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東京エクストリームウォーク 〜26時間100kmの旅

子供の頃から運動は苦手で、ジョギングとかランニングとかをしている人は、異星人だと思っていた。その私が、この年齢になって、制限時間26時間で100km歩くというイベントに参加。

参加してみて気づいたのは、こ〜んなに参加する人がいるということ。
WESTコース、EASTコースと別れていて、ゴールは共に豊洲なのだけれど(100kmの場合)、WESTスタート会場の海老名では、1000人はいると思う人の数だった。
(後日の大会事務局発表によると、参加者数はWESTコース100km部門1,340名、ビギナーズ30km部門717名、EASTコース100km部門参加者数378名。)

世の中には、異星人がこんなにいるのか。
オンラインで地球の裏側の人ともリアルタイムで苦労なく話ができるこの時代に、なにを好き好んで参加費18,000円もかけて24時間も無駄にして、歩き続けるんだろうと、参加者の人たちを眺める早朝。
究極の無駄。
でも人生って、究極の暇つぶしだから、ま、こんなものか。

仲間と12人で、いざ出発。

早くも52kmのチェックポイントで、足が悲鳴を上げている。
も〜、この倍は無理。足の裏も膝も痛くて、暗くなってきて寒くて、心が折れそう。

さすがに12人でペースを合わせるのは難しくなっているので、ここからは各自のペースにしようと結論。
チームでトップの健脚Hさんが、グロッキーになってる私に言った。

「絶対に、ゴールに辿り着くんだという強い気持ちを持つこと。それさえあれば、大丈夫」

かっこいい女性というのは、こういう人を言うのだ。
眩暈がするような、目が覚めるような一言だった。

走るのと違って、歩けば着くのだ。
歩けなくなるのは、マメができるとか捻挫するとか、熱中症や低体温症になったときで、あとは大抵は、なんとかなる。

仲間との練習のときから、自分がいちばん後ろになるのは目に見えていた。なので、実はけっこう真面目に、この3ヶ月は練習していた。忙しくてもジムは3日はあけないようにしていたし、週末もスケジュールして、実際のコースを練習していた(全部踏破できなかったのが、悔しいけど)。
あの練習、無駄にしてなるものか。


かくて、100kmのゴール到着。
ただただ、嬉しいというより安堵感。
良かった。これで胸を張って明日も生きていける。

人間極限になると、その人の素性が出る。仲間はみんな優しくて、
自分が辛くても「大丈夫、痛いのは気のせいだから」と笑顔で声をかけてくれる人、
寒そうにしてる私にホッカイロをくれた人、
私がいちばんしんどかった20kmをずっと伴走(伴歩?)してくれた人、
塩キャンディをくれた人、
各所で盛り上げて写メ撮ってくれた人、
笑いを起こしてみんなをリラックスしてくれた人
・・・などなど、みんなが私にいろんなものをくれた。

私はなにもあげられなくて、数日経った後から、ちょっとした後悔。
次に参加したら、もっと仲間に何かあげたいなぁ。
あげる立場になりたいなぁ。

ふとそう思って、なるほど、これが癖になる理由かと、ふと思う。

いえ、もうやりません。今のところはね。

100km歩いて、受験生の息子にこう言いたかった。
「歩けば着くんだよ。勉強も一緒。勉強すれば、絶対前進するの」
幸い、この言葉を伝えるまでもなく、彼は毎日頑張っている。


生きている人間は、生きるしかないんです。
生きている以上は、幸せになるしかない。
その思いを、100kmに託した。
Mission completeということで。


※ 大会事務局発表によると、ゴール者数は
WESTコース100km部門1,135名(84.7%)、
ビギナーズ30km部門690名(96.2%)、
EASTコース100km部門296名(78.3%)
(いずれも速報値)。


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