【書評】学校の「当たり前」をやめた。

「エゴ」を捨てよう。

なぜなら、それが足枷となり、子ども達の成長を鈍化させ、教師の疲弊を生んでいるからです。

では、そのエゴとは何か。

それは手段の目的化だといえるのではないでしょうか。

そんな思いをずっと抱いていました。

でも、この一冊を読んで、胸が晴れ渡りました。

とにかくこの価値観を、世に広めたい。

学校の「当たり前」をやめた。

麹町中の主な3つの改革

工藤校長が手段の目的化からの脱却のために改革された中で、主なものは以下の3つです。

1.宿題の廃止

段階的に宿題を全廃されました。

一律の内容の宿題は、それぞれのニーズに合致しづらいため極めて非効率です。

得意な子どもからすれば、簡単な作業となり、苦手な子どもからすれば困難な苦行となるからです。

また、教師は、提出の有無により関心意欲態度の観点の評価基準にしがちです。

そこに目的はありません。

宿題本来の目的は「できないことが、できるようになること」のはずです。

ここで評価されるべきは、学校レベルでの改革を行なった点にあります。

もし、これが学級、学年等の局地的な改革になれば、不満の声が生まれた可能性は大いにあると思います。

点ではなく面での改革を進めることは、余計なエネルギーを浪費せずに済むため、極めて重要なことだと思います。


2.定期考査の廃止

中学校では、中間・期末テストが存在するのが一般的だと思います。

このシステムを廃止し、単元ごとにテストを実施するように変更されました。

簡単に言うと、小学校と同じシステムです。

これにより、学習のPDCAの回転を早めることができ、自律的に机に向かう子どもも増えたそうです。

定期考査の目的は「学習内容の定着を図ること」にあるはずです。

いつしか(僕も学生時代はそうでしたが)点数を取ることそのものが目的になっていたのではないでしょうか。その結果、一夜漬けという方法で瞬間的には覚えるものの、それ以降は綺麗さっぱり忘れているというシーンは非常に多いと思います。

3.固定担任制の廃止

固定担任制による弊害が多いと判断し廃止、全員担任制を導入されました。

全員担任制は、「チーム医療」の考え方に基づいたものだそうです。

医療の現場では、一人のスタッフが一人の患者を担当するのではなく、個の専門性を生かしてチームで医療を行います。

同じように、学校現場でも担任が全て背負い込むのではなく、個々の強みを生かしたチームで教育を行う方向へシフトする方が合理的なはずです。付け加えるならば、教師がイキイキと教育に打ち込むことができるようにもなるのではないでしょうか。

日本中で多発する「学級崩壊」。これの一因は、隣との比較です。

担任次第で、クラスが「勝ち組」「負け組」のようになるシーンは実際に散見されます。

この不公正感をなくすことにも繋がります。

また、チームで接することにより、極端な価値観の教師の考えに振り回されるケースもなくすことができるでしょう。

そうすることで、教育活動の透明性は高まっていくはずです。

理念を恒久的に組織へ保存する
一連の工藤校長による改革。

これを一時的なものとせず、理念を恒久的に組織へと保存することが大切です。

もし、今回の改革が強烈なトップダウンによるものであれば、トップの交代により、元通りになる可能性は否定できないでしょう。

しかし、この本に最も多く出てくるキーワードを見ると、そうではないことは明らかです。

その言葉とは「自律」

すなわち、学校組織の個である、職員や子どもに「自律的に考える」ことを徹底されています。

言い換えると、自分で考え、課題を解決するために最適化された手段を選択する力です。

また、責任と権限を譲渡し、やりがいを持たせることも重要視されています。

そのための道しるべとなるのが、学校の上位目的である「子どもを社会の中でよりよく生きていけるようにすること」です。

これに従って改革を進めていけば、手段の目的化という呪縛からは解放されるようになるはずだと考えます。

ティール組織の視点から

僕は、11月25日に京大で行われた関西教育フォーラム2018において、麹町中学校の取り組みを紹介しました。

(もちろん工藤校長にも事前に了承をいただいています。)

それは、僕が訴えている公教育のティール化の文脈のど真ん中に、麹町中は位置していたからです。

さて、ティール組織とは一体?

ティール組織とは、成熟社会における最適化された組織の在り方として、現在注目されているものです。

ティール組織の成立案件に照らし合わせて、麹町中学校を見てみたいと思います。

①存在目的

上位目的である「子どもを社会の中でよりよく生きていけるようにすること」が、まさに組織の存在目的だと言えるでしょう。

それは組織のトップの脳内に存在するのではなく、組織そのものに恒久的に存在するものです。

これに従う限り、組織は自律的に正しい進化を遂げていくはずです。

②自主経営 セルフマネジメント

子どもの宿題をなくしたり、教師に責任と権限を与えたりするなどして、個を信じた自主経営を進められています。

合理的なトップダウンによる命令が最適解とされていたのは、前時代的な価値観に基づくもの。

今日の成熟社会において、より良い組織運営をしていくためには個の尊重は欠かせないものとなったのです。

③全体性 ホールネス

全員担任制を導入することで、教師が得意を生かせるようになり、個のパフォーマンスが最大化されるシーンも増えるはずです。

それにより、教師のやりがいも増していき、よりイキイキと躍動できるようになるのではないでしょうか。

組織が個を信じ、個が組織を信じる。

自分らしさをさらけ出しながら、個が組織のビジョンに共鳴し、一体化する。

それを全体性を取り戻した状態と呼びます。

ここで、その一例として高度にティール組織化されたパタゴニア社を挙げます。

パタゴニア社

世界的アウトドアブランドのパタゴニア。
同社では働く人を大切にします。
「社員をサーフィンに行かせよう」という創始者のイヴァン・シュナイード氏の掲げる理念があります。

これは、別にサーフィンに限ったことではなく、自分が好きなことのためなら自分の働き方の融通を利かせて自由に海でも山でも映画でも行けば良いというものです。
パタゴニアで働く人たちは、組織に大切にされているという気持ちを持つでしょうし、組織へ貢献しようとする思いも生まれるでしょう。
合理性を追い求める組織の歯車として機械的に働くのではなく、躍動する組織という生命の細胞として自分らしく働くことができるのです。

ゆくゆくは働き方の新しいデザインとして、学校現場でもこういった価値観が生まれてくるのではないでしょうか。

 

まとめ〜キーマンにこの本を〜

とにかく、学校教育に携わる全ての人が読むに値する一冊です。

僕もさっそく勤務校の教務主任の先生にこの本を渡して読んでもらいました。

各校や自治体のキーマンにこの本を読んでもらうことで、改革は進んでいくのではないでしょうか。

まずは、在るべき姿を現場の仲間にイメージしてもらうことが大切。

輪郭が朧げな「がっこうかいかく」とやらの解像度を、グッと上げてくれるはずです。

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新しい時代を生きる教師の仲間たちへ

コメント1件

さる先生のファンの現職中学校教員です.
私も工藤さんの本を読ませていただき,感じることが多くありました.30代のやや生意気な感想もまとめさせていただきました.
https://note.mu/taichi_ito1987/n/nc2054f9a03aa

目標に向かって柔軟に取り組んでいる,特色ある学校づくりに興味があります.また勉強させてください.
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