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ビジネスって難しい?ドツボにハマる40男のネットショップ

40男のネットショップ

ツィッターでの友達がつい最近ネットビジネスを始めた。もともとは介護か何かの仕事をしつつ小説を書いていたのだが、40代も半ばに差し掛かったせいで体力的にキツくなったせいか、介護の方はいつの頃からかやらなくなってしまったようだ。彼がネットビジネスを思い立ったのは今年の春、簡単にできるペーパークラフトをおいたネットショップを作る方針を決め、貯金を切り崩し徐々に準備にかかっていた。

簡単にできるペーパークラフトとはいえ、素人がつくった作品を売ろうとするのは難しいのではないかなと第三者的には思っていたが、彼はそんなことは意に介せず、ある時は色鉛筆を朝から晩まで使い(色鉛筆???)、ある時は新しく調達したプリンターを駆使して夜遅くまで製品の創作に励んでいた。

一方で文章には才のある人で、小説は読んだことがないが、1日に一回、その日の締めくくりとして記される彼のツィートにはその片鱗が現れていた。意外とそこそこ売れるものができるのではないかと思ったりもしていた。

そして10月、ついに彼のネットショップの開店の日がやってきた。ツィッターからネットショップのリンクを踏んでたどりついた彼のサイトには、手作りにこだわりオリジナル作品を販売することをうたい、彼自身の手による120種類の花のしおりが掲載されていた。しおりは、分度器と定規を駆使しして幾何学模様をアレンジし、色鉛筆で着色した数々の花の模様が描かれた紙片に細いリボン上の紐が通したものであり、値段は600円とあった。色鉛筆でカラフルに着色され、幾何学模様をアレンジした花のデザインを描いた手作りのしおりはそれはそれでユニークな作品であったが、素人の域をでておらず購買意欲を掻き立てられるものではなかった。

友達の手前、一度は買ってあげても良かったのだけれど、評価されたという淡い期待を与えてもいけないと思い、また一度買うと継続して購買することを期待されるだろうから買うのは控えておいた。彼自身はクリエィティブな人で、今の彼のツィッターのプロファイルには「小説家になる夢と共に、芸術を生む作家として活躍できれば」とある。しかしなんのトレーニングもうけていない素人が突然芸術を生み出せるほど世の中甘くないのも事実である。

私はペーパークラフトのしおりとしてどんなものがネットで売られているか調べてみた。値段は600円から900円と変わらなかったが、ずっとおしゃれで夢のある製品がネット上に溢れていた。そしてそのほとんどが手作りである。多分彼は競合調査なんてしなかったんだろうなと思いながら、全貯金をかけてネットショップに取り組む40男の苦難が思いやられた。

ただ一回試して失敗すれば苦い薬かもしれないが、目が覚めてもう少し実現可能性のある事業を始めるのではないか?淡い期待を持ちつつ見守っていた。

おそらくなんの反響もなかったとみえ、日に日に彼のツィートが変わってきた。ほぼ1時間おきにネットショップの広告がツィートされる様になったのである。これ売れねーよと思いながら、可哀想になってたまにいいねした。

懲りないネットショップの新商品の嵐

それでも彼は懲りなかったとみえ、新商品を投入してきた。しおりのデザインをもとにしたノートである。表紙には手書きの幾何学模様をアレンジした花、そして各ページには印刷した同じ幾何学模様の花がついている。しおりよりは手がこんんでいる。お値段1600円。。手間賃を考えたこの値段はわかるがこれは売れない。しかもやはり数十種類のバリエーションをつくっている。この人は小出しにして様子見るという知恵はない様で、思い立ったら全投資するという考えの様だ。

案の定、やはりなんの反響もなかったらしく、彼はまた新商品を投入してきた。花のイラストから脱却した幾何学模様だけのイラストをしおりとノートにしてきた。。

そしてなんの反響のないまま、彼は次の奇想天外な新商品を創出する羽目になった。

競パンとタンクトップ

彼の次の打手は、ちょっと驚いたのだけれど、競パンとタンクトップを象ったしおりとを投入してきたのだ。しかもその表面にはこれまでの商品のように分度器と定規で作成され色鉛筆で着色された幾何学模様で彩られている。彼自身はゲイで、ゲイの一部に競パンとタンクトップがうけるフェチシズムがあることは分かっていたので、そこをついたゲイ向けの商品として打ち出してきたのだ。

しかしこれは売れないだろうなと思った。ターゲットをゲイに特化し、なかでも彼らのフェティシュな趣味をくすぐるというコンセプトの商品である。彼らの購買意欲を掻き立てたいなら、何かしら刺激的でないといけない。しかしながら出来上がった商品は、不恰好なタンクトップとパンツの形をした紙片であり、性的な感じがしなくはないが、なにか中途半端である。おまけにタンクトップとパンツは彼のトレードマークである分度器と定規でデザインされた幾何学模様で彩られ、安っぽさを醸し出している。

一方でしおりを購買する層はそんな刺激をもとめていない。しおりにするにはなんか憚られるデザインなのだ。

1回目の花で上手くいっていないのだから、どうして次の投資をする前にキチンとマーケティング調査してプランニングしないのだろうか?

競パン、タンクトップのしおりがゲイに買ってもらえるのか?買ってもらえるとして柄はなんで幾何学模様なのか?無地じゃなくて良いのか?デザイン、シルエットはそれでよいのか?今のプロトタイプで買ってもらえないならどうしたらよいのか?

やはり反響がなかったとみえ1−2週間後彼は競パンとタンクトップのシールを、そのまた1週間後には競パンとタンクトップのノートを投入してきた。それぞれ数十点ずつあるから投資した労力、時間、費用は馬鹿にならない。特に新製品の投入が連続しており、彼は連続徹夜をしている。

今後残念ながら彼のネットショップは近日中に破綻するであろう。費用的にはあまり負担のないペーパークラフトであり経済的にはしばらく大丈夫かもしれないが、体力がもたなくなってくるのではないかと思う。

PDCAの大切さ

彼の問題点はPDCAがしっかりしていないので、間違った方向に努力をし続け、軌道修正できないのだ。さらには彼の生活費を稼ぐためだったこのビジネス、単価数百円であるから月数百個うれないとちょっと厳しい。彼は実家に住んでおり直近の住居や食費の心配はないとはいえなかなか前途は見えない。

そもそものビジネスモデルに無理がある

プランニングが甘い

一つ一つの打ち手の規模が大きすぎる

取った打ち手を評価するまでに時間がかかり過ぎている

ツッコミどころ満載であるが、素人がビジネスに手を出して失敗する典型なのではないだろうか?

自分流を通したい。それだけは変えられません。

ちなみに見るに見かねて、ここらでちょっと立ち止まって方針を再検討してみたら?と言ったのだけれど彼は聞く耳を持たなかった。

今はまずがむしゃらに突き進むのみです。「継続あるのみ」を信じています。自分流を通したい。みんなのまねはしたくない。それだけは変えられません。

私の頭の中には「欲しがりません。勝つまでは」に代表される第二次大戦の精神論が浮かんできた。思いつきではじめ、失敗に思いつきで対応し、帳尻があわなくなってきたら精神論に逃げる。もはや末期症状の可能性が大きい。

やはりビジネスは難しい?

ではどうすればよかったのか?上のエピソードから得られる教訓は次の様なものになるであろう。

⒈ まずアフィリエイトで、できるだけ元手をつかわずにビジネスを回してみる

2. 1がうまくいってから独自商品の開発販売を考える

3. 単価の高いビジネスを目指す

4. キチンとしたPDCAをつくり高速で回す

5. 最初のアイディアがうまくいくとは限らないのでできるだけ柔軟な考えをもつ

6. 独自商品開発の際は自分にスキルがないならプロに代行してもらっても良い

7 お金を儲けることと自分の趣味とは一旦区別しておいた方がいい

側から見るとこういうのすごくよくわかるのであるが、自分でやると見えなくなるんだろうなと思いながら、自分への教訓として記してみた。

最後までお読みいただいてありがとうございます。身近なエピソードをもとにお金をうる手段の難しさや落とし穴について考えてみました。何かしらのお役に立てると嬉しいです。また感想もお待ちしております。








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