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裁判長を殴った少年T川(19)

少年の死刑、無期懲役判決の記事を見ていると大体の少年が判決時に『意気消沈して青ざめる』『心ここにあらずで無表情』のどちらかに分かれて、まれに『強がって平然を装う』『ニヤリとする』といった感じの少年がいるだろうか。
今回はそうじゃない少年の話を記事にした。

凶悪な連続ピストル強盗犯

昭和34年12月21日深夜1時ころ、和歌山県東牟婁郡熊野川町の農協の事務所にピストルを持った男が押し入り宿直していたOさんを脅してサルグツワを咬まして電気コードで縛りつけて現金約1万4千円とカメラを奪い逃走。
同月28日深夜1時には同町の雑貨商Hさん方に押し入りHさんの母親にピストルを突きつけて現金6万円と衣類を奪い、更には翌年1月8日深夜零時にも奈良県で雑貨商方に入り次男に見つかったのでピストルを突きつけたが隣家に気づかれたために逃走し、追ってきた次男を舟竿で殴打し死亡させ同日午後4時に逮捕された。
逮捕されたのは住所不定無職の少年T川(19)だった。

病院から逃走し、またもやピストル強盗

T川は田辺家裁に送致後に同年2月5日に和歌山地裁田辺支部に強盗致死と強盗の罪で起訴され田辺拘置支所に収監。公判の予定も決まっていたが、房内で苦しみだし盲腸炎と診察され一週間の拘置執行停止になり紀南病院に収容された。
同年3月21日にT川はその病院から抜け出し、彦根市でまたもやナイフとおもちゃのピストルを持って押し入った所を取り押さえられてご用となった。
すぐに手術の予定が白血球の数が少なく経過を見ていた状況だったが病室が1階でトイレの横だったこと、カーテンで仕切られているだけだったこと、拘置所からT川の手術費用のための所持金が病院に届いたこと、病院の一部の人しか重罪被告人ということを知らなかったなどが重なったためだったが、地検田辺支部長は「刑訴法上では可能だが病室に看守をつけるにも人手不足。拘置所も所持金を渡すのに慎重になってほしかった。」となんだか責任逃れな感じの話ではある。

無期懲役の判決に激昂し裁判長に襲いかかる

昭和35年8月1日、和歌山地裁田辺支部にてT川に求刑通りの無期懲役判決が言い渡された。
判決文が読み終わるかどうかの時に「よくも無期にしやがったな!」と裁判長席に駆け上がり右手で殴りかかり裁判長の右腕を殴打し暴れ、判事や看守三人に取り押さえられ「ぜったいに逃げてやる!」と叫びながら退廷させられた。

※その後の記事が見つからないが無期懲役が確定したと思われる。

参考元【昭和35年の和歌山新聞】

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