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佐々木大蔵 vs 大和哲也(2022年9月11日)の勝敗予想

勝敗予想は外れました。大和哲也選手がKJRVの予想を覆して見事判定勝利をおさめました。おめでとうございます。ここまで新生K-1ルールに対応するには想像を絶する努力があった事は容易に想像できます。次はどちらかが引退を賭けて戦う事になるかもしれません。今回もダウンこそ有りましたが、僅差の勝負でした。年末にもう一度あるのでしょうか。決戦に期待が膨らみます。

前回の両者の対戦は2020年12月13日(日)K-1 WORLD GP 2020 JAPANで行われた。結果は佐々木大蔵選手の判定勝利。ダウンこそ無かったが、微妙な判定ではなく、明らかに佐々木大蔵選手の有効打が多く、堂々の判定勝利だった。およそ1年9ヶ月ぶりの再戦になる。

この後、山崎秀晃選手が安保瑠輝也選手を破り王者となり、山崎選手とのタイトルマッチに勝利した大和哲也選手が現時点の新生K-1王者である。挑戦者の佐々木大蔵選手は現在Krush 王者であり十連勝中。1年9ヶ月前には大和選手に勝利しているのに、佐々木選手は挑戦者である。なにか違和感がある人もいるのではないだろうか。

ランキング

当ランキング、KJRVの最新ラキングでの佐々木大蔵選手はRISEの山田洸誓選手に続く日本人2位にランクされている。これは実際には戦ってみなければ分からない程の差。対する大和哲也選手は日本人9位。大和選手は連敗を経ての現在なのでこの位置にいる。そして過去、佐々木選手には明確に負けている。問題は前新生K-1王者山崎秀晃選手。山崎選手はTHE MATCH 2022で5位の原口健飛選手にTKOで破れ、その前の試合、4月3日にも大和選手にきれいにKOで負けている。現在のKJRVではランク外である。KJRVランキングでは過去、一貫して山崎選手より、佐々木大蔵選手を上位にランクしてきた。山崎選手は攻撃力では多彩で力強さを見せ、豪快な勝利で華があるが、防御面が明らかに甘い。恐らく佐々木選手と対戦すれば判定で完封されるだろう。隙を見せれば倒される可能性もある。大和選手も良い選手だが、佐々木選手とは明らかな差があった。その大和選手にも山崎選手はパターンを解析されてまともにパンチを食らってKOされた。ランキング通りの実力だった。

同門対決

山崎秀晃選手の不自然な新生K-1タイトル戴冠には事情がある。本来なら安定した勝ちを誇り、連勝中の佐々木選手と山崎選手は当然戦うべきだった。Krushタイトルであれ、K-1であれ、タイトルを賭けて。兄貴肌の山崎選手は他団体の対戦相手だった原口健飛や佐々木選手ら多くの後輩達に慕われている。佐々木選手は地味ながらも十連勝しており、本来なら山崎選手より先にK-1王者に挑戦したり、或いは山崎選手と対戦するのが筋であった。しかし同じ Krest ジム同士であり、同門で潰し合う事を避けたのだろう。しかしこれはどうだろう。僕は親や兄弟の肉親同士の戦いは生理的に受け付けないほうだ。なにか近親相姦に似たような感覚があって、たぶん本能的なものではないかと思っている。だから以前、同じKrest同士の卜部兄弟の対戦があった時は唖然とした。よくこんなマッチメイクを卜部兄弟は受けたなと驚いた。どんな事情があったのか不明だが、恐らく、その後弟の巧也選手はジムを開いたので、金銭的な条件が良かったのかも知れない。一方、同様な話で、RISEの大﨑兄弟は対戦の可能性があるトーナメントに不快感を示し、結局戦う事はなかった。本来兄弟対決はそうしたものだと思う。

兄弟でも親子でもない、佐々木、山崎戦が実現しなかった本当の理由は、新生K-1側がスター選手の潰し合いを避けたかっただけでなく、佐々木選手の遠慮にあったのだと僕は推測している。インタビューでもその様子は伺えた。山崎選手は御存知の通り、現在美人の奥さんと結婚して、お子さんもいる幸せな家庭を築き、新生K-1の選手たちの一種の目標や憧れの存在になっている。彼が大怪我や困難を乗り越えて結婚し、幸せな家庭を持った以降も、同門選手達と家族のように付き合っている様子が伺える。新生K-1選手達の理想像でもある。

同時に、佐々木選手にもお子さんと幸せな家庭がある。確かに親兄弟ではないが、同ジム同士で潰し合うのは避けたいと思うのは人情だろう。ただ、これには賛否両論あると思う。勝負の世界は、それが嫌なら選ぶべき職業ではないとも言えるし、その厳しさを超えるところが見せ所になる世界でもある。僕は親族兄弟対戦でないなら戦うべきだと思う。どちらかが引退しない限り、いずれこの両者は戦って欲しいと思う。そしてその先の高みをファンに見せて欲しい。

ボクシング

前回、大和哲也選手は佐々木選手に判定で完敗した。大和選手は弱い訳ではない。ムエタイで8本のベルトを奪取した超強豪である。ただし他の多くの選手も他競技から新生K-1の王者になるのは難しかった。それは他のNoteでも再三書いてきたが、ルールの問題である。大和選手は元々ムエタイベースの後ろ重心の選手だった。掴み、ヒジを禁止された新生K-1ルールはムエタイベースの選手がアジャストするには時間を要する。名だたるタイの王者も、このルールでは惨敗を喫している。このルールに特化して練習してきた佐々木選手に勝つのは容易な事ではないだろう。それは同じような道筋を歩んでいる梅野源治選手を見ても明らかだろう。肘ありでは超強豪の梅野も、ルールが異なれば皇治にも苦労している。

そこで大和選手は他の新生K-1に参戦した選手のように、同じ前重心のボクシングに取り組んだ。プライドを捨て、極端な前重心有利のパンチ主体のルールに自分を作り変えることに専念したようだ。その甲斐あって、山崎選手を見事なパンチでKOして見せた。もう過去の大和選手とは違う。完全に新生K-1仕様の大和選手が佐々木選手と対戦する。

カーフ以前

僕はカーフキックについていくつかのNoteを書いている。ムエタイとの差別化を図って生まれた日本のキックボクシングが、MMAから導入した技であると同時に、この技がキックボクシングの新しい技術体系を生んだ。

タイの国技ムエタイには、日本人は滅多に勝つことができない。また、ムエタイはギャンブルとして楽しまれており、純粋なスポーツとは言えない部分もある。スポーツとしての醍醐味より、微妙なポイントでの勝敗を競う事が主眼となっており、日本では流行る要素がない。

そこで日本ではムエタイをベースにして、投げ有り無し、頭突き有り無し、ヒジ有り無し、掴み有り無し、など、団体によって様々なルールが採用された。そしてヒジは流血や負傷の多さから敬遠され、掴みでの中断は地味で、素人ウケしないので禁止、あるいは制限付きの新生K-1ルールとRISEルールの、かなり似たルールが現在の主流となった。

接近戦でのヒジ、掴んでのヒザが使えないとなると、それら無しで接近戦を制した者が有利となる。判定では、下がる選手はパンチの打ち合いでは不利になり、印象も悪くなるので、前に出たほうが有利なルールになっている。そうなるとボクシングのように前重心にして、パンチ主体の攻防になる事が多い。ローキックなどの蹴り技は極端に接近すると効かせにくいし、パンチに対してスキができるので、ムエタイなどの遠い間合いで使用するよりリスクが大きくなる。結果的にボクシングが上手い選手が有利になることが多い競技となっていた。なっていたのだ。

カーフキック革命

なっていたが、変わった。カーフキックが突然キックボクシングを変える事になったのだ。それまでボクシングが上手ければ、一切蹴りを出さず、防御しなくても勝てる流れだった新生K-1もRISEも、この技一つでゲーム内容が変わってしまった。膝上を蹴るローキックは近い間合いでは出しにくく、ムエタイのように5ラウンドではなく、3ラウンドの試合ではディフェンスしなくても我慢できなくはない。ローキックに合わせてパンチを打つほうが有利なルールになっている。ところが、膝下の急所を蹴るカーフキックは上手く打てば即効性が有り、3ラウンドでもディフェンス無しではリスクが大きい。これにより、極端な前重心をしていると、数発で戦闘不能になるリスクを意識せざるを得なくなった。カーフキックは単なる総合格闘技から来た技ではなく、キックボクシングのゲームを根底から変えるほどの技だった。

カーフ以降のゲームになる

武尊 vs レオナ、海人 vs 野杁のビッグマッチはカーフキックが勝敗を分けた。彼らは海人以外、カーフキック以前の選手。武尊は新生K-1の若手の間で猛威をふるい始めたカーフを貪欲に研究したようだ。もし武尊がこの技を使わなければ、レオナ戦はどうなっていたか分からない。明らかにレオナの戦闘能力を奪っていた。海人は若いだけあって、早々にカーフキックの名手として名高かった。野杁は新生K-1で、これほどのカーフの名手との対戦は未経験だったはず。研究はしていただろうが、名人の海人からの洗礼には面食らった事だろう。

同じ事が大和哲也 vs 佐々木大蔵でも起こる気がする。大和選手はもともと後ろ重心だから、本来ならカーフキックの影響をもろに食らわないはず。しかしボクシングの猛特訓の末、山崎選手を下した。ボクシング重心が体に染み付いているはず。そしてまだカーフキックを試合で本格的に経験していない。Krestの佐々木選手は、武尊や野杁らと徹底的にこの技を研究しているはず。序盤から大和の前足にカーフキックを打ち込む事が予想される。

大和哲也の対応や如何に

当然、慣れていないとは言え、大和選手も対応はするだろう。もしボクシングの重心でカーフキックを食らえば、勝敗は早い段階で決まるだろう。前回の対戦では目立ったカーフの攻防は無かったので、今回始めて経験する事になるだろう。意外に完璧なディフェンスを大和選手が見せ、佐々木選手の足が破壊されるかもしれないが。今回の対戦は安定した佐々木大蔵選手と成長した大和哲也選手の戦いとなるだろう。そしてこの対戦は、今回の結果がどうなろうとも、もう一度あるような気がする。

勝敗予想はランキング通り、佐々木大蔵選手の勝利とさせていただきます。

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