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文体練習~部屋まちがえた友人~

【事象】
昨晩のこと。
新年度の歓迎会からアパートまで歩いて帰ったら、まだ9時半をまわって10分と経っていなかったが、連日の慣れない仕事の疲れもあって、横になると軽く眠ってしまった。
はっと起きると10時半。
1時間ほど眠ってしまったようだ。
私はここで、そろそろ友人が来るということを思い出した。
そうこうしてると、ピンポーンとベルが鳴るやいなや、ガチャリとドアが開き、
靴を脱ぎながら友人が「となりの部屋にまちがって入っちゃった。そっちもカギ空いてた。」と言った。

【軽薄体】
新年度の歓迎会で結構な勢いで日本酒呑んでフラフラだったけど一人暮らししてるアパートに帰ったら意外とまだ9時半で、ちょっと横になったらうっかり寝ちゃったのね。
慣れないことすると疲れるのは何もお年寄りだけじゃなくって、例えば20代前半だとしても一人暮らしのこととかもあるし、なんて誰に対してってわけじゃないけど、ゴネてたらガチャってドアが開いたのね。
そこで友達が泊まりに来るって言ってたなって思い出しの。
靴を脱ぎながら友達が、
「隣の部屋にまちがえて入っちゃった。」なんて言うから、私もうっかり「結構かわいい女の人が住んでるよね。」なんて言っちゃったの。

【遡行表現】
朧げな記憶をたどってみると、僅かに懐かしい声が聞こえた、そんな気がした。
新年度も始まり、慌ただしいはずの日々の中で、このような懐かしさを感じることができるのは実に稀ではないか。
懐かしさの中で思い出したことがある。
それは1人の友人が今晩うちへやってくるということ。そんなことさえ忘れてしまう慌ただしい毎日を過ごしていたのかと考えごとのような、
反省のような、はたまた寝ていたのかもしれない。
すっかり夜も更けようとしている。22時半をまわる頃、たしかに聞こえた。

「となりの部屋、まちがって入っちゃった。」

間違いなく、聞き馴染みのある声で。

【複式記述】
昨晩の夜のこと。
新しい新年度の歓迎会から歩いて徒歩で帰ると、まだ夜の21時半であった。
私はウトウトと眠そうに天井を仰ぎ、仰向けに寝た。
どうやら1時間ほど眠ってしまったらしい。
気がつけば、21時半の1時間後の夜の22時半。
うちへやってくると契りを交わし約束していた友人のことを朧げにも眠たい頭で思い出した。
ガチャリとドアが開く音とともに、
友人の声が聞こえた。

「横のとなりの部屋が施錠されていなくてカギが開いていたから、うっかりまちがえて入ってしまったよ。」と、友人は1人、淡々と、静かに独り言ちた。

【中国人住居者】
アタシサッキ見タヨ
アナタガ207ノヘヤ入ッタト思タラ
スグニ出テキテ206ノヘヤ入ッタネ
アタシソレ見テタヨ
アヤシカタモン
ケイサツニ言ワレタクナカタラ500万元クダサイ
ワカタカ

【207号室 女子高生住居者】
ちょwww誰🤣
家でtiktokしてたら知らん人来たんだけど部屋間違えるとか卍み深くて草生える💩

【高等学校校歌】

向かう風にも立ち向かひ
家路につかなば友を待つ
微睡むことなく夢を追ひ
怒濤の先には新窓に
威風の勇姿 友が立つ
あぁ招いて 招いて
隣の人をば轟かす
今新風の風吹かん

【百人一首】
わがともの
かぜがふかなば
ひとりごつ
あやまりていらば
そこへおんなありけり



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レーモン・クノー『文体練習』の亜流模写の
椎名誠『アザラシのひげじまん「文体練習-こぼれた味噌スープ-』の下手っぴな
亜流模写です。


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