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【鋼の錬金術師の作者】荒川弘先生の経歴|「命の本質」を描き至高の名作を生み出し続ける農家出身漫画家【銀の匙】

こんにちは。Saraです。

今回ご紹介するのは、ダークファンタジー漫画「鋼の錬金術師」の作者として有名な荒川弘先生です。

ハガレンは、2001年から「月刊少年ガンガン」にて連載が開始され、コミックスの全世界累計発行部数は8,000万部を突破。

アニメ化、映画化、実写映画化もされ、連載が終了した今なお根強い人気を誇る世界的大ヒット漫画となっています。

作者である荒川先生は、「ハガレン」の他にも「銀の匙」「百姓貴族」「アルスラーン戦記」など、数多くのヒット作品を生み出し続けている圧倒的ヒットメーカーであり、

また、実家は北海道で酪農と畑作を営む農家で、荒川先生自身も農業高校を卒業後約7年間は社員の1人として農家で働き、

25歳で農家から転身して、大人気漫画家となった珍しい経歴の持ち主でもあります。

今回は、そんな荒川弘先生の経歴や、数々のヒット作品が誕生するまでの経緯についてご紹介していきます。

動画版はこちら。

経歴

1973年5月8日生まれ、北海道出身。家業として酪農と畑作の両方を営む家に生まれます。

物心ついた時から絵を描くことが好きであり、チラシやカレンダーなどによく落書きをしていたそうで、子供の頃から「漫画家になりたい」という夢を持っていたそうです。

保育園の頃に姉が好きだった楳図かずお先生の「洗礼」と「まことちゃん」を読んで、同じ人物が描いたとは思えない真逆の作風に衝撃を受け、

また、同時期に村の図書館にも通うようになり、そこで水木しげる先生の「妖怪百科」や田河水泡先生の「のらくろ」を舐めるように読んで模写していたそうで、

これらの作品は自分の漫画家としての原点だと語っており、この頃は動物の漫画ばかりを描いていたそうです。

ちなみに、荒川先生が最も影響を受けた作品は、「うる星やつら」「らんま2/1」などの「高橋留美子作品」だと語っており、

小学生の時に「うる星やつら」を読んで「これはとてつもないものを読んでしまった!」と感じ、

それまでは「子供の落書き」止まりでしたが、「うる星やつら」を読んでからは、「漫画の描き方」を意識して絵を描くようになったそうです。

ちなみに、高橋留美子作品は、漫画家になってからも強く影響を受けているとのことで、特に「うる星やつら」は「教科書、聖書、経典」と語っていますね。

そんな学生時代を過ごし、農業高校を経て、高校卒業後は6歳離れた弟の進路が決まるまでの間、中継ぎ的に家業である実家の農家を手伝うことになります。

荒川先生は、この時は既に「弟の進路が決まったら本格的に漫画家を目指そう」と考えていたため、

農家を手伝いながらも漫画を描き続けており、同人誌を描いてコミケで売ったり、歴史雑誌やゲーム雑誌に4コマ漫画を投稿したりなどを繰り返していました。

その後、約7年間農家として務めあげ、弟との進路が決まると同時に本格的に漫画家を目指して活動を開始し、25歳の冬から投稿作の制作に取り掛かり始めます。

ちなみに、ちょうど作品を描き始めたタイミングで祖母が入院してしまい、病院で付き添いをしながら漫画を描くことになったり、

さらに、投稿〆切一週間前に両親が九州旅行に行ってしまい、家事・農事全てやりながら漫画を仕上げることになったりなど、

投稿直前はとにかく時間がなくて、睡眠時間が1日15分になるくらい追い込まれながら必死に制作したそうですね。

そして、26歳の時に完成した作品を「月刊少年ガンガン」へと投稿し、この時の投稿作である「STRAY DOG」でエニックス21世紀マンガ大賞を受賞。

これがそのまま「月刊少年ガンガン」にて掲載され、漫画家デビューを果たします。

ちなみに、投稿先として「ガンガン」を選んだのは、自分が描いている「ファンタジー」というジャンルが「ガンガン」の色にあっていたことと、

この時に描いていた作品のページ数が多くなってしまい、応募条件に当てはまるのがたまたま「ガンガン」だったからだそうですね。

そして、賞金を基に上京し、アルバイト、アシスタント、読み切り掲載などをしながらひたすら漫画制作を続け、読み切り版となる「鋼の錬金術師」を制作。

当時、「ハガレン」は読み切りとして描いていましたが、この時にたまたま「ガンガン」で新人を対象とした連載コンペがあったため、

担当編集から「コンペに出すから来月までに連載用に描き直してください」と言われ、急遽連載用に練り直し、見事コンペに通過したことで、2001年から「鋼の錬金術師」の連載をスタートさせます。

鋼の錬金術師

「ハガレン」は、「錬金術」「兄弟」「賢者の石」という3つのコンセプトを軸に物語が展開されていきますが、

荒川先生は、まず始めに「賢者の石」をコンセプトにしたいというアイデアが思いつき、そこから「賢者の石を入れるなら錬金術は絶対に入れたい」と考えたそうで、

また、「地面や壁から好きなものがどんどん出てきたら面白いんじゃないか...」と思いついた時に、

当時はまだ錬金術を扱った連載作品がなかったことから「何で誰も描かないんだ?誰も描かないんなら、自分でやっちまえ!」と考えたことから、錬金術をメインに構想を練り上げていったそうです。

ちなみに、荒川先生はリハビリセンターのアルバイトで義手の人と関わったことがあり、この時の経験も「ハガレン」の構想のきっかけになっているそうですね。

また、「ハガレン」は、「命の誕生」や「戦争による死」など、キャラクターたちのさまざまな「死生観」や「倫理観」が柱として描かれていますが、

これは荒川先生の実家が農家ということもあり、幼少期から「動物の生き死」や「クローン問題」を見てきていることや、

北海道で熊が出る地域であったため、「死はいつでもそばにある」「命は無駄にしてはいけない」という環境の中で育ってきており、

これらの経験が「ハガレン」の奥深さにもなっている「命に関わる要素」に繋がっていると語っています。

ちなみに、「ハガレン」を連載するにあたり、掲載誌である「ガンガン」を分析したところ、当時の「ガンガン」には「中世的な絵」が流行としてあったそうですが、

荒川先生は「この流行はあくまでも「今現在」であってこれを真似したら一歩遅れる...」と感じ、雑誌の中で浮くために、「ハガレン」では敢えてゴリマッチョ系・白黒はっきり系の絵を意識してキャラクターを作り上げたそうです。

そんな「鋼の錬金術師」は、2001年から「月刊少年ガンガン」にて連載され、全108話・全27巻で2010年に堂々の完結。

ダークな世界観の中で「錬金術」を軸として、心揺さぶられる奥深い人間ドラマと兄弟の揺るぎない絆、そして「生命」という哲学的な柱を魅力的なキャラクターと共に熱い展開で完璧に描き、

全世界コミックス累計発行部数は8,000万部を突破。

連載当時低迷していた「ガンガン」の発行部数に大きく貢献し、最終回の掲載号は通常の2割増しの発行部数であったにも関わらず完売し、最終回が別の号で再び掲載されるという異例の事態になったり、

2度のアニメ化、アニメ映画化、実写映画化もされるなど、連載が終了した今なお爆発的な人気を誇る不朽の名作となりました。

ちなみに、荒川先生はハガレンの連載中に妊娠、出産を経験していますが、この間に1度も休載することなく連載を続けており、

このエピソードはもはや伝説となっていますね。

ハガレン~百姓貴族~獣神演武

荒川先生は、「ハガレン」の連載と並行して、2006年から少女漫画誌「ウンポコ」にて自身の農家としての経験を基にした農業エッセイ漫画「百姓貴族」の連載をスタートさせます。

百姓貴族は、荒川先生の農業時代の話がめちゃくちゃ面白いと感じた編集者が「誰も描いていない農業コミックエッセーを描けるのは荒川先生しかいない」と連載を持ちかけ、

「確かに誰もやってない!今のうちだ!」という流れで、編集者とダラダラと雑談している内に連載が決まったそうです。

「農家の常識は社会の非常識」をキャッチコピーに、農家の日常を荒川先生の家族とのエピソードや実体験を基にコミカルタッチに描き、

「農家の常識は社会の非常識」は文字入れして欲しいです。

こちらは現在までに7巻を発行。累計発行部数は300万部を突破しており、2009年からは「月刊ウィングス」に移籍して連載を続けています。

また、2007年からは「ガンガンパワード」にて「獣神演武」の作画を担当し、連載をスタート。

こちらは後に「ガンガン」へと移籍し、2010年に完結。全5巻を発行し、アニメ化もしています。

これらの作品は、ハガレンの連載が安定してきて、アシスタントに任せられる部分が増えてきた中で、描く量を増やせそうだと感じ、

また、描くスピードを上げることで「いつ週刊誌に呼ばれても大丈夫なようにしたい」とのおもいで、「ハガレン」と並行して連載することを決めたそうです。

銀の匙

そして、「ハガレン」連載終了後となる2011年からは、「週刊少年サンデー」にて農業高校を舞台にした学園青春漫画「銀の匙」の連載をスタートさせます。

荒川先生は、新人時代から自身の経験を基にした「農業高校ネタ」を考えていたそうで、

「獣医漫画」や「農家漫画」はあるが、「農業高校漫画」はなかったため、ハガレンの時と同様「誰も描かないなら、自分で描いてしまえ!」との思いから農業高校をテーマにすることを決めたそうです。

また、当時は「とにかくキャラクターの見た目や絵柄の派手さにこだわれ」という風潮があったそうですが、

荒川先生は、「流行から外してキャラクターを捨て去ったらどうなるんだろう...。」「それでも私の漫画は人気が出るのだろうか...。」と考え、

「実験的に敢えて地味な絵でやってやろう。それでダメだったら自分に漫画の力がなかったと諦められる。」との思いから、

「銀の匙」では、自分の実力を試す意味も込めて、衣装を含むキャラクターデザインを敢えて地味目にして制作したそうですね。

ちなみに、掲載先としてサンデーを選んだのは、複数の出版社から連載の依頼があった中で、

元々荒川先生のファンで「ハガレン」連載時からよく雑談をしに会いにきていたサンデー編集者に「荒川先生の農業の話は面白いので、農業漫画をやりませんか?」と提案されたことがきっかけとなり、

また、サンデーの読者層である中高生が「自分達の将来のことを気にしている」というアンケート結果をみた時に、

銀の匙は、農業漫画でありながら、「進路問題」を1つの柱として1人の青年の成長・青春を描いた漫画であったため「これはイケる!」と感じ、

これが決め手となって、最終的にサンデーでの連載を決めたと語っています。

そんな「銀の匙」は、2011年から「週刊少年サンデー」にて連載が開始され、全131話・全15巻で、2019年に堂々の完結。

農業高校を舞台に、「農業」の厳しい現実と「命の重さ」「命をいただくこと」の本質に迫ると共に、1人の青年の葛藤・将来への不安・成長を見事に描き、

コミックスの累計発行部数は1,700万部を突破。

「マンガ大賞」や「農林水産省主催の賞」を初めとする数多くの賞を受賞し、アニメ化、実写映画化も果たすなど、かなりの高い評価、人気を誇る作品となりました。

アルスラーン戦記

「銀の匙」の連載と並行して2013年からは「別冊少年マガジン」にて田中芳樹先生が原作の「アルスラーン戦記」のコミカライズ版の連載をスタートさせます。

荒川先生は、「アルスラーン戦記」を読んだことがなかったそうですが、マガジンの編集者が「荒川先生はアルスラーン戦記の大ファン」と勘違いしてコミカライズの依頼をしたことがきっかけとなり、

そこから、「アルスラーン戦記」を読んで、「とても面白い。これは少年誌でやることに意味があるのかもしれない」と感じたことから、連載を引き受けることになったそうです。

「アルスラーン戦記」は現在も連載中であり、コミックスは16巻まで発行。累計発行部数は750万部を突破し、アニメ化も果たす人気漫画となっています。

北海道の農家に生まれ、農業を経て漫画家への転身。そして、デビューしてから立て続けてにヒット作品を生み出し続ける荒川先生。

2022年からは「月刊少年ガンガン」にて完全オリジナル新連載「黄泉のツガイ」の連載をスタートさせており、

1話目から非常に惹きつけられる展開で、まだ導入部ですが、今後の展開が非常に楽しみな漫画になっていますね。

最後までご視聴頂き、ありがとうございました。

またね。

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