【ネタバレあり】番長二人の対立と卒業

はじめに

ザワオ〜ザワでの番長二人の拗れ、対立、そして卒業についての完全なる個人的な解釈です。ハイローシリーズ通してのネタバレ+雑誌・web記事バレがあるので注意。以前ふせったーに載せた内容の誤字を修正し、少し加筆しました。
最後に『』内の引用先を載せています。載せた発言はごく一部なので気になった方はぜひ見てみてください。

対立

実に端的に対立した理由が分かる二人の発言があったので引用します。まず一つ目は鬼邪高校の”キング”村山良樹役の山田裕貴くんの発言です。

『もともとは「轟ちゃんが鬼邪高をまとめてくれるんだったら、俺は出ていってもいいな」と考えていた(1)』。

二つ目は鬼邪高の全日制の頭であった轟洋介役の前田公輝くんの発言。

『今後、村山と戦うことはないって思った轟は一瞬、卒業を考えたんじゃないかなと思うんです。他で力をつけたらまた村山は戦ってくれるのかな、って(2)』。

どちらも別の場所でのインタビューでの発言なんですが、偶然にも同じ“卒業“という題材を二人は話していたことになります。 これ、似ているようで意味合いがちょっと違う。

村山は自分の身を削って守ってきた鬼邪高を轟に託そうとしていた。
轟は守りたい鬼邪高を捨ててでも村山を追いかけようとしていた。

これを見ても分かるんですがこの二人、お互いの実力を本当に認めあっているんですね。
S2E7の出会いから始まり、ザムを経緯し、そしてザワの終焉まで、最初のタイマンから一貫して村山は轟の実力を買っていますし、轟は村山に憧れて執着しています。 認め合っている同士なら一見仲良くなれそうなものですが、この二人、ザワオではびっくりするほど相容れませんでした。
ザムでは共闘し絆を見せた彼らでしたがザワオでは相容れずぶつかり合い、ついには映画で二度目のタイマンをすることになってしまいます。

というわけで、そんなザワオで拗れていく二人を追っていきます。

まず村山良樹。
彼は、轟が鬼邪高をまとめてくれるなら出て行ってもいいな、と思っていました。しかし『ドラマ版で、轟ちゃんがちょっと強さをはき違えていたり、「まだわかっていないな」っていう部分があったりするのを感じて、「そういうことじゃないだろ」ってまだ教えないといけないのかな、と思って(3)』卒業を保留していました。
ザワオでは全日ステークスで食券1ヶ月分を賭けるほど轟に期待していた一方で、『轟からしたらすっごい遠回しで、マジでわかりづらい(4)』言い方でお説教をします。轟から張られたタイマンを「まあでもこれからもお前と喧嘩するつもりはねぇけど」「だって今のお前つまんねぇんだもん」と断ります。「俺に牙向ける前にやることやってみな」と遠回しに助言はしますが、轟にとっては距離を置かれたようにしか感じられませんでした。立ち尽くす轟を振り返りもせずに村山はコブラちゃんの呼び出しに嬉々として部屋を出ていきます。そしてとうとう定時制と全日制の分断を中庭で宣告しました。
ザワオでは轟を突き放してきた村山。でも、違うんですよ。
当時の村山の言動を、山田裕貴くんは、『「(轟自身が)自分で気づけよ」っていう(5)』考えから来ていると言っています。『早く成長してくれよ。何やってんの、轟ちゃん。いつまで迷ってんの。こういうことだよ。楓士雄くんを見てみなよ(6)』とも言っているんです。
強さに固執せず、周りを見て、弱い者を守る戦い方を学んで欲しかった。
それをコブラちゃんに教わり、そして轟の姿を見て気付かされたからこそ、轟自らの力で気付いて欲しかったんです。
それ以前にそもそも村山は好きなものは好き嫌いなものは嫌いってはっきり態度に出す男なので、遠回しで分かりにくいものだとしてもここまで構っている轟は「好きなもの」に分類されているのでしょう。
なんでここまで轟が自分で気付くまで成長を待っていてくれていたのというと、高校生では別格の轟の強さ、ザムで見せた頭の風格を評価してかもしれませんが、どうしても見捨てられなかったんだと思います。過去の自分と重なって、同じ道を歩き、迷う轟を。

で、轟洋介はといえば、村山に『どうしちゃったのかなと思うほど執着してしまった(7)』。
ドラマではアタマになる君主論を読みながら「村山ぁ」と発言していたことからも、村山の頭の在り方を理解するために努力していたのが伺えます。八木高へのカチコミも彼が頭を模索しての行動です。しかし、定時が揃ってSWORDの件で外の世界へ行っている時に、村山に訳を聞くも「関係ない」と拒絶されたら「まあいいや」と流してタイマンを再び張ろうとしたり、定時がボロボロだった時でも黙々とパンチングをしていました。鬼邪高を守りたかった轟にしては、らしくない行動です。
そう、轟は鬼邪高自体は好きなんですよね。見た目で人を決めつける「形だけのクズ」は未だに大嫌いですが。ザムでは戦いに消極的な村山に「頭やめろ」と発破をかけ、鬼邪高を巻き込まないためにコンテナ街での喧嘩に3人で行こうとする村山たちをトラックで生徒を引き連れ合流しました。『轟は鬼邪高を汚したくないんですね。そのために鬼邪高を守りたいと考えている(8)』という公輝くんの言葉からも分かる通り、鬼邪高を大事に想う気持ちは強い轟くん。
そんな轟の目に鬼邪高が入らなくなってしまうくらいに、轟は盲目的に”村山良樹”個人に執着していました。
もう一つどうしても触れたいのは、ドラマでの轟の村山に対する微妙な距離感です。タイマンを挑むも村山のいる畳には足を踏み入れないし、パンチング中に村山が訪問してきたら長い時間かけて乱れた身なりを整えていました。映画の話ですが、村山に死角から肩へ手をかけられた時はこっちが驚くくらいにびくっと反応していました。ザムでも村山に不遜な態度だった轟が。
村山への異常なほどの執着が生まれたのは間違いなく最初のタイマンでしょう。今でこそ強い彼ですが、元々はいじめられっ子の弱者でした。プライドの高さから周りに「助けて」と言えなかったのかもしれませんが、手を差し伸べてくれる家族も仲間もいなかった彼は、孤独に身体を鍛えた結果、自分をいじめてきた不良を倒し恐怖を克服します。しかしそれだけでは心が満たされなかった彼は、不良狩りと称して「名誉と栄光」を掴むために日本一ワルが集う高校に入学します。
そこで轟は皮肉にも「形だけのクズ」じゃない、他の人間とは違う村山に出会ってしまいました。敗北しても何も奪われなかったのは彼が初めてでした。そして村山からの「勉強しなおせばーか」という激励を込めたデコピンに、強さ以外にどこか惹かれるものを感じてしまったんですね。

公輝くんは、轟から見た村山を『「太陽」(9)』だと表現しています。遥か頭上の先にある、自ら光を放つ光源である圧倒的な存在感。それが村山でした。 しかし轟は『1人で戦うことに後ろめたさを感じていないっていう轟の闇』により『太陽みたいな村山の心に惹かれていることに気付いていない(10)』ため、村山に憧れていることには気づかないまま、執着心と対抗心ばかりが増えていきます。
あの距離感の正体は、理解できない村山に対する恐れと敬意の入り混じった畏怖の念なんです。

ザワオでの二人を回想したところで、本題に入ります。二人の対立の話です。
最初にも触れましたが、彼らは互いに認め合っています。しかも同じくらいのベクトルの大きさで、です。轟の一方的な村山への巨大感情だと思われがちですが(私も映画見るまでそう思ってました)村山の轟お気に入りっぷりも相当大きい感情なんですよ。だって、映画の話ですが村山番長、結局全日制の生徒とは轟以外は1度も喧嘩せずに「拳一つで成り上がる」鬼邪高卒業しちゃったんですよ?
村山は俯瞰でものを見られるので、楓士雄くんに「轟にはないものを持っている」とすぐに気がつきました。力の弱いものにも目を向け話し合う彼にはボスではなくリーダーの素質があり、これから楓士雄くんが鬼邪高を引っ張っていくであろうことも、あの場で(体育館)うっすら感じ取っていたと思います。最初は呼び捨てにされると「村山さんな!?」と叫んでいましたが、二度目に「村っち」と呼ばれても、隣で憤る関ちゃんとは違い余裕をもって微笑むくらいには初対面の楓士雄くんに好感も持っていました。
それを分かっていた上で、後に頭になるであろう楓士雄くんにタイマンの予約をされた時に、彼は『”今はやってあげねえよ”っていう意味(11)』のアッカンベーをしました。「俺を倒したってみんながお前に付いてくるとは限らないよ」と轟に言った通り、村山にはザワオの時から轟と闘りあっても大義がないと気付いていたんです。でも轟には言葉では伝わらなかったから、拳で教えるために、お説教するために2度目のタイマンを張ったんですよ。楓士雄くんが将来仲間を引っ張るであろうと思っているし、とても好感も持てるけど、どうしても轟に成長して頭になってほしかったから。村山さん、私情を挟みすぎでは?
話を戻します。同じベクトルの大きさだったからこそ、お互い譲れなかったんです。
そして、二人の性質の真逆さも拗れの一因になっています。
自由に振舞っているようで俯瞰でものを見る村山は、鬼邪高をまかせたかった轟に「まだわかってないな」って思う部分があったから、彼の成長のためにあえて轟を拒絶しました。
ストイック故に頭が硬く視野が狭い轟は、村山に憧れれば憧れるほど村山しか見えなくなり、皮肉にもそれは「人望がない」と言われる行動になってしまいました。
轟が自分で気付き成長して頭になって欲しかった村山と、格下と闘るよりももっと強くなって村山に近づきたかった轟。
同じ大きさの感情だったからこそ譲れなかった。だからあれだけザワオでぶつかり合った。映画での二度目のタイマンでは本気で闘りすぎて轟の眼が負傷した。 

二度目のタイマンは、轟の「村山ァ!!」という体育館中に響き渡る殺気立った怒声と、気の抜けた紙飛行機が舞う体育館から始まります。ザワオの続きなので轟は定時全日を分断されて激怒していますし、村山は意味のない喧嘩と分かっているのでやる気がない。けれど、『あの対マンでは、劇中それほど多く言葉を交わさない村山と轟が、拳を通じて分かりあってる感じがしました(12)』と公輝くんが語るように、二人が拳を交えた瞬間、鬱屈とした空気を一変させる「Jump Around ∞」が流れます。やっぱりこの二人は喧嘩でしか分かり合えないんですよね。
シリーズ通して鬼邪高を背負ってきた村山、そしてその男とほぼ対等に闘り合う轟。村山よりも腰を低く落とし、ギャラリーすらも利用し隙をつこうと足掻く、一心不乱に向かってくる轟は、最初の手数の多く足技中心のスマートな闘い方とは明らかに違っていました。やる気のなかった村山の顔にあの喧嘩の時にだけ出る凶暴な笑みが浮かびます。「強くなったねえ轟ちゃん!」と、村山が初めて素直に称賛しました。体育館中を走り回って村山は煽り自分のペースに持ち込もうとし、轟はそれに必死で喰らい付きます。
百手以上もの壮絶なアクションの果て、永遠かと思われた喧嘩は突然に終わりを迎えました。崩れ落ちた轟の負傷した左目に村山渾身の「チェックメイトォ!!」が炸裂し、痛みと悔しさと惨めさがごちゃまぜになった轟の絶叫が響き渡ります。ここ、『村山は轟と喧嘩できるのが内心嬉しくて、だからこそ全力で楽しみながらブッ潰すかんね、と思っている(13)』と裕貴くんにも言われていました。最後まで手を抜かずに容赦なく目潰しをしたのは、強くなった後輩への彼なりの誠意でした。

楓士雄くんが転校してこなかったら、どちらかが死ぬまでタイマン張ってたんじゃないかと思えるこの二人。本当にありがとう楓士雄くん。

映画での番長二人のタイマンの後、色んな意味でナイスタイミングのカムバックをしてきた楓士雄くん。彼は、素直で真っ直ぐで少しおバカで熱血で、村山と同じ太陽属性で人望もあり、そして何よりもハイロー世界で最も抜けがちな要素”気持ち”を”言葉”で”伝える”のが大変上手い男でした。
クローズ世界からの救世主により鬼邪高が変わっていきます。特に轟は劇的に変わっていきました。最初は自分より格下の男に興味もなかったけれど、憧れている村山の「お前にないものをあいつは持っているのかもね」という発言で、轟は初めて楓士雄を意識します。
轟は、素直でちょっと抜けている楓士雄を通して、村山の分かりにくい言葉の真意をだんだんと理解していきました。また、彼の中で楓士雄が面倒を見たい、ほっとけない存在になっていきます。そこからは見た目にも分かるほど、轟は生き生きと動き出しました。楓士雄の話にいの一番に乗り拍手したり、軽口を叩いたり。でも、元々轟って口が悪くて、結構笑ったりする男だったんですよね。
なんでザワではあんなに無表情を貫き(八木高は除く)、緊張感を漂わせていたのかって、”子供”の彼は早く”大人”になりたかったからなんですよ。
ザムのコンテナ街で共闘した村山は、もう”子供”から”大人”への道を歩みだしていて、自分とは闘ってくれなくなっていたから。
話を戻し、鳳仙戦では自分より弱い存在のジャム男を助け、牙斗螺戦には轟自ら参加し、強力なダークホースとして活躍するまでになります。彼は、他を抑えて「拳一つでのし上がる」闘い方から、弱いものに目を向けて守る闘い方をするようになりました。そして、エンドロールでは、頭を一旦預かる形で、後の頭となる楓士雄に村山から継承したデコピンのポーズをして、すっと手を差し伸べます。

村山にも大きな変化がありました。鬼邪高での番長でありSWORDのOの長である彼が、どこにでもいる人と同じようにどこにでもある社会の荒波に揉まれていきます。小沢仁志(関パパの方)の下で働き、初めて社会の不条理さを知り、辛い時はコブラちゃんに相談します。そんな村山の姿を鬼邪高の生徒は知りませんし、村山もそんな姿を見られたくなんてないでしょう。
裏ではレッドラムの本元を探り、全日生と鳳仙の大義のない喧嘩を中断し、”大人”の金平兄弟の乱入には”大人”として止めに入ります。「子供は夢を見るだけだが、大人はそれを叶えることができる」という言葉がありましたが、村山さんの行動は正にこの”大人”側の行動で、彼は全日の”子供”のいる鬼邪高という名の箱庭をずっと守ってきていました。そんな村山さんも、自分の夢を見つけて、これから叶えていくんでしょうね。
そして最後に彼は、関ちゃん古屋さんと共に、形式上は退学ではありますが学校を卒業します。「ありがとね」というメッセージを残して。

番長二人のザワでの成長を追いましたので、ようやく二つ目の卒業の話をします。 

卒業

村山さんの卒業の時、全日制の生徒はいませんでした。一回目の鑑賞の時は、それが正直ちょっとだけ寂しかったんです。特に、あれだけ村山を追いかけていた轟には、せめて伝えていてくれて欲しかった。
でも、この裕貴くんの話を何度か読み返していたら、見方が変わったんです。WEB記事なので長めに要約させていただきました。

『映画の、2人のシーン(佐智雄に敗北した楓士雄に轟がデコピンのふりをして手を差し伸べるシーン)がすごく良くて。俺、あの場所をたまたま通りかかって2人の姿を見てフッと笑って立ち去る、っていうのを本当はやりたかった。
でも、撮影してる中で「あ、俺大人になったんだな」ってちょっと思ったんですよ。自分も、村山も。その目がちょうどよく村山にリンクした。
「もう俺いなくてもいいか」って。
全日がバッと並んだ瞬間がすごくかっこよくて、すげぇ強そうに見えたんです。「ここに俺がいたら邪魔だな」ってめっちゃ思ったんです。
「この鬼邪高、強そうだな。鳳仙とやれるな」って。だから「あぁ、俺らはちゃんと大人にならなきゃ」と思いました。(14)』

村山良樹、そして山田裕貴くん……貴方はなんて人なんだ……… 
何度も卒業や引退を匂わせてきた村山ですが、彼はどんなに退屈だろうと暇だろうと、引退を先延ばししてきました。
  
村山は、元は1番に憧れてきた子供でした。「何をやっても人並み」だった彼に唯一あったのが喧嘩の才能でした。頭になったら自分の心が満たされると思い、彼は鬼邪高校に入学します。そして本当に100発の拳に初めて耐えて、頭の意味も分からぬうちに勝手に看板にされてしまいました。拳だけで成り上がり、強さに酔い喧嘩をしていた彼ですが、コブラとの対決で初めて敗北します。そこからコブラを通して仲間の存在や頭の意味について初めて考え始めます。
鬼邪高で拳100発の荒業に耐えた男はこれまでいなかったため、村山が初めての頭であり番長でありテッペンでした。だから喧嘩は楽しいけれど、拳の強さは上がっていくけれど、心の強さについては誰も教えてくれなかった。唯一彼の憧れであり模範になったのは、敵であり、テッペンの高さを知っていた山王のコブラでした。
村山の真の強さって、ゾンビのように何度も立ち上がる拳の強さじゃなくて、敗北から自己分析したり、敵であっても学ぼうとして直接相談しに行ける彼の素直さ故の柔軟性だと思うんですよね。さっきも言いましたが、彼は自由に振舞っているようで、自分含め世界を俯瞰で見ています。コブラの言葉と在り方から頭の意味を学び、仲間にも目を向けられるようになり、轟の不良への復讐に駆られ力に溺れている姿を見て自身の過去と重ね、轟に拳で教えてやりました。

村山の成長は、山田裕貴くんの成長にもぴったりとリンクしています。
鬼邪高は『最初に負けるチームだったので、「なんか悔しいな。咬ませ犬じゃん!」みたいなことを思っていた(15)』と裕貴くんが語る通り、咬ませ犬だった鬼邪高の頭の村山の役をどうにか印象に残そうとしました。村山の代表的な台詞と言える「行くぞてめえらぁ!!」や「あっかんべー」や「だ〜るまさんは、転ぶかな?」の台詞、また喧嘩でゾンビのようにゆらゆらと揺れる動作など、これらは全て裕貴くんのアドリブです。
現場で生まれてくるアイデアもありました。ザワの「鬼邪高の祭りは村山通せや」は現場で思いつき、日向役の林遣都くんにその場で連絡して許可を取ったものです。村山と同じく裕貴くんも柔軟性が本当にすごいと思います。

でも、これは単に思いつきでしているわけじゃない。彼がどうにか村山良樹を、鬼邪高の皆を知ってもらうために、好きになってもらうために、必死で残した爪痕でした。勿論他の生徒全員がそうです。
だからこんなに胸が熱くなるのかな。村山良樹を見ていると、なんだか泣けてきてしまうんですよね。だって役者さんの人生全てを役に乗せて、直接心にぶつけてくれているんですから。
そして、最近の雑誌のインタビューでは、キャラクターで誰が一番強いか?の話になり『不思議なことに誰が強いとか興味がなくなってきてる』『村山が最強とか気にする感じじゃなくなってきてて、それで自分もそういうマインドになっているのかも(16)』と裕貴くんは語りました。もう村山も、裕貴くんも、かつてのように爪痕を残そうと足掻かないし、1番にこだわることもない。
彼らは”大人”になりました。もう村山は”子供”と並んで喧嘩には参加しません。ずっと”子供”の世界を守ろうとしてきました。
ザワオE6では「SWORDの揉め事に全日は一切巻き込みません」と宣言して全日生徒ら(特に轟)を怒らせていましたが、外の世界の揉め事は自分達で何とかするから、お前らはここで全力でぶつかり合えよっていう激励の意味でもあるんです。

先ほどのWEB記事での轟から楓士雄へのデコピンの継承を、裕貴くんは他の所でも語っています。
『轟がデコピンの仕草をしたのが嬉しかった。あれはS2で村山と轟がタイマンしたとき、「拳だけが強さじゃない。もっと他に大切なものがあるんだ」みたいなことが伝えたくて始めたもの』『それを今回、轟が受け継いでくれた。「さすが公輝……!」とグッときました。あのデコピンが正に世代交代の象徴というか、皆で作った鬼邪高の魂が継承されたように、僕には思えた(17)』。

村山は、そして裕貴くんは。本当は、あの場を見届けて、フッと笑って、去りたかったんです。
でも、彼はそれを止めた。これまで自分が守ってきた全日の”子供”たちが、お互い支え合っていた。それがすごくかっこよくて強く見えたからです。
そして、一番大事にしていた後輩である轟が、自分の意思を受け継いでくれていたから。

「もう俺いなくてもいいか」
「あぁ、俺らはちゃんと大人にならなきゃ」

彼らの成長を見届けながらも、ついにはスクリーン上に登場しなかったのは、鬼邪高校の”頭”である”キング村山”という高校生から、”村山良樹”という社会に踏み出す大人に変わっていたからです。
村山さん、轟や全日生徒どころか関ちゃんや古屋にも何も言わないで卒業しようとしてましたよね。あれ、あの時点で鬼邪高の看板を下ろしていたからなんですよね。村山が本当に看板を下ろしたのは牙斗螺戦での「終わったあ……」という口の動きだけの言葉が出された時です。あれがもう最後の喧嘩だったから、そこからはもう、番長ではなくなった。”村山良樹”になったから、誰にも「ついてこい」や「見に来い」も言わずに去ろうとしていたんですよね。
いっつもそうなんですよ村山良樹という男は。化け物のように喧嘩をして、神様のようなカリスマ性を持ち、人間として仲間を愛して鬼邪高という”箱庭”を守ってきた男は。あれだけの偉業を成し遂げたら好かれるのは当然なのに、自分がどれだけ人に影響を与えてきても、自分がどれだけ求められようとも、まるでわかっちゃいないんですよ。人の好意に鈍感すぎる。ハイロー界で、彼ほど自分の成した大業を自覚していない人っていないんじゃないですか?
看板を下ろしたからって”村山良樹”を好きじゃなくなる人なんて鬼邪高にはいないのに。
だから誰にも伝えず、「ありがとね」という言葉を筆で綴り、一人で卒業したんですよね。勿論そんな村山のことはお見通しですから関ちゃん古屋さんも共に卒業して、定時生徒も駆けつけてきてくれました。本当に良かった。村山良樹が最後に「ありがとう」をいっぱい受け取ってくれて良かった。


そんなこと露ほども知らない轟は、勝ち逃げしやがってと今ごろはブチ切れているかも知れないですね。その悔しがる姿を見たら村山は「轟ちゃん言って欲しかったのー!?」なんてげらげらと楽しそうに笑うんでしょうね。 
轟って、そもそも村山を倒して鬼邪高の頭になりたかったわけじゃなくて、ただ、憧れていた村山に追いつきたい、村山の隣に並びたかっただけなんじゃないかなあと最近では思います。
自分より力が弱い楓士雄くんに、今は頭を預かっているけれど楓士雄くんの成長を見届けて頭を継承する轟は、もう力に固執しないし、周りを見る眼を持っています。彼はこれからは絶対に負けません。村山さんの分かりにくい言葉を、今の轟は心で理解しているのだから。
全日集合の体育館では村山しか見てなかった轟は、鳳仙戦、牙斗螺戦では村山と関わろうとはしませんでした。横に立つ仲間に目を向けていたからです。映画は村山の鬼邪高からの卒業物語であり、轟の村山からの卒業物語でもあります。あと一年もない高校生活を、友達と全力で”子供”として楽しんだ後に、”大人”になった轟が、また村山さんと再会する日には、あの時言えなかった言葉を伝えられるだろうな。そう思います。

最後に

育った環境も性格も対照的で分かり合えなくて、でもどこか似ていて、お互い認めあっているどこまでも不器用な番長二人が、村山良樹が、轟洋介が、私は大好きです。 新しく登場した幼馴染組も、全日制の生徒も、鳳仙も、牙斗螺も愛せて、そして何よりエンターテインメントとして面白い映画で本当に良かった。今がとっても楽しい。ずっとこの祭りが続いてくれたらいいのにな。
ずっと支えてきてくれた初期の鬼邪高のみんな、関ちゃん、古屋さん、辻、芝マン、三中トリオ、定時の生徒、関わってきてくれた人にも本当にありがとうと言いたいです。久保監督、映画で番長二人にタイマンを張らせてくれて頭が上がりません。魂が救済されました。作品に関わる全ての人に感謝を。あとLDHさん、冬にライブ行きます。
続編が出来ることを祈って、ド新規ですが微力ながらもこれからも応援していこうと思います。 ここまで読んでいただきありがとうございました!

追記
山田裕貴くん名前を間違えてしまい本当にすいませんでした

参考

(1)・(3)・(4)・(5)・(14)

紙なら擦り切れるくらい読んでるのでぜひ見てください

(15)

ずっと大好きです。卒業おめでとうございます

以降雑誌や映画パンフです。あまりの情報量と熱量と推しのグラビアもあるので実質タダ

(2)・(6)・(7)・(10)

FLIXplus vol.33 2019年10月号増刊

(8)・(9)・(11)

日本映画navi vol.83 2019年

(12)・(13)・(17)

HIGH&LOW THE WORST 映画パンフレット

(16)
月刊Newtype 2019年10月号