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喉が痛くてビール考

ウィルスがカラダに入り込んでくる時、潜伏していたウィルスがコンニチハと顔を出す時、私たちヒトは「何か、来た。」そう認識するとまではいかないものの、覚悟めいたものを内に宿しはしないだろうか。

アヤシゲな雲を見て、明日地震があるかもしれない、なんて思うのと似ている気がしないでもない。
あの日あの時、クーラーの近代科学臭い感じ悪い風を浴びながら、
考え事などしているまさにその時、
「キタッ」という感覚、同時にカラダ中に寒イボが走る走る。
たちまち私は、サイズが自慢の扁桃腺を炎症。その後その周囲も炎症し、リンパは、母乳から粉ミルクに代えた途端に太りだす赤子のようにスクスクと育って、私の食事、会話を妨げる。イテェイテェと夜も眠れない。
腹が減っても固形物を飲み下せない。
喉が渇いてもポカリをぐびぐび飲むには激痛の川を渡らねばナラナイ。

缶ビールをプシュルトクトク、ウメェウメェと飲むのが、これからのこの季節の楽しみではないか。

今の私には、自身の口から産み出されるツバさえ飲みこむのに、「エイサっ」「イテェぇ」とやらねばならず、ツバノミコムに心折れた私は「ナサケネェナサケネェ」とティッシュにツバを吐き出すのである。

樹齢100年を越える大木を喉元の根深い部分に生やし並ばせたような痛みを提げ、まるまる太ったリンパ付近を用いて腫れに腫れた扁桃腺をヨイショと動かし、塞がりかけた食道にモノを通し、ようやっと私は、体内に栄養、水分を補給することができる。
一挙手一投足、この場合は一扁桃腺一リンパか、全てにおいて激痛。

カノジョが作ったお茶碗2杯分程のおかゆを、
2日間6食かけてズルズルナサケネェナサケネェと食っている。さらにそれを食い切ることすら叶っていない。冷蔵庫でキリリと冷えてる缶ビールが嘲笑うようにこちらを見ている。

スーパーで買ったポカリをコップに注ぐ私を、
見ている。

扁桃腺なんかとのタタカイにはとっととケリをつけて、そのクールでニヒルな缶ビールを、
「そらみたことか!」と、飲み干してやりたいのだ、私は。
離乳食以来のおかゆに関しては、これはこれでなかなかに美味いのだが。

#エッセイ #随筆


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