「記憶沼」読書会②

(2)表記・音韻
表記にも非常に気を遣って書かれている。音韻も隙あらば揃えてくる。下記に挙げたもの以外にももちろんある。

ちりぢりにありしが不意に鴨の陣
前半を平仮名、後半を漢字にすることによりバラバラだったものが突如明確な形を取ってくる立体感を出している。

母と海もしくは梅を夜毎見る
ぱっと見てわかるように、母、海、梅、毎の漢字はすべて母の字を含んでいる。

もちろん情景としても成り立つが、不思議に現実感がない(そもそも夜毎、母と海や梅を見に行く関係性って情念を感じてこわくないですか)。おそらくこの母はもう死んでいて、海や梅を見ることでその情景にいた母を思い出しているのでは、とすら思えてくる。Umi/ume/miruとu,m音もそれぞれ揃っている。

宗教に西瓜に汁の赤さかな
Sの音(宗教・西瓜・汁・赤さ)が揃えられて、涼しいところに赤さのイメージが際立つ。宗教の不気味さと西瓜の赤さが妙にマッチしている。


新涼や口を漱げば意識に歯 も同様に新のs、漱げばのs、意識のsが重ねられて歯で突然違う音が出てくる感じ。

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