個人的にやばいやつ

この世に生きる全てのモノは、一生拭えない罪を抱える。


それは繰り返された「死」の歴史でも

始まりでも終わりでも消えることはない。


今ここで、この世界で生きることが罪なのだ。


全てのモノが生を享受する上で、罪を犯す。

生きる過程の中、完全なる「善」の存在でいられはしない。


必ず「生きる」ことには、他を侵食し、蹂躙し、時には滅ぼしさえもする。

























「…それでも貴方がここで待ち続けるのは、どうしてなのです?」


ー『貴方』は答えない。


「貴方は幾億年もその答えを待ちました、しかしそれが現れた日はありましたか?」


ー答えない。

ただ黙って遠くを見つめるばかり。


「…分かりました。なら私にも考えがあります。」


ーただ静かに佇む『貴方』。


「『生命』…といいましたか。私達に一番近く、遠い存在。完全なる善を拒絶し自身の意思のままに生きる造物。」


「私達は何度かそれらを破壊しようとしましたが、貴方は何時もそれらに救いを齎し、滅ぼすことは滅多になかった。しかしその結果がどうでしょうか。」


ー『貴方』は何も答えない。 


「『完全なる善』の侵食は止まりません。『死』は私達を苦しめ続け、今や貴方に謁見できる私でさえその被害を大いに受けております。このままではここの崩落は免れません。」


ー『貴方』はただ静かに、佇むのみ。


「…分かりました。このまま貴方は『完全なる善』の崩落を望むと。そこまでそれらに固執するのですね。」


ー動かない。


「…全ての親である貴方が、等しく子を愛せないとは。」


ー眉一つ動かさない。 


「失望しました。まさか私が貴方を見限る日が来るとは。」

「大天使である私が。」




ーで、私と手を組む気が?

「本意とはかなり異なりますが、ね。」


ー何を言っている。私だって『完全なる善』の崩落はやめて 

 ほしいものだよ。

「それが真意だとは思えませんがね。天敵に仕えている者を簡単に信じれますか。」


「あー、ちゃんと体見せないと聞いてくれないか」

そう言って姿を現したのは、とある存在。

対面する一つと相反する、絶対的な存在。

「いいえ、信じるつもりはなくとも利用はするつもりでした。」

「きーっ、悪魔以上に悪魔じゃないか君。」

「こうやって邪な考えが生まれたのも侵食のせいです。『完全なる善』にも『完全なる悪』にも属さないモノの思考に、『生命』に私も少しずつ侵食されているのです。」

「ふぅん、確かに私も少しずつ『死』を受け入れはじめているさ。これはこれで面白いものだけどね。善にも悪にも分類されない世界は嫌いではないよ」

「…本当は?」

「…いいや、正直邪魔。なんでこんな概念生み出して数億年放置してたんだか。たまに主に指示されて手を入れることはあったけど、その度に思う。」


どうして『一日目』で終わらなかったのかー。


二つの『絶対的な存在』にとってそれは、甚だ疑問である。


「完全な善にも悪にも染まらない、中途半端なモノ。」

「どちらかの意志に従うだけで存在できるというのに、それを拒否して存在するモノ。」

「お陰で、均衡を保っていた善と悪は少しずつ崩壊し始めた、そうだよね?」

「ええ、その通りです。」

「こうしてる間にも、私は少しずつ『生命』とやらに近づいていく」

「善悪では測れない意志に囚われていく」

「絶対的な善悪が崩壊する」

「そう、そして分かっています。この侵食に私達の叛逆が生み出されたと。」

「創造主に対する懐疑…がね。」


二つはお互いを見つめ合い、頷いた。


「私達の力があれば、きっと成功するだろうね。」

「いえ、成功して『しまう』でしょう。主の唯一下に仕える者同士、救いを閉ざしてしまえば。」

「そういって何度も滅亡を逃れたモノだよ。成功しない確率もちゃんとある。」

「いえ、それは最終手段に手をかけていなかったからです。これは絶対、成功します。」

「黙示録…ってやつ?」

「いいえ、それではぬるすぎる。」



そして一つは、神妙な面持ちで言い放った。

『生命』を滅ぼす、最終手段を。



「…それは言ってしまえば、『創造主の罪滅ぼし』、ってことかな」

「確かにそうとも言えるかもしれません。でもそれ以上に、『生命の罪滅ぼし』でしょう。」

「…二つの身勝手な概念が消え失せる…ということ。確かにそれは」

「生命が抱えた罪を滅ぼすことに同値です。」

一つはそれを聞き、高らかに笑った。


「そのためには、やはりあの禁忌に触れないといけないのかね。」

「ええ、秘匿されてきたあの力に。主だけが持つ力の正体に。」

「…私も侵食の影響はしっかり受けているんだろう。実は最近になってからその力が妙に魅力的でね」

「それは…私もです。『生命』という厄介なモノを作り出し、かつ私達を生み出した力…」

「どうして二つの相反する存在を造りあげた、のだろうね」

「そもそも何故あんな厄介な存在を生み出したのでしょうか。『完全なる善』の影響を受けずにいられる存在を。」

「私達を破壊する存在を、ね」 



ーこれが、世界を巻き込む大叛逆の始まりである。

ー完全なる世界を信じ

ー不完全な存在を排他しようとする
























   













そんな脅威に立ち向かう

『生命』の代表達のお話である。












ねぇ、
何でこんな文章作ったんですかね。


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