vol.1とかつけたけど不定期です。
時間があるときに、その時印象に残った質問に答えていきます。

今回は編曲の話。
そもそも編曲ってなんだよって話から行きますね。
日本語の「編曲」というワード、ちょっと英訳してみると３つの意味に分かれます。

１． Transcribing (Transposition)

２．Orchestration

３．Arrangement

です。
それぞれ説明していきましょうね。

１． Transcribing (Transposition)
これは楽譜を書いてみたいと思ったことがある人や楽譜を書かなきゃいけない必要に迫られたことがある人はやったことがあるんじゃないですかね。
直訳するなら書き写し（移調）ピアノソロの楽譜からヴァイオリンとピアノでできるようにメロディだけ抜き出してヴァイオリンの楽譜を作る、みたいな作業です。
弦楽四重奏の楽譜をサックス四重奏に書き換える、みたいなね。
楽譜の読み書きさえできれば必要な知識、スキルは十分です。
これをツマンネー作業だなぁって思う人はプレイヤー向きのミュージシャンです。安心してください。世の中の９割強のミュージシャンはツマンネーと思ってます。
面白いと思っちゃった人、おめでとうございます。ミュージシャンでありながら脚光を浴びない黙々とした作業が好きな作編曲家向きの変態紳士淑女です。こちら側にようこそ。

２．Orchestration
そのまんま管弦楽法。
編成が大きくなってくると「お前うるせーよ！」「お前の音が小さすぎんだよ！」「お゛ぉ！？やんのか！？！？！？」みたいな事故が結構起きます。
ところでこの喧嘩、どっちが悪いんでしょうね？
そりゃあんた、mpのフルートのソロの後ろのバチバチにかっこいい伴奏を金管全員に割り振ったオーケストレーターが悪いに決まってるじゃないですか。
こんな感じで、メロディがこの楽器でこんなタッチなら伴奏にあの楽器は使えねぇな～みたいなことをうまーいこと調整して割り振っていく作業です。
ここまで読んで「PAみたいだな」と思ったそこの貴方、そのとおりです。
PAがなかった１９世紀後半から２０世紀中盤までの時期に、１００人もいるオーケストラをなんとかしようとしたのが管弦楽法です。

３．Arrangement
これが本来の編曲じゃないですかね。
１．も２．も、実は音の並び自体はいじってないんですよ。
例えばこんなピアノの楽譜があったとしましょう。

ピアノをちょっと弾けるようになってきた学習者に与えられる事が多い名曲ですね。
ピアノ的にはそのくらい「そんな難しくないイーカンジの曲」です。
これをヴァイオリン２本でやろうぜ！ってことでこれをそのまま上の五線を１st、下を２ndにすると、２ndは「完全５度の移弦は・・・できなきゃいけませんよねがんばります・・・」となるわけです。（ヴァイオリン属は完全５度の上下行の連発があんまり得意ではない）

という問題がね、いろんな楽器が集まるとあっちこっちで起きるんですね。
じゃあやりやすくてかつ曲を損なわない形に書き換えちゃえばいいじゃん、ってのが編曲の本来の形です。
Arrangementって整理とか手配って意味ですからね。

手配の方の意味を考えますと、メロディとコードだけ出来上がってる楽曲に「ギターさんこれ弾いてくださいね」「ベースさんはこれでよろしくね」と手配していくって感じです。

・・・・・・ちょっとまて、テイストを大きく変えるあの作業がアレンジじゃないのかって？
日本語だとそんな印象ありますよね。
新曲であればテイストを決める、あるいは既成の楽曲なら原曲から大きく変える旗振りをするのはプロデュースの範疇です。
それを受けて整理や手配をするのがアレンジです。
プロデューサー兼アレンジャーという人も結構いるので混同されやすいんですね。有名ドコロだとMichael Jacksonのプロデューサー兼アレンジャーQuincy Jonesがいます。
自分も日本でやってる作編曲家なんで混同されてるとこはよく見かけますし、それで慣れて疑問も文句も特にないんですけどね。（ないとは言ってない
じゃあアイドルのプロデューサーは何なのかって？あれはA&Rとかマネジメントという仕事で・・・脱線するのでこの話はやめましょう。あれも大切な仕事ですよ。

まとめ
ぶっちゃけプロデュースまで含めて全部ひっくるめて編曲でいいです。
一人でやってる分には区別しなくてもいいと思います。
ただ、編曲を誰かにお願いするときお願いされるとき、どれを求めるのか求められてるのかを読み違えると結構めんどくさいことになるので気をつけといたら得します。

１４ツイート分くらい文字数書いちゃったんでこのへんで終わり！