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割り切るという潔さ

新しい職場での1週間が、ようやく終わった。

オリエンテーリングやら事務処理やらなのでたいしたことはしていないし、終わる時間もずっと早いのに、家に着くとぐったりと疲れきって何もできなかった1週間だった。

新しい環境は気が張っているので、気疲れするのだろう。また、初めてデスクが与えられて制服ではない仕事。毎日ちゃんと化粧をし、背筋を伸ばしてジャケットを羽織って、顔の表面に薄い笑みを常に張り付けている。それだけで疲れる。

5月から、助産師としての現場をしばし離れ、母校の助産学校で働いている。初日は延々とPCの前で事務処理をして死ぬほど退屈で、早くも後悔していた。今ごろ、前の職場ではお産でバタバタしているのかな。GW明けだから外来も立て込んでいるのかな。同じ仕事でも、こんなにも違う時間の流れ方があるのかと驚く。ユートピアのようなあたたかい場を離れ、私は一体何をしているんだろう。そう思うと泣けてきた。

とはいえ、17時半には仕事が終わり、明るいうちに帰路につく生活はとても新鮮だった。前の職場ではありえないことだ。明るいうちに家を出て、明るいうちに帰ってくる。そんな生活はいつぶりだろう。帰り道、山陰道を運転しながら右側の車窓から見える、日本海の水平線の水色と、夕空のピンク色のなんともいえない淡い境界線には、ため息がこぼれた。こんなに繊細で美しいコントラストを、私は今まで見たことがない。そして、私が山陰道を通る20分のうちに、みるみる日が落ちてピンクが茜色になりどんどん濃く強くなっていき、淡かった境界線のコントラストがくっきりと明確になっていく。そんな過程をずっと右手に見ながら帰ることができる日常は、とても贅沢だと思った。

何のために環境を変えたのか。自分で自分に問い直す。今までの大好きな環境を離れてでも、私は自分の時間を作る道を選んだ。そしてこれを機会に、曖昧だったことを今一度学び直すことにしたのだ。

退屈だった初日を終え、生徒さんと接する時間が増えてくると、少しずつ楽しくなってきた。人に教えるためには、自分が勉強し直さないといけない。助産学診断の授業で出て来たペーパーペイシェントの事例を見ると、前はただの紙面上の情報だったものたちが、立体的なイメージとして浮かび上がってきた。なんなら、具体的な人の顔さえ浮かぶ。4年間、現場で出会った数百名の妊産婦さんたちから感覚として学んだことを、系統的に知識として落とし込む。今は、そういう時間。そう思うと、頭がクリアになりやる気が湧いてきた。

自分にとって大切なことと、ある程度で割り切るべきこと。それらに優先順位をつけて、時間をつかっていきたい。来週は、もう少しプラスアルファに取りかかれるといい。ひとまず、今週はお疲れさまでした自分。

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