【メモ】三十歳 バッハマン作

久しぶりに新たなお気に入りの一冊に出会ったので、取り急ぎメモ。オーストリアの戦後女性詩人のインゲボルグ・バッハマンの三十歳から一部引用。若さの持つ情熱と傲慢さが歳を重ねる中で色褪せていき自省せざるを得ない主人公の心理描写とその比喩表現が的確過ぎて本当に読んでいて胸が痛くなるレベル…。以下引用

それまで彼は日々単純に生きていた。…自分にたくさんの可能性を見出し、例えば自分は何にでもなれると思っていた。…何か有用な仕事の為に勉強をするが、それが自分の最終的な職業とは思いたくなかった。…どんな時にも、友情に対して、恋愛に対して、無理な要求にイエスと言ってきた。そのすべてが仮の試みであり、待機中の状態に過ぎなかった。世界は彼にとってキャンセル可能であり、自分自身もキャンセルがきくように思えたのだ。

…自分が本当は何を考え、何をできるのかを示さなければならないこと。自分にとって大切なものは何か、告白しなければならないこと。千と一つあった可能性のうち、ひょっとしたら千の可能性をすでに浪費してしまったこと、あるいは自分に残るのはどっちみち一つなので、千の可能性を無駄にせざるをえなかったことなど、…

彼は考えもしなかった、何も恐れなかった。

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