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ウイリー対猪木は芝居だったか?

1980年2月27日は極真の熊殺しウィリー・ウィリアムスとプロレスラー猪木の異種格闘技戦が行われた日です。あれからもう四十四年経過しました。猪木さんも亡くなりましたが、僕も猪木の一連の異種格闘技戦をファンとして、空手人の一人としてあの試合に注目していました。

大山倍達の実際に戦って見せる、その空手を信じて自分でもやってみて理屈だけでは人を倒せない事を知り、子供だった僕は大山館長の言葉を信じていました。

しかし多くのヘビー級プロボクサーや空手などの格闘家は誰も猪木には勝てず、その戦いを見ても、到底猪木に勝てるような格闘技選手は見当たりませんでした。その試合内容はどれも横綱相撲のようなもので、猪木が子供を相手に受けて遊んでいるような内容のものばかりでした。

今考えれば、まず体格が違う。それなりの実績のプロ空手家などが挑戦していましたが、体格からして勝てるはずがない。ましてやプロレスのリングですから猪木は庭で遊んでいるようなもの。また、今のファンなら、どんなに自分の競技で実績がある選手でも、ルールが異なれば素人同然となって勝てない事は分かるでしょう。

極真のアマチュア大会では世界一の空手家だったとしても、プロレスのリングで異なったルールの試合で勝てるなんて、今のMMAファンなら誰も思わないでしょう。それが身長2メートルの世界一黒人空手家だったとしても。熊殺しなんて笑っちゃいます。

それでも当時は皆真剣でした。商売に影響するからです。プロレスも空手も一選手の勝敗より、プロレスは弱い、極真空手は弱いとなっては困るのです。プロレス側は興行のプロですから、そこは手慣れたもので木村政彦対力道山のような展開を考えていたと思います。空手側もそうなる事を十分予想していたからこそ、殺気立っていたのだと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、プロレスは格闘ショーであり、商売が最優先されます。最良と思われるシナリオに沿って試合が展開されるのがベストですが、その時の状態によって必ずしもベストな試合になるとは限りません。

実際に柔道対プロレスで脚光を浴びた、木村政彦対力道山の試合も真剣勝負を装ったプロレスでした。プロレスでしたと言う言い方も複雑なものがありまして、台本をブックと呼びますがブック破りを含めてプロレスと言う事もできるのです。当然ブック破りを期待して試合を見ているマニアもいらっしゃる事でしょう。

木村政彦対力道山も平凡なブック通りだと、三戦して一勝一敗一分けとなる予定だったり、場外乱闘リングアウトだったり、偶然の反則による無効試合想定していたでしょう。

結果は木村が偶然の金的蹴りをした事に立腹した力道山が顔面への空手チョップなどで木村を叩きのめした事にした、後味の悪い結末になりました。プロレスが柔道を空手チョップで倒した形にはなりましたが、木村は本気では戦っていなかったから、本気でやっていれば結果は違ったかもと言うものでした。

このショーは結果的に現在でも語り継がれるほどの試合になったのですから、ブックの勝利と言って良いと思います。ファンは煮えきらないでしょうが、白黒ついてしまえばそこで終わりになってしまい、疑問を残したほうが永遠に記憶に残り、課題が継続するショーになるのです。

MMA的に考えれば、両者の体格を見れば力道山がどうやっても勝つのは一目瞭然です。体格に加えて経験でも力道山が上となれば、プロレスの土俵で木村が如何に柔道の達人とは言え、勝てないのは明白です。

極真の熊殺しアマチュア黒人大男空手家であるウィリー・ウィリアムスもプロレスラー猪木には弱すぎて、どのように盛り上げるか考えたでしょう。クリンチして倒し、腕の関節を取るだけで簡単にギブアップしてしまう相手をプロのリングに上げて盛り上げるには、ある程度攻撃を受けてピンチにならなければショーになりません。

そして実際に猪木は肋骨を、ウイリーは腕を負傷した事になり、引き分けの試合となった。プロレスも空手も傷が付かず、このショーは終わった。

そもそも猪木と親しいユセフ・トルコ氏がレフェリーなんて有り得ないでしょ。空手の存亡を賭けた試合をプロレスのレフェリーが捌くなんて。両者にしがらみのない者を真剣勝負なら起用するはずです。

もっと衝撃的なのは猪木、ウィリー、梶原、黒崎、大山?、新間の六人が会って打ち合わせリハーサルをしたとユセフ・トルコが証言しているのです。この中の大山氏は館長ではなく、元は大山倍達の弟子だったUSA大山空手の大山茂氏かその弟の大山泰彦氏と思われます。大山と姓は同じでも他人らしいです。もしこれが大山倍達だったらえらいことですがね。しかし、これだけでは八百長の打ち合わせと断定する事はできないように思います。単にルール説明だったとも言えます。ビジネス上で猪木と利害関係にあったユセフ・トルコの証言を100%信用する事はできません。

この動画はレフェリーをしたユセフ・トルコ氏の証言です。前半部分と後半部分で言っている事が正反対ですが、前半部分が暴露証言で、後半にあるのが表向きのコメントでしょう。確かに後半で言われているのが世間で聞かれる話と同じです。猪木の肋骨にヒビが入っている、ウイリーの腕が脱臼しているから、試合続行後にドクターストップで引き分けにしたと言っていますが、よく考えるとおかしい。試合中に肋骨のヒビが入っているのが分かるわけないですし、腕十字で腕が脱臼したようには見えませんでした。あの程度ならアドレナリンが出ている時なら痛みを感じない靭帯断裂程度でしょう。

結論としては、実力的には大人と子供の両者がどちらも名誉が傷付かずに素晴らしいお芝居を見せてくれたと言う事です。あの時の猪木はいつもの仕事をしただけですし、ウイリー側は真剣勝負をしたつもりでしょう。猪木も顔面に良い膝蹴りでも貰えば負けた可能性だってあります。しかし猪木は試合を見れば分かりますが、場外で痛めつけて引き分けにしようとウイリーを場外に何度か落としました。ここでリングアウト引き分けになるのです。ウイリーに試合をコントロールする力はありませんが、猪木にはあったのです。

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