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国際教育協力の潮流

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記事一覧

現在の国際的な潮流の中で、女子教育をもう一度考え直す

現在の国際的な潮流の中で、女子教育をもう一度考え直す

こんにちは、畠山です。先々週に登板したばかりですが、急遽代打で再登場です。この前、世界銀行から女子教育に関するレポートが発表されたことですし、今日は女子教育の話をしたいと思います。具体的には、1. なぜ女子教育が重要なのか、2. 女子の就学状況はどうなのか、そして、3. 現在の国際的な潮流が女子教育にどのような影響を与える可能性があるのか、の3つの話をしようと思います。

1. なぜ女子教育は重要

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教育の質を改善することが、教育へのアクセスを改善するためにも重要である国の話

こんにちは、畠山です。メキシコシティでの学会が終わりミシガンに戻ってきました。うちの大学からは38人がこの学会に参加しましたが(ミシガン州立大学は、日本ではあまり知られていないマイナーな大学ですが、国際比較教育学では一大拠点で、このNGOの前身となった国際教育協力勉強会の立ち上げを立案した同級生も、ここで博士号を取得しています)、20度後半の温暖な所で1週間過ごした後に、雪が舞う所へ戻ってきたので

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国際識字デーに考える、識字を取り巻く国際教育政策の潮流

こんにちは、理事の畠山です。9月8日は国際識字デーで、サルタックが設立された日でもあります(当然ですが、私にはセンスが無いので、この日を設立の日に選んだセンスがある人は、ネパール側の初代代表です)。

折角なので、今日は識字を取り巻く国際教育政策の潮流のお話をしてみようと思います。これはなかなか面白いトピックです。なぜなら、

・子供達がリテラシーを身に付けられる教育の旗振り役は誰なのか?

・識

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日本の強みを理解した国際教育協力とはーより良い教員への支援を目指して

こんにちは、理事の畠山です。10月5日は世界教師デーです。日本ではあまり認知度が高くない日ですが、ユネスコが提唱している記念日で、子供が教育を受けられる権利を実現する上で大きな役割を果たしている教師に感謝をしようという日です。

教育政策は、中央政府・地方政府・コミュニティ・学校・教室と様々なレイヤーから構成され、その全てがしっかり機能していないと有意義な教育を実現することは難しいのですが、実際に

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途上国に絵本を送ってはいけないシンプルな理由

今年もよろしくお願いします、理事の畠山です。年末年始とサルタックの方でも相次いでミーティングを行い、今後の方針を議論している所です。その中で一つ日本側・ネパール側の共通認識で確認できているのが、もっと途上国の子供達が絵本に触れられる機会を作って、アーリーリテラシーやプレリテラシーを養っていかなければ、Quality Learning for Allは実現できないという点です。

ここでこの記事のタ

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今年の国際比較教育学の大賞論文はここが凄い!

こんにちは理事の畠山です。世界にはいくつも国際比較教育学に関する学会があるのですが、最も規模が大きいものはComparative and International Education Society(CIES)だと思います。そして、CIESが出版している学術誌、Comparative Education Review(CER)は、この業界を代表する学術誌と言って差し支えないと思います。

そして

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国際教育協力に関する学術誌の話

こんにちは、理事の畠山です。先日Twitterを見ていたら非常に興味深いトピックが一部で話題となっていました(この書き出しだけ書いてしばらく放置していたので、大分前の話になってしまいましたが・・・)。それは行動経済学という学術誌に掲載された、バナジーとデュフロの「絶望を希望に変える経済学:社会の重大問題をどう解決するか」という本の書評に端を発していました。

この書評を読むと、バナジーとデュフロが

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新型コロナは、今女子教育にどのような影響を与えているのか?コロナ後に求められる対策とは?

現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、約15億人の25歳未満の青少年が学習の機会を奪われていると推測されています。学校の休校措置に伴って、家庭学習や遠隔学習の比重が高まる中、特に、貧困層、女子、障がい者、少数民族などの「社会経済的に不利な環境に置かれた人々(marginalized people)」が十分な教育を受けられるよう、対策・支援が求められています。

その中でも、就学年齢人口の半数を占

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ポストコロナ時代の国際協力はどう変わるのか?

この記事を書いている現在も日本を含む世界中で新型コロナウイルスの収束の目途はついておらず、市民の生活に大きな影響を及ぼしています。
ポストコロナ時代の国際協力がどうなるか、自由に予想することは容易いですが、今回はコロナパンデミックが起きる前の援助団体のリーダーたちの声をもとにプレコロナ時代の国際協力の潮流を把握しておくことで、ポストコロナ時代の国際協力を考えるきっかけにしたいと思います。
また援助

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途上国における教育のための援助額はX円?

先週の畠山の記事では、冒頭で途上国の教育予算に占めるドナー国からの支援割合が「意外と低い」ことが紹介されていました。確かに、先日東京大学で開催したセミナーでも、畠山のプレゼンの中で「ネパールの教育予算に占める援助割合はどれくらいか」という質問を投げかけたところ、多くの参加者が50%程度だと答えていましたので、実際の数値を見ると「意外と低い」と感じる読者の方も多いかもしれません。(実際に何%かは、畠

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1分でわかる「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」と日本

突然ですが、先日の畠山のブログを覚えていますでしょうか?「私立教育は是か非か?」というタイトルでしたが、記事の中で何度か「Global Partnership for Education(GPE:教育のためのグローバル・パートナーシップ)」という組織名が登場しました。記事の雰囲気から、何となくGPEが国際教育開発の世界で重要な役割を担っていることは伝わってくるかと思いますが、「そもそもGPEって何

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