直感と論理をつなぐ思考法 参考文献リスト

この本は、実に構想から二年半以上時間をかけて書いた本です。

そんなにかかってしまった理由としては、単純に筆の進みが遅かったのもあるのですが、内容については自分の経験則を元にしながら、脳科学、経営学、デザイン学、心理学、アートなど様々な分野の世界の学問・実践の参考文献の原点に当たりながら、何かしらエビデンスが見つかったものを骨子にして書いたこともあります。実際には以下の脚注の3倍くらいの論文や書籍は読んだのですが、その一部を書籍にしました。

実際に、この本を書く中ですでに別の書籍等で参考文献として紹介したい本も出てきておりますので、今後アップデートされていく生きたレファレンスとしてオンライン上に公開しておきたいと思います。

本ではアクセスしにくい、各論文やウェブサイト、書籍へのリンクもつけておりますので、もしこの本を読んで原典に当たりたい方は是非とも見てみてください。

■序章「直感と論理」をめぐる世界の地図

(1)2016年のダボス会議から、もともと軍事用語だったVUCAという言葉が使われるようになった。「敵の全体像も戦場も明確ではないテロやゲリラ戦(機動戦)を戦うように、IT化したビジネスも、目に見えない予測不能な環境で戦わないといけなくなった」という状況を啓発する用語として使われている。
(2)僕はP&G時代に戦略思考を学んだ。そのエッセンスをまとめたバイブルとして、次の書籍をオススメしたい。▼音部大輔『なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる』宣伝会議
(3)デザインスクールのキャリアを考える人におすすめしたいブログ。▼佐宗邦威「D school留学記―ビジネスとデザインの交差点
(4)デザインを学んだことがない人に、デザイン思考のエッセンスを学んでもらうのを目的で書いた本。英語版・韓国語版など4カ国語で翻訳されている。▼佐宗邦威『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』クロスメディア・パブリッシング
(5)Papert, S., & Harel, I. (1991). Situating Constructionism. Constructionism, 36(2), 1-11.
(6)「【入山章栄×林千晶】経営がデザインを求めだした理由」NewsPicks (2018/7/14) 

■第1章 もっとも人間らしく考える

(1)人生に迷ったときの名著としてぜひとも読んでほしい。さらに知りたい人は次の英語の論文もオススメ。▼ウィリアム・ブリッジズ(倉光修・小林哲郎[訳])『トランジション―人生の転機を活かすために』パンローリング/▼Hunter, Jeremy. (2014). The Scary, Winding Road Through Change. Mindful, October 2014, 70-77.
(2)プロボタイプとは「Provocation+Prototyping」から成る造語で、周囲からのフィードバックを目的につくられる、新たな考え方を表現した最小限のプロトタイプのこと。短い時間と限られた予算のなかでつくるため、試作品としての完成度は度外視される。Speculative Design(世の中に概念を問いかけるデザイン手法で、ヨーロッパでとくに盛ん)の作成過程で使われることもある。Moving prototyping into "provotyping" by Stratos Innovation Groupの記事がわかりやすい。

■第2章 すべては「妄想」からはじまる

(1)Loewenstein, G. (1994). The Psychology of Curiosity: A Review and Reinterpretation. Psychological Bulletin, 116(1), 75.
(2)北野宏明「Moonshot型の研究アプローチの本質とは」SONYウェブページ 
(3)OKRとは、目標設定の制度そのものが人材の自律性と創造性を高めるよう、目標管理制度を変える汎用性の高いアプローチ。BIOTOPEでも取り入れている。OKRについては次の書籍をがおすすめ。▼クリスティーナ・ウォドキー(二木夢子[訳]。及川卓也[解説])『OKR―シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』日経BP社
(4)ゲイリー・ハメル「新時代へ向けた25の課題―マネジメント2・0」『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』2009年4月号 
(5)ティール組織とは、フレデリック・ラルーによって提唱された21世紀型の組織論。つねに進化し続ける目的(Evolutionary Purpose)を持ちながらも、メンバーの全体性と自律性を重視して運営される組織のこと。インターネット時代だからこそ生まれた新たな組織論だと言える。▼フレデリック・ラルー(鈴木立哉[訳]・嘉村賢州[解説])『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』英治出版/こうした目的に応じた組織マネジメントの方法論については、次の記事も参照。▼佐宗邦威「組織の存在意義をデザインする―パーパス・ブランディングを実践するために」『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年3月号
(6)スタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」は、さまざまな新プロジェクト誕生につながると同時に、ソニーが全社的に「新たなものを生み出す」というDNAを取り戻すうえで貢献した。当時の社長による回顧録「ソニー社長『どん底からの復活』を語る 平井一夫」(「文藝春秋」2017年10月号)でも冒頭で触れられている。SAPについてはこちらも参照。
(7)デザインの世界では「アフォーダンス」という言葉が注目されることがある。これは、アメリカの生態心理学者ジェームズ・ギブソンが提案した概念であり、「環境の側が人間や動物に意味を提示し、行動に影響を与えること」を意味する。たとえば、ガラスのコップは、「冷たい飲み物を注ぐ」という動作を人間に対してアフォード(提示)している。これと同様に、机の上に置かれたまっさらなノートは、「自分モードで書く」という行為を僕たちにアフォードしている、自分の生活環境のなかに「紙のノート」を取り入れることは、「ジャーナリングのためのアフォーダンス」をデザインすることにほかならない。
(8)僕は以前、畳半畳の世界で1週間にわたって坐禅を続ける内観の場に参加したことがある。その際、「すべてのマイナスの感情を書きなぐりながら自分を振り返る」というセッションがあったが、これの効果は抜群だった。つらい日々のなかでがんばっている人は、ぜひ一度やってみてほしい。
(9)たとえば、「年末」は振り返りをするのに最高のタイミングだ。チームメンバーや友人と一緒に行う毎年の振り返りについては、次の記事の方法が参考になる。何を隠そう、この振り返りフォーマットは、同記事の執筆者であるICJ吉沢康弘氏と毎年の振り返りをするなかで、かつて僕が作成したものである。▼40人のビジネスパーソンが絶賛した『1年の振り返り』完全マニュアル/未来を変えるプロジェクト 
(10)Papert, Seymour. (1980). Mindstorms: Children, Computers, and Powerful Ideas, Basic Books.
(11)Wilky, B. A., & Goldberg, J. M. (2017). From Vision to Reality: Deploying the Immune System for Treatment of Sarcoma. Discovery Medicine, 23(124), 61-74.

■第3章 世界を複雑なまま「知覚」せよ

(1)安宅和人「知性の核心は知覚にある」『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』2017年5月号
(2)入山章栄「『未来はつくり出せる』は、けっして妄信ではない」『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』2016年10月号
(3)この内容に興味を持った方は、次の名著もぜひ参照してほしい。あなたが使っていなかった脳の可能性への扉が開かれるだろう。▼ベティ・エドワーズ(野中邦子[訳])『決定版 脳の右側で描け』河出書房新社
(4)石橋健太郎・岡田猛「他者作品の模写による描画創造の促進」『認知科学』2010年17巻1号196~223頁
(5)McKim, R. H. (1980). Thinking Visually: A Strategy Manual for Problem Solving. Lifetime Learning Publications.
(6)村山斉「天才たちが数式の前に必ず〝絵〟を描く理由―新法則は『スケッチ』で思いつく」プレジデント・オンライン(2017年8月26日)
(7)Suwa, M., & Tversky, B. (1997). What do Architects and Students Perceive in their Design Sketches? A Protocol Analysis. Design Studies, 18(4), 385-403.
(8)Norton, J. D. A Peek into Einstein's Zurich Notebook. (2008/6/24; 2012/6/20) 
(9)James Gibson・小林茂・鈴木宣也・赤羽亨『アイデアスケッチ―アイデアを〈醸成〉するためのワークショップ実践ガイド』BNN新社
(10)McKim, R. H. Experiences in Visual Thinking: General Engineering. Brooks/Cole.

■第4章 凡庸さを克服する「組替」の技法

(1)Nagji, B., & Walters, H. (2011). Flipping Orthodoxies: Overcoming Insidious Obstacles to Innovation: Case Study. Rotman Magazine, Fall 2011, 60-65.
(2)「ヤフーCSO安宅氏が語る、『〝凝縮〟と〝弛緩〟の狭間でクリエイティビティは生まれる(【特別対談】Yahoo!安宅和人氏×入山章栄氏×佐宗邦威氏:後編)』Biz/Zine(2016/10/17)
(3)「メタファーとアナロジー」は、デザイナーの学生たちが卒業直前に履修する超人気授業だった。僕の所属課程では単位認定されない科目で、毎回の授業に「もぐる」かたちにはなったが、実際そうしてよかった。そのくらいパワフルな武器になる。ビジネスとデザインの交差点ブログより。
(4)Bar, M. (2009). The Proactive Brain: Memory for Predictions. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences
(5)Oatley, K. (2016). Fiction: Simulation of Social Worlds. Trends in Cognitive Sciences, 20(8), 618-628.
(6)アナロジーを覚えたてのころ、次の本を貪るように読んだ。1978年発刊の古い本だが、世の中の似たものをビジュアルで対比しながらアナロジーの世界に誘ってくれる名著である。▼松岡正剛[構成]『相似律(「遊」1001号)』工作舎

■第5章 「表現」しなきゃ思考じゃない!

(1)Kay, A. (1972). A Personal Computer for Children of All Ages. presented at the ACM National Conference, Boston. 
(2)Wujec, Tom. (2010). Build a Tower, Build a Team. TED2010. 
(3)Dow, S. P., Heddleston, K., & Klemmer, S. R. (2009). The Efficacy of Prototyping under Time Constraints. In Proceedings of the 7th ACM Conference on Creativity and Cognition: 165-174.
(4)Brown, Sunni. (2011). Doodlers, Unite!. TED2011. []
(5)濱口秀司「アイデアが生まれやすい脳の状態とは?―クリエイティブをマネジメントする方法」ログミー 
(6)ハリウッド流の脚本術については、こちらの資料に詳しい。▼Philip Lee「『ハリウッド流ピッチトレーニング』講義録」(平成22年度コンテンツ産業人材発掘・育成事業 プロデューサーカリキュラム) 

■終章 「妄想」が世界を変える?

(1)岡田猛・横地早和子・難波久美子・石橋健太郎・植田一博「現代美術の創作における「ずらし」のプロセスと創作ビジョン」『認知科学』2007年14巻3号303~321頁
(2)Gardner, H. (2011). Truth, Beauty, and Goodness Reframed: Educating for the Virtues in the Age of Truthiness and Twitter. Basic Books.


■本書の理解を深めるであろう関連書籍

直観の経営 「共感の哲学」で読み解く動態経営論
野中 郁次郎、 山口 一郎 | 2019/3/28

日本を代表する経営学者と哲学者の視点から、知識を生み続ける経営とその背景にある哲学としての「現象学」のモノの見方についての本。重厚な内容であり、同時に位相が違えどほぼ同じ現象を表現しているように感じた本です。本書を哲学的な視点、経営学的な視点で捉え直したい方にはオススメの本

クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育 (リアリティ・プラス) 単行本 – 2019/2/23
井庭 崇 (著, 編集), 鈴木 寛 (著), 岩瀬 直樹 (著), 今井 むつみ (著), 市川 力 (著)

こちらは、本書でも取り上げた構成主義や構築主義についての認知心理学や、教育学など学習理論の視点から理論から実践まで書かれている書。内容は重厚だが、非常に包括的で読みやすい。創造学習についてより専門的に深掘りしたい人にオススメの本。

突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる      単行本 – ロベルト・ベルガンティ (著),

1. 自分:ストレッチ 自身の仮説を、批判精神を持って、深め、広げる    2. ペア:スパーリング 信頼できるパートナーとペアを組み、疑問をぶつけ合うロベルト・ベルガンティ (著),
3. ラディカルサークル:衝突と融合 複数のペアが集まり、異なる仮説を比較、融合する
4. 解釈者:問いかけ 共通のビジネス戦略を持ち、異なる視点を持つ専門家から意見をもらう
5. 顧客・人々:実践 プロトタイプをつくり、実際に使用してもらう

というプロセスで意味のイノベーションを生むこと。個人の内発から新たなイノベーションを生んでいく概念を提唱した本。

*以後どんどん追加していく予定です。

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