長2度と呼ぶ。鍵盤があると理解しやすいが、基準のドを含まずに数えて2半音めにあたる音だ。あいだの半音、ド#ないしレbのことは減2度、あるいは短2度と呼ぶ。増1度と呼ぶことはあまりない。

次はミだ。ドを含まずに数えて4半音めのこれは、3度ないし長3度と呼ぶ。半音下にレの#、ミのbがあるが、これは増2度、あるいは短3度と呼ぶ。減3度と呼ばれることはまずないが、これは3度の存在は和音の長短に直結するためだと考えられる。やってればわかるという意味の、初歩の暗号だ。

その次はファで、ドを含まずに5半音めである。これは4度、特に完全4度と呼ばれ、長4度と呼ぶことはほとんどない。半音下はミなので、これをわざわざ短4度や減4度と呼ぶこともほぼない――呼べば禅問答の世界に入ってしまう(厄介なことに、音楽の世界には禅問答を好む人々が少なからずいる)。

なお唐突に出てきた「完全」とは、周波数比的に響きが明快であるためそう呼びならわすものだ。実のところ、これについてはデカイことを言うなりの使い道がある。おそらく次か、その次の頁で述べることになるだろう。

ソもまた完全である。ドを含まずに数えて7半音め。5度および完全5度と呼ばれ、赤ドラのように使いでのあるやつだ。半音下のファ#・ソbは増4度、減5度、短5度、どれを使ってもよく通じる。和声的な重要度が高いのは増4度なので、耳にする機会がやや多いかもしれない。

ラは蒼井そらであるが、こちらは完全ではない。ドを含まずに数えて9半音め、6度ないし長6度と呼ばれる。半音下がると第一に増5度であって、短6度だの減6度だのと呼ぶことは稀である。

11半音めとなるシは7度、あるいは長7度と呼ばれる。半音下がれば短7度で、和声的な重要性が図抜けて高いため、それ以外の呼び方をする機会はほとんどないと言っていい。とはいえ、ゼン・マインドを重んじてみてもいい。

そうしてドに戻る。1オクターブ上のドは完全8度と呼びたければ呼んでもいいし、完全1度と呼んでもいい。しかし、長を用いることはない。また、増7度という呼び方もまずない。なお、8度以降を使う機会もある。おもに9,11,13とそれらの増減(減11と増13は通常、使わない。数えてみてほしい)だが、これらは和声機能的には優先度が下がるし、第一に複雑・複合的なので一旦、脇に置く。


さて、これで一通り説明し終えた。仰りたいことはよくわかる。ほぼ省略できるならばなぜ「長」などと言うのか、増・減・短の使い分けがあまりに恣意的ではないか、それ以前になぜ同じ音に複数の呼び名があるのか、等々。

これらは、まだ説明していない、調と和音の関係、和声機能、記譜法などをご理解頂ければ、ある程度までは説明がつくと思う。のだが、それらすべてを記述することができるかどうかは、残念ながら未知数である。どうかご寛恕を。


駆け足気味に呼び方を紹介したが、重要なのは概念である。これらの度数はそれぞれに機能を有する。また、階名を調に対するもの、度数を「その時鳴っているある音」に対するものと区別しておくと利用価値が高い(当然、階名もそれぞれ、調に対しての機能を持つが、対象が楽曲全体に亘るため、よりファジーであると言える)。

今後説明してゆくつもりの、さらに混迷をきわめてゆく暗号の解説に、この度数は役立つはずである。例えば、「雑にハモるならメロディに対して第一に3度で第二に6度」「ハーフディミニッシュは短3短5短7」「ルートがⅠで長3度と短7度が同時に鳴ってるからⅣに解決するセカンダリードミナント臭い」といった暗号が、もう半分程度は読み下せるのではないだろうか。


次回は和音構造の解説を行うつもりだが、先に嫌なことを書いておかねばならない。和音の話では、度数にローマ数字を用いる。なんで?

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