皆さんへのご報告とお礼

10周年記念ライブに足を運んで下さった方、来れなかったけど応援して下さった方、みなさん昨日はどうもありがとうございました。バンドをやってきてこんなに楽しくて充実した1日は初めてで、頑張って続けてきてよかったなと、メンバーもスタッフもお客さんも素敵な人たちで出会えて幸せだなと、心から思うことができました。

このライブと今度のM3への参加を最後に感傷ベクトルには一区切りつけようと思います。来て下さった方には自分の口でお伝えすることができたと思うので、来れなかった方へ、どこまで誤解なくお伝えできるかちょっと不安ですが、書いてみようと思います。

感傷ベクトルは20代の囁一の分身のような存在でした。物語のための音楽という体を取りながら、ほとんどはそのとき抱えていた悩みをぶつけたエッセイのようなもので、自分のリアルタイムの心のあり方を音楽や活動を通して表現するというものだったように思います。

「シアロア」のころは、音楽が内包する無数の物語について、自分の曲を聴いて下さるたくさんの「あなた」のための物語というテーマを抱えていました。メジャーデビューが決まり、自分一人では届けられないたくさんの人に音楽を届けられるようになって、人に届く音楽ってなんだろう?と色々考えて、出来上がったのがシアロアというアルバムと、漫画でした。

「君の嘘とタイトルロール」のころは、誰かのための音楽を作ろう作ろうとなりすぎて、自分の「好き」がよくわからなくなっていました。そんな時に改めて自分のために歌ってみよう、と作ったのがアルバムの1曲目の「神様のコンパス」で、この曲ができたおかげでアルバムの全体像が見えました。結果、アルバムのもつロードムービーのような物語に自分自身を投影したような内容になりました。

残念ながらメジャーでは思うような結果が出せず、もういっそ全部終わりにしてしまおうと作ったのが「青春の始末」でした。アルバムが出来上がってからもしばらくちゃんとした答えは出ず、本当に始末がつくのにはだいぶ時間が掛かってしまいました。

今年に入って少し体調を崩してしまい、連載のお休みを頂くことになって、10年ぶりに何ヶ月もなにもしなくていい時間ができました。冷たい部屋に横たわってぼーっと天井を見つめて、ちょうど感傷ベクトルをはじめる前、大学を辞めるころ、こんな時期があったなーなんて思いながら、20代最後の長い夏休みを過ごしていました。最近すっかり「もっとやれるはず」という前向きさが「なんでできないんだ」に変わってしまっていました。周りの同世代のクリエイターたちがどんどん羽ばたいていくのを見て、自分はなんでこんな調子なんだろうと悔しくなって、そうやって気持ちが落ち込むとどんどん作るのが難しくなって、そんな悪循環にはまりながら、もがくみたいにして創作にしがみついていました。そして遂に、全然漫画が描けなくなりました。気持ちがダメになって、次に体がダメになって、自分にはこの仕事は無理だ、潮時だ、と就職口を探したりしました。LINEさんにおやすみを頂いて、ぼーっと毎日を過ごしながら考えていたのは「もう自分に期待するのはやめよう」ということでした。最初はやさぐれた気持ちで「自分なんかに期待してもしょうがない」みたいなニュアンスだったんですが、あるころふと許されたみたいに腑に落ちて、「自分に期待せずいられる」ようになりました。思えば自分に過度に期待してしまうのって、プライドの高さや奢りの裏返しみたいなもので、本当はもっとフラットに、目の前のやれることをやれる範囲の全力でやればいいだけの話だったんです。で、その結果がどうであれ、それが全力を尽くした結果なら受け入れて楽しくやってくしかないじゃないですか。それに気づいたらなんかこう、楽になったんですよね。

今まで、自分に対する高すぎる期待と現実とのギャップで溺れるようにして「誰か僕を見つけてください」と歌い続けてきました。でもそのヒリヒリした気持ちが今の自分にはもうないんです。感傷ベクトルはそんなヒリヒリと共にやってきました。バンド名がもうそのものです。でも今の自分には、物語としてこのヒリヒリを再現することはできても、自分の心からの気持ちとして生み出すことはできそうにありません。そんな風に中身が変わったのにそれを黙って続けることは、なんだかすごく不誠実なことのような気がしたのです。だからこういう形でみなさんにお伝えして、感傷ベクトルを引き出しの奥の方へしまっておくことにしました。

感傷ベクトルは自分自身なので死ぬまで辞めることはないと言ったことがあります。やめません。というか、そうやって生きてきてしまったことはどうやってもなかったことにはならないので、大切に取っておいて、たまに取り出して眺めたりしようと思います。帰る場所みたいなものだな、と思ってます。それを忘れないうちにどこか遠くへいかねばなりません。自分で書いた歌に教えられることがいまだに沢山あります。そう思うとあのとき精いっぱい悩んで考えたことは無駄じゃなかったんだなと嬉しくなります。リアルなヒリヒリを新しく作るのはもう難しいですが、でも今まで作った曲は現役です。書いた当時のリアルがいっぱい入ってます。ぜひあなたの物語の中で生かしてやって下さい。

これからのこと、エッセイ的なものも物語も両方やってきます。感傷的でなくても、生きて暮らしてく以上思うことは色々あるはずなので、そういうリアルタイムのムードみたいなものは、カオルくんとの新しいユニットで出していければいいなと思ってます。リアルタイムと言うからにはライブもやりたいですね。2人だとフットワーク軽いので、遠くにだって気楽にいけちゃいます。感傷ベクトルではいけなかったような場所に行って歌いたいなと思ってます。呼んでくださいオファー待ってます。物語は漫画がもちろんあるし、他にも色々やりたいことがあるので、引き続き同人活動も続けていきます。シアロアも最終回までのストーリーができたので、あとは作画を完走するだけ。こちらはまだしばらく感傷ベクトル名義で続きます。最後までおつきあい下さい。

そんな感じで新しい活動に移行します。ついてきてくれたら嬉しいけど、感傷ベクトルに残ってこの場所を守り続けて下さってもOKです。そしたら5年後10年後、我々も安心して帰ってこれるしね。これからもたまには思い出して感傷ベクトルの話をしてやって下さい。そしてまたみんなで集まりましょう。

それと、来たかったのに来れなかった方々、申し訳ないです。みんなそれぞれに暮らしがあって都合があるので全員バッチリ集合って難しいけど、大事な日は一度しか作れないので、タイミングの合わなかった人はとにかくごめんなさい。事前に告知しなかったのは、解散でも休止でもないからなんて言っていいかわからなかったので…。意図がちゃんと伝わらなくて変にしんみりしたライブになっちゃったらせっかくの10周年祭りが台無しだしね。それに「最後だから来る」って言うのも無しにしたかった。本当に観たいと思ってくれる人と純粋に楽しい時間を共有したかった…という囁一のわがままです。客商売としてはユーザビリティに欠けまくりで怒られても仕方ないですね…本当にごめんなさい、次は会いに来てね。

余談だけど終演後関係者のみなさんにご挨拶させて頂いて、この10年間お仕事で関わった方や友達がたくさん来てくれてて、みんな楽しんでくれてて嬉しかったです。なんかこう、生前葬とかってこんな感じ?20代最後のいい思い出になりました。ブランニュー囁一として三十路に突入できそうです。

そんなわけで、長くなりましたがご報告でした。とにかく続くので、これからもどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました!

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田口囁一

コメント1件

はじめまして、突然のコメント失礼します。
中学生のとき、「エンリルと13の暗号」をきっかけに感傷ベクトルを知りました。
それからホームページを見て、漫画を読んで、音楽を聞いて。地方在住のためライブに行くことは出来ませんでしたが、高校を卒業した今もずっと、感傷ベクトルは大好きなバンドのひとつでした。
この言い方が正しいのかは少し微妙なところですが、沢山の素敵な作品をありがとうございました。
これからも田口さん含め、感傷ベクトルの方々の行く末を応援させていただければと思います。
そしてまたいつか感傷ベクトルとして戻ってきた時は、是非ライブを観に行きたいと思っています。
沢山の感動を、本当にありがとうございました。
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