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南紀白浜、温泉街にて。

早朝4時半、あたりはまだ真っ暗。「魚市場に行くトラックの運転手みたいですね」と言いながら、南紀白浜に向かって清水さんと車を走らせます。(白浜温泉の取材は通常、外湯が営業を始める朝7時までが撮影タイム)

夜がしらじらと明けてきた頃、外湯をめぐって撮影開始です。ひとまず人物ナシで撮り終えてから、営業が始まった頃に再訪しました。撮影に協力してくださる入浴客がいたらラッキーなので、海の岩風呂「崎の湯」へ。施設のスタッフに尋ねると「女湯のほうに香港の方がおひとりだけ入ってます」とのことでした。

覗いてみると若い女性が一人、海を望んで湯船に浸かっておられます。スタッフの女性に雑誌のバックナンバーを渡すと、「ジャパニーズマガジン! カメラッオッケー?」と交渉してくださり、香港からの客人は気さくに「オッケー」と……。「わたし、もうお風呂の撮影には入りませんので」と各所でゴネているライター(私ですけど)には彼女の背中がまぶしい。

無事にメインカットの撮影を終え、続いて宿泊施設や飲食店などをまわり、その日の撮影が終わったのは夕方でした。予約していた宿は清水さんと同室で、ツインルーム食事なし2人で13260円。(白浜温泉の宿でシングルを探すのは難しいです)
館内に掛け流しの温泉もあるのですが、外湯もあちこち体験しに行かねば。そう思って朝一番に撮った「白良湯(しららゆ)」に、一人でぶらぶら歩いて行きました。

脱衣所で着替えていたら、地元のおばあさんに「あんた、シャツ裏返ってるんちゃう?」と指摘され、あつくお礼を言ったら気をよくしたのか世間話が止まらない。(おばあさんとの会話も原稿の中に入れますが、コメント部分は別の言葉を採用予定です) 白良湯は地元の人が多くて、古き良き温泉町の人情が感じられていいですね。いいんですけど、愛想よく相槌を打つのに疲れてしまった。(職業柄、見ず知らずの人の話は必要以上に笑顔で聞く)

白良湯を出たら基本のぶすっとした顔に戻り、コンビニでビールとバナナを買って夕日を見ながら宿に帰りました。

部屋に戻ったら清水さんが浴衣姿でパソコンに向かっておりましたので、私もベッドの上でバナナを食べながら仕事をすることに。結構な長時間労働です。作業に飽きると「明日のお昼は何食べます? ご褒美ランチ探してよ」と清水さんに絡みつつ。
その後、二人ともぐったりして就寝。

翌朝、清水さんが部屋の窓から下を見て、「あそこにおばちゃんが立ってるんですけど、朝市ですかね?」と道路脇を指差しました。
「ほら、ビニール袋持ってみんな集まって来てるし」
「魚とか売りに来てるんですかね? 撮影に行きましょ!急ごう!」
私も慌てて浴衣を脱ぎ捨て、着替えていたら再び清水さんが
「あれ? 誰もいなくなった」と窓辺で言いました。
「え?」
「もしかして朝市じゃなくて、ゴミ捨て場? ゴミの分別をしてたのかも」
なにそれ、と思いながら現場に行ったらほんとにゴミしかなかった。朝市の写真が欲しいという願望と、前日からの疲労で共に幻覚を見たのかもしれないです。

 (写真・清水いつ子 文・北浦雅子)

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