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いちにちの記録。(2018/11/18)※鍵なしです

妻の休日なのでお出かけ。

朝飯は昨日ホームベーカリーでタイマーセットしていたパン。妻の好みでもちもちのやわらかめを目指しているが、偶然の要素が多くてなかなか計算通りのパンは焼けない。それでも1年ほどつくりつづけた結果、気温と水量の関係や脂分の配合具合などでなんとなく狙いはつけられるようになった。

パンに昨晩の残りの手作りマヨネーズをつけて食べる。妻はマヨネーズはつけずにバター。あと、自家製柿ジャムをのせたヨーグルトを食べていた。食卓にある大量の柿が次々と熟れていくので、近いうちまた次のジャムを煮なければならない。

「雨の日の女はみんなジャムを煮る 俺の嫌いな匂いをさせて」

という短歌をつくったことがあるくらい、果物もジャムも苦手だが、柿はあまり甘い匂いも酸っぱい匂いもしないのでまだ耐えられる。家に野いちごが生えなくてほんとうに良かった。

出がけにテレビでポンキッキの名曲「功夫淑女(カンフー・レディー)」が流れ、なつかしさにうろたえる。最初は「聞いたことがある気がする」ぐらいだったが徐々に記憶が呼び起こされ、子どものころかなり好きだった時期があったのを思い出した。

当時は歌詞が表示されなかったのでうろ覚えで歌っていた。そしてこの曲が流れる時間帯というのは「学校に行きたくない」という感情が強く湧き出す瞬間だったということも思い出した。あのころからサボりたい人間だったのだから、僕の怠惰は筋金入りだ。

妻と家を出て、東武動物公園に向かう。大手町乗り換えで半蔵門線直通で一本。案外近い。このルートは妻が昨晩調べておいてくれた。どの車両に乗ると乗り換えがしやすいかも。

旅行中の移動では「2分間ミステリ」を二人で読むのが習慣だ。文庫で、見開き程度で終わる謎解きのストーリーがあり、ストーリーの最後に読者への謎が出される。犯人は誰か、とか、何を証拠にこう判断したのか、とか。それを二人で解いて、不備のある問題に不満を言い合ったりする。

この本は以前二人で旅行した高松で見つけ、以来、旅行には必ず持っていくようになった。続編も続々編も出ていて、いま我々はまだ2巻の途中だ。たいてい妻が眠くなるか、電車に酔うかしたら休止するので、まだしばらくは楽しめると思う。この日も妻が眠くなったので本を閉じた。

東武動物公園駅につき、徒歩10分の道のりを歩く。途中でバスに抜かれたが、散歩なので楽しい。道中、不思議なコミュニティセンターがあり、さらに動物園の近くにはもっと不思議な小学校があった。全体的には首里城のような琉球風のデザインで、朱塗りに見える柱は「ひらがなブロック」が積まれているみたいになっていて、よく読むと、唱歌の歌詞や生き物の名前になっている。

https://matome.naver.jp/odai/2138119978194706001

あとで調べたらどちらも象設計集団の一九八〇年代の建築。知らなかった。素晴らしい。ちゃんと未来も保存されてるといいけれど、早晩、耐震補強だの老朽化だのといって壊してしまうことになるはずだ。僕の子どものころの風景はみんなそんなふうになくなってしまったから。

カピバラとアザラシに目がないので、東武動物公園は天国のようだった。同じ日に二種類とも見たのは初めてだったかもしれない。

12時からのアフリカゾウのフィードタイム、からはじまり、30分刻みにあるイベントを余すところなく見ていった。

13時からの動物のパレードでテンションが上がり、13時半の「カバと親しむ」と冠したイベントでは泥池からわずかに背中を出しているだけのカバの前で解説を聞くだけで何をどう親しめばいいのかわからず、昼飯の豚まんを食いつつビールを飲んでいたら14時のマントヒヒダッシュ(マントヒヒの群れが一瞬で部屋から部屋へ移動する)は数秒遅れで見逃し、14時半のオットセイショーでは芸をするオットセイよりも何もせずにプールを泳ぎ続けているゴマフアザラシに見とれていた。ショーのあと、オットセイとアザラシは歩道に出てきてファンサービスをしていた。野球場で試合前とか試合後とかに出待ちされているプロ野球選手みたいだった。

気づいたら体が冷えていて、園内の犬屋敷のようなところで犬を抱いて暖をとった。一時間以上も。ふと膝に乗ってきて、僕の顔じゅうを舐めて愛想をふりまくスニフという名の犬がいた。気が合ったのかと思ったが、しばらくしたら他の客のところにいって、ルーチンのようにそいつの顔も舐めていたので、キャバ嬢のような生きざまの犬なのだろう。それはそうとキャバ嬢とカバ像は似ている。園の入り口のカバ像を見て僕が最初に思ったことだ。

犬屋敷から出ると外は暗くなっていた。帰り道、ライトアップされた遊園地を歩いて帰る。「今はどんなとこでもLEDをつけてイルミネーションと謳うだけでだいたい客は集まる」と妻は言っていたが、そんなに単純なものでもないと思う。ともあれ、夜の遊園地は昼間より楽しそうなのはなぜだろう。

途中でカバの檻を通った。カバは昼よりも動いていた。夜行性なだけだろうが、人間がいなくなってほっとしたようにしか見えなかった。家族が寝静まるまで布団の中で耐えていた鬱で引きこもりの男のようだった。

園の出口でバスに乗り、駅の改札口のすぐ手前にある日高屋で早めの夕飯にした。妻はラーメン。僕はつまみとチューハイを2杯。電車では二人とも寝た。

楽しかったね、いい一日だったね、と妻とお互いに確認しあいながら帰り、居間でフェルメール展の宣伝番組を見たりしながら夜を過ごした。すいていれば行ってもいいのだけれど、それはありえないのでたぶん行かないだろう。妻と僕は人混みが苦手な点で気が合う。たぶんあのカバとも気が合うはずだ。

妻はいつの間にか眠ってしまい、一人でテレビを観て過ごした。夕飯が早すぎたので、二日前の残りの切り干し大根の煮物で余っていた白飯を食べた。

小説ならここで一日を振り返ったり人生をまとめたりするのだろうが、これはただの日誌なので、そのあとはソファの妻を起こして一緒に二階に上がって寝た。

(特に不快に思える内容もないと思うので今回は公開にしました)

サポートありがとうございます。受け取り金額が2500円になったら、カナダ産小麦粉10kg袋を買うつもりです。半年ぶんのパンが焼けます。