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ストリップ資料けんさん3「ストリップ全解」(大洋図書)

2000年に発売されたムック本。
 これはねー、正直、よく出版できたと、心から拍手を送りましたよ。
この頃、ストリップ劇場はまだ人気がありましたが、雑誌業界は下火に向かっていた。大洋図書と言えばミリオン出版、私の連載を掲載してくれていたワイレア出版「S&Mスナイパー」などの親会社。なんとなくの懐事情は知っていましたからね。

 このムック本、今までのストリップ関連本と大きく違うところは、踊り子自身が文章や絵画を描いている。もちろんインタビューや、記者による記事も豊富だが、踊り子の「ナマ」の言葉が読み取れるのである。そして「時代」の移り変わりがよくわかる。
 表紙を描いた卯月妙子は「表紙頼まれたけど、私、変な絵しか描けないし、万人受けなんてどうしよう。どんな絵なのかな」なんて悩んでいたのを思い出す。でも編集人はそこを期待して、卯月妙子に依頼したのを聞いていた。

表4

 これまでの踊り子インタビューは「苦」が多かった。これは踊り子も好んでステージに立っている人ばかりではなかったし、記者も「苦節」ということを望んでいたのではないか、と思うのだ。
 いや、この時代でも「苦」の踊り子さんはいたが、好んでステージに立つ踊り子の方が多くなってきたのだ。

 本書で登場する踊り子さんは、皆、ステージを真剣に作っている。
「藤乃」「蒼真鈴」「四谷桃子」「伊藤舞」「翔沙織」「卯月妙子」「不二子」「早瀬みな」「チャコ」「乱」「黒木純」「梶原恭子」。
それぞれが個性的なステージだった。ソロベット、ポラロイド、自縛、花電車、コミック白黒。演目は多様だった。

 私はこの時代にガッツリ劇場に出ているが、なかなか各踊り子さんと深い話ができない。私が人見知り、と言うこともあるが、私の演目も「自縛」と言う特殊なので、こちらから話しかけづらい、と言うのもある。なので、こういった記事はそれぞれの踊り子さんの心情がわかり、本当にありがたかった。


 そして当時、劇場記者としてコラムを持っていたライターたちも写真や随筆を提供した。これは珍しいことである。もちろん時代背景もある。ストリップ記者など数名しかいなかったのが、1990年代頃から増えてきたからだ。このムック本はいろんな視点からストリッパーという職業がわかる本になっている。

 特筆すべきは「踊り子事典」全841名のこれまでの踊り子の名前とデビュー、一言コメントが掲載されている。
これは凄い!ネット情報から集めたと思うが、それをまとめたという労力。あっぱれでございます!もちろん全てが本当とは言い難いが、丹念に検索した労力は本当に凄い。
 この1冊で当時のストリップ劇場の雰囲気がよくわかるし、ストリップ史も読めるのである。

私は今でもこれを読んで、当時を思い起こし、原稿に書き起こしている。
各踊り子さんのインタビューを読み返すたび、当時の状況を思い出すからだ。

 ムック本ということもあり、決して垢抜けた本ではないが、ストリップ劇場、踊り子の気質を垣間見る本として、とても貴重な作りである、と私は思い、今でも大切にして、何度も読み返しているムック本の1冊である。

表紙卯月妙子

http://ag-factory.sakura.ne.jp/



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