エビデンスに基づく政策のためのランダム化(RCT)のような実験は、言うほどには教育セクターで必要ないかもしれない話

早くも雪の降り始めたミシガンからこんにちは、畠山です。私の前回の記事で、ランダム化比較試験(RCT)を教育セクターで実施することが意外に難しいし、コストをかけてわざわざRCTのような実験をしても明らかにできる事は意外に小さいというお話をしました。

RCTのような政策実験はエビデンスの黄金律なので、教育政策・教育経済学者の中には、これを実施することを大いに推奨している人も多く見受けられます。そして教育政策関係者の中には、これを額面通りに真に受けて、エビデンスに基づいた教育政策は重要だからRCTのような実験をどんどん実施しよう、と考えてしまう人も見受けられます。何を隠そう、私が前職で勤めていたユニセフの教育専門官の多くがこれに該当するのですが…。

しかし、こと教育セクターに限って言えば、言われるほどにはわざわざ大金をはたいてRCTのような実験を実施する必要はないという訳ではありませんが、少なくとも国際教育協力の世界では明らかにRCTの必要性が過剰に訴えられている感じがします。

なぜRCTのような実験が教育セクターにおいて言われるほどには必要ないのかというと、意外と自然に、疑似的なランダム化状況が発生するので、その際にはわざわざ実験をする必要がないからです。

ここで回帰不連続デザイン(RDD)の話かと思った人はその通りなのでどうぞお帰り下さい苦笑。実験をしなくても疑似的なランダム化が発生するとはどういうこと?、という方には以下で話をしていこうと思います。計量経済学や因果推論は学んでいないけどユニセフやINGOで働きたいという人は、子供達のための貴重な資金を悪い人に騙されずに賢く使うために、よく読んでいってください苦笑。

1.意外と発生する疑似的なランダム化状況

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