phenomenon

東京家政学院高校俳句同好会の部誌、「phenomenon」を無理を言って送って頂いた。てふこさんのnoteで見て、好きな句が多くて気になっていた。

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まずはこのひとの句、色々考えて結果ちょっと振りきれてる感じが面白い。

母の日も体調悪い系女子か /高野恵

唖蝉の男かはゆく鳴かせけり /高野恵

一句目のインパクトといったら。体調悪い系女子、いるよねー、と思うが、こんな句絶対詠めない。このなんかだるっとした感じ、詠む側も体調悪い系女子か…、って諦めてる感じとか。二句目、かはゆく、が良い。BL読みしなくても可愛い。


夕凪や感性がほぼ死んでいる /大西菜生

スカートの脱ぎ捨てられて秋の海 /大西菜生

安定している、というかすでにかなり自分の色を確立している感じがする。矛盾しているようだけどそれは不安な色なのかなと。不安で言い過ぎそうになるのを抑制している。少し冷たくなった秋の海の前にスカートが脱ぎ捨てられた光景の不安。感性が死んでいく不安。「ほぼ」と付けられるところに自分に対する客観性を感じる。


向日葵や反戦はときどきみだら /神田くるみ

怖いから逃げよう陽炎は姉だ /神田くるみ

1句目、向日葵の健全すぎる感じと、反戦の奇妙なあかるさ、みだらさのリンク。2句目、陽炎は妹でも兄ではなくて、ぜったい姉。姉でないと自分を覆っていくような怖さが出ない。この人の句はどの句もなんだか挑戦的で思い切りがいい。


遠足や押し広げたる地平線 /八品舞子

きっとどこまでも行ける。地平線を自分の力で広げてゆける。この遠足は永遠に続く。もっと遠くまで。このひとの、今をもっと描いた句が読みたいかも。レジスターの句も好き。


ことわざの衰へゆくや楡の花 /児島豊

言葉が生まれては衰退していく。楡の花はそのさまを長く見守りつづけている。楡という漢字と比喩の喩は似て、響いてくるものがある。めぐること。繰り返してゆくこと。それを少しだけ高い、別の視座から眺めている。


彼女たちのことをまったく知らないので句をもってあれこれいうことはできないけど、眩しい。私ももっと悩んで悩んで思い切りよく書こう、と思わせてくれた部誌でした。送ってくださった大西さん、本当にありがとうございました。



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