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キン消し

子供の頃、といっても幼稚園児の頃と小学高学年の頃ではだいぶ違うので、より詳しく時期を限定すると、小学4年生から小学5年生の間、元号でいうと昭和の頃、といっても元年と六十四年ではかなり違うのでより明確に言っておくと、昭和末期の頃に、私の家にはキン肉マン消しゴムが数十個あった。
数十個といって、11個と99個じゃかなり印象が違ってくるので、もう少し詳しい個数を書くと、おおよそ60体ぐらいはあったと思う。いや、もしかしたら100体は超えていたかもしれない。
しかしそれは自分や兄弟が小遣いをはたいてガチャガチャしたわけではなく、ほとんどが当時の友人から恵んでもらったものである。
いわゆる「ダブったから」とか「本編に登場しない知らない超人(ゴミキャラ)だから」などといった理由で廃棄するところを「勿体無いから」と貰ったわけだ。
だから私の家にあったキン消しはメインキャラはほとんどおらず、クモノスコチラスの色違いが何体もあったりした。
マリーマンもハズレキャラらしく、私宅に何個も転がっていた。
そんなほとんどゴミでしかないゴム人形を所持して何の意味があるのか。
コレクションにするにはあまりに価値がない。
私は別にモノを所蔵することにさして興味はなく、人形遊びをするためにそれらを貰っていた。
部屋で一人、時には弟を相手に超人たちを床に並べて、原作にはない物語をこしらえて、人形劇めいたことをするのだった。
自分の頭の中にしかなかった妄想を人形を使うことで顕現する心地良さに酔った。
完全なる児戯である。
超人たちが自分の思うままに動くのだから、原作では雑魚に過ぎないオイルマンを絶対王者に君臨させることも可能なのだ。
すべては私の匙加減一つで世界をどうとでも出来る。
これが私のキン消しの思い出。

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