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「調和」と「不調和」を感じるセンスを持ったキャンパーとの出会い―キャンプ第1週目を振り返って


第1週目が終わった。大きな大きなテディベアみたいな姿をした彼は、私の心にものすごく大事なことを残してキャンプを去っていった。彼と過ごした1週間が終わった今、教えてもらったことを心にちゃんと残しておきたいから、言葉にしてみようと思う。

【感情の幅を揺らす光と影の因数分解について】

 32歳になったばかりの彼は、音楽が大好きだった。特に1950年代の音楽が大好きで、私が歌を歌うとボイスパーカッションみたいに口でリズムを刻んでくれた。不機嫌な時、心地よくない時は足踏みをして音を立てて、言葉にならない声を出しながら自分の右手を噛む。嬉しい時は口笛を吹いて、最高の笑顔で笑いながら両手を思いっきり振る。
 彼は言葉を話さないけど、何が好きで何が嫌いなのかを自分ではっきりわかっていてそれを正直に伝える術を持っている。それはすごく素敵なことだと思うのと同時に、私はそれができているだろうかって、「好き・嫌い・違和感・大事」を自分の中であいまいにすることで楽をしようとしていないかと反省した。
 何が嫌いで、何が好きなのかを特定して、そこに含まれる要素を分解してみること。そこにある共通点を探ってみること。光と影があって世界が成り立っていて、その2つはいつも同時に発生しているのと同じように、自分の感情の幅を揺らす要素を探ってみると自分の中心を感じられるようになること。何が好きで何が嫌いなのか。そこには明確な相互関係性があって、どちらも一人の人を知る上で、一人の人を語る上でものすごく大事な要素だって教えてくれてありがとう。

【精神状態の反射について】

 私のその時々の精神状態が、彼の精神状態にすごく影響していることに気が付いた。精神状態だけでなく、私が少しでも「次の活動はジムアクティビティだから、今のうちに移動しておきたいな」と思って彼を「移動“させよう”」とすると、足踏みをしながら言葉にならない声を出して、手を噛んでいた。私が歌を歌って、私自身が幸せな気持ちでいながら彼が動くまで待っていると、いつも自発的に立ち上がってくれた。私が疲れていて楽しいふりをしているときに彼は両手を振ることはなかった。私が嘘をつかずに本心で幸せな気持ちでいるときだけ、笑顔を見せて両手を振ってくれた。目に見える事実しか確かめようがないけれど、私のエネルギーの状態を彼が敏感に感じ取っていたことは本当に確かだった。彼の行動が私の心の鏡みたいになって、私自身の思考に少しでも「自分のために、彼にこうしてほしい」という思いがあることを気が付かせてくれた。

【音とリズムの調和について】 

 私のキャンパーは、音楽と心地よい微風・プールで水の中にいることが大好き。反対に、大きな音や人が沢山いる場所が苦手だった。一緒に過ごすまでは、音を感じる感覚がとっても長けているから、大きな音を聞くと苦しくなってしまうんだろうと思っていた。
 でも、数日間彼と過ごす中で不思議なことに気が付いた。ものすごく大きな音だったとしても、それが「調和した音楽」なら一切パニックにならない。混んでいる場所でも、周りの人がそれぞれにおしゃべりをしているとパニックになるけど、みんなが揃って歌っていたり笑っていたりする場面では幸せそうにしていた。
 周りの人たちの注意が一方向に向いていないとき、過剰なエネルギーを感じたとき、他の誰かが彼の近くで苛立っているとき、周囲の音が交差して調和していないときにひどく混乱しているように見えた。

もしかしたら彼は、聴覚が敏感なだけじゃないのかもしれない。それ以上に、「調和」と「不調和」に敏感なのかもしれないリズムや音、人間のエネルギーの調和と不調和を感じやすいセンスを持っている。そんな彼が唯一この世界の中で調和を感じられるのがきっと、音楽と風と水の中なのだろう。

 敏感なゆえに生きづらさが生じているのは事実で、それゆえの苦しさを隣り合わせて生きているのも事実。だけれど、あなたの持っているその感覚はとても、とってもとっても大事な感覚だねって、私も一緒にその感覚を持ち続けられるだろうかって、抱きしめたくなった。

人間の意識が現実化して世界を形づくっていくのなら、人間の内側に世界の全てがあるのだから、たった一人の人と向き合うことから全部始まることを実感しているよ。そして、人はその心の奥の奥の真ん中で同じものを共有していることを知っているからこそ、「違い」をおもしろがることができるんだなって。そんな覚悟をもつことができたから、下の世話も、なんだってかかってこいって思えるよ!笑 

第2週も肩の力を抜いて目の前に瞬間に集中します!がんばるぞ~!