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楽器のデザイン

『BLUE GIANT』。この、「音が聞こえる」と評されるジャズ題材マンガに魅せられた私は、ジャズ……いや、

JAZZ。

そう。JAZZという音楽に打たれた。

マンガの影響力は、計り知れない。
私の音楽の好みすら変えた。
自分が扱いたい題材を描き、たくさんの人が読み、そのうちの何人かが、題材(BLUE GIANTならジャズ)を手に取る。

こんなに素敵な文化としての出来事は、
めったに遭遇できることでは無いだろう。

テナーサックスを主人公「宮本大」が吹く。毎日吹く。

話が進むと登場する、ピアノ「沢辺雪祈」と、ドラム「玉田俊二」。自分と同い年くらいの男の子たちが、懸命にJAZZをプレイする描写を見て、『楽器』というものが、
「こんな音を出すぞ。」という意志のもとに
成り立っているのだな。と、感じる。

ピアノの繊細な音。

ジャズにおいて、
私がやけに好きなアルバムは、
ソニークラークの「cool struttin'」。

ピアノという楽器の中でも最上級の大きさを
誇るが、奏でられる音は、まるで繊細そのもの。

低い音から高い音。

「やるだけやってやる。」そんな意気込みを
ピアノから感じ。

サックスもそうだ。

近くの楽器屋さんで試し吹きしたことがあるが、そもそも何の音も出せない。
管楽器特有の難しさがあるが、呼吸に合わせて吹きこなすことで、トップスピードで、駆け抜ける音楽を創ることもできる。
弱い音を、一つ一つ、丁寧に出すこともできる。

ジョンコルトレーンの「countdown」は、
もう大変なことになっている。

「音を出す。出すぞ。」

これは、全ての楽器に言える。

そしてここで、一つ、思い出したことがある。

「ギロ」という楽器。

ギロギロギロって音がする。

洗濯板を丸めて手に抱えるサイズにしたものを
棒でこするのが、この楽器の演奏法だ。

ギロギロギロ。

擦って鳴らすから、
擦りを早くすれば、
ギロギロは、速いギロギロになる。

ギーロギーロ
ギロギロッ。
速いと、チャッって音がすることもある。

ギーロギーロチャッチャッ。

こんな感じだ。

ピアノやサックス、ドラムと比べて、
ギロは、お世辞にもカッコいい楽器とは言えない。

けれども、ギロにしか出せない音を出すために
デザインされている。

ラテンアメリカ系の楽器で、
役割は、ベースと似ていて、
曲の根幹になりえる。

曲の根幹がギロというのは、なんだかもう、
愛くるしさすらある。

楽器のデザインから見るに、
デザインとは役割そのものだ。

これは、人にも言える。

「どんな子でありたいか。」
これが、人のデザインであり、
他者からの感じ方でもある。

「どんな子でありたいか。」を晒すことで、
他者との関係性の中に、
自分の役割を見出せる。

曖昧な私たち。

誰も、「こういう奴」だなんて、
決めつけられないのが人間という複雑な事象だ。

そんな一見めんどくさそうな複雑さを抱えながら、人と人と関係性の中間点、
結び目で、生きてる。

私は、「こんな子です。」
だから、「私は、多分、あなたのなにかです。」

自分というモノを、
日々の積み重ねの中にデザインしてみよう。

いろんなデザインを施された楽器が、
いろんな音を出す。

それとおんなじで、。

「私は多分、あなたのスティールパンで、
あなたは多分、私のティンパニだ。」

ね。

#エッセイ #楽器 #音楽 #コラム






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