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どれだけぬるくなっても

「なにをいつ食べようかな」
そういうことばかり考えて仕事を終えた金曜。

このまま夜になったら本でも読んで寝てしまおうか。

1週間の穢れを祓うが如くシャワー浴びたてホカホカの身体に、キリリと冷えた缶ビールが巡る。うめぇうめぇ。

髪も乾かぬうちに、5食300円くらいの味噌ラーメン乾麺を茹で始める。

付け合わせには少しのにんにくと鷹の爪を効かせた鶏肉ともやし、あと、安かった小松菜を軽く蒸し焼きする。

最近丼を新調した。
重さが心地よく手に馴染むその丼に、茹でたての麺とアチアチの味噌スープを注ぐ。
別のフライパンから鶏肉ともやし、小松菜の三兄弟を移動させ、白ごまと七味、きざみ海苔をちらす頃、僕はすっかり焼酎の炭酸水割りに突入している。

心地よくアルコールが循環し、そこに喝を入れる味噌ラーメン。

幸せ幸せと、噛み締めた。

このまま味噌スープにお弁当の余りご飯を入れようかどうか悩んでいると、真向かいの田んぼに夜空が映っていたので、就寝モードに切り替える。

リビングの椅子に服を脱ぎ散らかしのまま
金曜の夜であることをいいことに、2本目の缶ビールを「プルコシュッ」と開ける。
溢れ出る泡を、おっとっとと口へ運び飲む。

買ったばかりの本を読み進めるかどうかという時にはもうだいぶ、眠気が身体を侵食している。缶ビールはまだ半分以上残っている。

本を読み始め、時間にして20分ともたなかったと思う。

気がつくと時計の針は2時間と少し、いや、ほぼ3時間進んでいた。

味噌ラーメンのスープまで飲んだからか、
アルコールのせいか、その両方によるところが大きいと思うが、大変に喉が渇いていた。

分かってはいたのだけど、枕元に置きっぱなしのビールを飲んだ。飲むしかなかった。
この時の僕を支配していた真理は、まず喉の渇き。缶ビールを放置してしまった罪悪感の2つに他ならない。

缶を手に持った時に「あっ」と思った。
が、口に運ばずにはいられなかった。
ぬるくなったビールは、やはり美味くはない。
やや後悔。

こういうことも含めて、修学旅行の準備と同様に、休みの日より休みの前日の方が、案外楽しかったりするのだ。

もうじき朝がやってくることを知っている。

田んぼのカエルは鳴き続けている。

"昨日"の空とはうって変わってご機嫌斜めな"明日"の空だということも、知ってる。

明日はいつなにを食べようかな。

「あぁ今朝か。」

ほら、空が泣き始めた。

飲み切れなかったぬるいビールを、僕は頑張って冷蔵庫に運び込むことで、今日のいつかにまた飲む決意をした。

そしてきっとまた、やや後悔するのだろう。
缶ビールはやはり、開けたてが美味いのだ。

着々と、時間が経っていく。
カエルの鳴き声だけでは、時の経過を感じるには少し難しいけれども。


#エッセイ #缶ビール #金曜 #随筆




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