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夫婦という生き物

夫婦というものはまるで夫婦という名前の生き物のようだなぁと思うのであって、つまり「わたし」と「あなた」ではなく、「あなたわたしが融合した生き物」になるのだということは薄々気づいていたものの、本格的に生活をともにするようになって、ますます実感するようになりました。

現に「わたしたち」は、同じ住居に住み、毎日同じものを食べ、ほとんど同じ食物で身体を構成するということなので生物学的に見ても当然似通ってくるわけであるし、同じタイミングで同じだけ笑えば同じくらい深い笑いジワを刻んで顔が似てくる。たくさん会話をして共通の話題が増えれば思考回路も似てくる。

それぞれのお友達に2人揃って会うことも増え、わたしたちは「わたしとあなた」ではなく、「わたしたち」になり、夫婦という「」の中に2人して括られて、「わたし」でもなく、「あなた」でもない、2人がないまぜになった何か別の生き物になってしまう気がしてならず、そのことは楽だし居心地がよくもあり、やや怖くもあるのでした。

怖いというのは、自分という個が個でなくなるような、相手の脳に同期したっきり分離できないような膠着や硬化、戻ってこられないような感覚のことで「嫌だ」とかいうのとはまた違うのですが、運命共同体になってしまったような、わたしとあなたの境界線が見えなくなるようなそんな心地がするのです。これはわたし特有の思考なのかしら、その他の夫婦たちでもそういう不安を抱くことはないのかしら、あるといいなぁと小さく祈りながら、曖昧模糊な恐れを折りたたんで、そっと胸ポケットに仕舞ってきた、入籍からの2カ月半であります。

だからあるとき、「あなた」が珍しくちょっとした癇癪を起したとき、耐えきれなくなったわたしの脆く乾いた皮膜にピシッとヒビが入ったかと思えば電光石火ビビビにつき着火、全身に引火して炎上、瞬く間に炎は燃え広がり爆発を起こし、気づけば道路の真ん中でウワーッと奇声をあげながら大の字になって暴れたわたしに対して驚きの表情でこちらを見る「あなた」が目に入ってきたとき、わたしは「あなた」とまだ身体も思考も異なる他人であることにひどく安心したのでした。

時間をかければかけるほど、だんだんと夫婦になっていくというのは比喩でも何でもなく本当に「夫婦」という個のものになることだと思います。それは「2人は何だか似ているね」という茶化しめいた話よりもはるかに深刻なもの、いつか見分けがつかなくなるくらい顔が似て、思考も行動も似て、ひどい火傷をしたときに熱で皮膚がとけてくっつくかのように身体ごと癒着して1人の人間になってしまうのではないかと思うと、ときどきは本当に憂鬱になる。

気が合うというと片づけてもらっては困るし、長年連れ添った夫婦を見てみろと言われても自分のことではないのだから不安がぬぐい切れない。わたしのこの感覚はおかしなものなのでしょうか、誰か教えてください。

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佐々木ののか

文筆家。メインテーマは「家族と性愛」コラムや小説のお仕事お待ちしてますmail:sasaki.nonoka@gmail.comTwitter:@sasakinonoka

家族と性愛

家族と性愛にまつわる話です。 出産・子育て、セックスや新しい家族の形など
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コメント9件

お気持ちわかります。
わたしたちも結婚半年目で、夫婦ユニットで活動してるのもありほぼ24時間ずっと一緒なので「わたしとあなた」の境界線がとても曖昧になってきてますが、ふと夫婦げんかしたときには結局、自分と他人は「心から理解し得ないのではないか」と孤独を感じたり、不安になったりもします。でも、実際お互いが違う生き物だとしてもリスペクトし合える夫婦の関係性を大事にしていきたいなと思ってます。by 野良夫
ののかさんの気持ち、わかります。
僕も野良猫みたいに生きてきたので、共同体になっていく感覚がなんだか不思議でした。今はどこにいても自分の血と肉が単に離れているような感じで、自分の行動が妻の何に繋がるかを意識せずとも頭にある感じです。
行動も思考も似てきて、からだごと癒着してひとつになってみたい。憧れますね、こういう夫婦。私は20年以上も一緒にいたけどそうなれなかったなぁ。。次はこんな溶け合える関係を目指したいですね。
初コメ失礼します。私はお似合いと言われたり自分たちがニコイチだなぁと感じる出来事があると凄い嬉しいと思うので、私は自ら融合したいと思っているのかなぁ。笑
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