S.Y.U.K.U.M.E.I. -宿命-

突然ですが、私は結構な老け顔でして。生まれてこの方、年相応に見られたことがありません。中学生の頃には大学生に見られ、高校生の時には社会人、新社会人の頃には中堅ぐらいの扱いを受けてきました。
声も低めなので、ネットの人や電話でしかやり取りをしていない業者さんなどからは40代に思われていたことも多々ありました。

(年上に見られるというのは、社会人でキャリアを積むにはメリットでしかなかったので、結果的にはヨシ!)

それが原因なのかは分かりませんが、よく(知らない人も含め)相談をされます。私自身は普通に接しているつもりだけど、会話をしているとなぜか自然とみんな自分の悩みや人に言えなかったことを私に話してくれます。

今振り返れば、大学生に見られていた中学生だった頃。
私の生活環境が変わったことを過剰に心配した当時の担任が、スクールカウンセラーを手配してくれていたことが始まりでした。

鬼のようなルールがあるソフトテニス部で鬼のような汗を流していた私は、突然の呼び出しに「(部活サボれるー!!やっぴー!!)」と思いながら担任のところに向かいました。

担任「さすらいさん、今日カウンセラーの人が来てくださっているから、お話してみない?」

私は「(な、なぜ?カウンセラー??元気だが?フゥン….。まぁ、でも先生がなんか気を遣ってくれたんだろう…でもそんな個人の問題に学校が関与?してどうにかなるのか?まぁいいや。どうかするのも先生の仕事なのだろうし…部活の坂ダッシュサボれるし…)」

みたいなことをゴチャゴチャと思いながら適当に箱庭療法?とかいうのを受けながらカウンセラー(30代・男性)と雑談をしていた。
すると、本当に何がきっかけかは分からないんだけど、いつの間にかカウンセラーがボロボロと泣き出し……

カ「僕の祖母が老人型うつ?っていうんですかね…そういうのになってしまって毎日病院から電話がかかってくるんですよ…それが辛くて…うっうう…」
と言ってきた。

私は内心「(エッ!なぜ?どした!?)」と思っていたが
「そうなんですか…それは先生もきついですね…..」と言った。

子供ながらに「(全然いいけど、立場が逆では????)」と思いながら中学生なりに頭をフル回転して相槌を打った。
さすがに成人男性の涙を茶化すこともできないですしね…

結局1時間ほど、その人の愚痴?みたいなのを聞いて「なんかごめんね…聞いてくれてありがとう…」という逆・締めの感謝でその時間は終わった。

ちなみに箱庭で枯山水を再現していたのですが、見向きもされなかったです。

カウンセラー後、担任に報告すると、感想を求められたので、正直に起こった話をした。

「なんかカウンセラーの方が辛そうで、そっちの話がメインになってましたね…でも私特に悩んでないんで!全然大丈夫です!」と。

担任は「そ、そんなカウンセラーなのに…」と絶句しており、色々詳細を求めてきたが人の愚痴ってかなりセンシティブなのでそのまま言うのは良くないなと思い、なんとなく濁して伝えた。

すると担任が「じゃあ私がさすらいさんの話を聞くわ!」と言い出し、私はまた職員室の隣の事務室?みたいな部屋で今度は担任と話すことになった。

私には本当に悩みがなかったのでなぜこんなにも担任から気に掛けられているのか分からなくて、自分が思っているより私は変なのかな?と不安になっていた。
※悩みがないというか、気にしてもしょうがないから考えないようにしていた。

思わず担任に「先生、私ってどこか変なところがあるんですか?私ってなんか迷惑かけてますか?自分で思い当たらなくて、もし迷惑かけていたらごめんなさい…」と言ったが、なんかそこはスルーされた…(どうして?)

スルーされたことも相まって「(え?私ってマジで頭のおかしいやつなのかも…とりあえず先生と話してどこが変なのか教えてもらおう…)」と向かい合わせになって10分後──

これまたきっかけはわからないが、今度は担任がカウンセラーと同じようにボロボロと泣きながら悩み(母親との確執?)を相談してきた。
最初は雑談だったはずなのに…..私は適当に相槌を打っていただけなのに……担任が涙を流し悩みを吐露している。

あまりにも先生が泣くので、なんだか私も一緒に泣きたくなったが、「(人の悩みにリンクして泣くのは…なかなか出来んね!)」と思い、他の先生を呼びに行きその会合?は中止になった。

後日、他の先生から注意を受けたであろう担任が私に謝ってきた。
私は「(泣きたい時なんて誰でもあるのに、生徒の前で泣くだけでそれなりの問題になるのはかわいそうだな….)」と思い、「全然!大丈夫ッス!もう忘れました!」と答えた。

ちなみにその先生はそれから本当におかしくなってしまい、私に執拗に「お前も悩みがあるはずなのに何を意固地になっているんだ!私を馬鹿にするな!!」と発狂して学校を辞めた。

そんなこんなで老け顔+相談しやすい顔である私はこの日を境にたくさんの相談事を受けることになりました。

他の先生や、ある時は同級生の親御さん…。またある時にはなんとシスターからも…(アメーン)

解決策を見出すことができない相談の場合は、話をよく聞いてうなづいて、調べ物が必要な場合は一緒に調べました。
私よりも歳が上の人たちがまるで同世代かのように私に接し、深い話をしてくれました。

そんな人の相談を適度に受け続け、21歳になったある日。
横浜で働いている兄貴から「合コンのメンバーが足りないから妹であるという事実を隠して参加してほしい。」と頼まれた。

女性が足りないので、妹を参加させる兄…(嫌すぎでは??)

でも面白そうだったので参加した。

銀座コリドー街のコートダジュールで行われたその合コンは男女6人ずつのまぁまぁな大所帯でだった。誰ともマッチする気のない私は適当に話を合わせて、なぜか勝手に頼まれたシャンディガフをガブガブと飲んでいた。

すると、どういう流れでそうなったのかは覚えていないがいつの間にか向かい合わせだった席が移動され、私はお誕生日席に座りみんなの相談を順番に聞いていた。当の兄貴は酔っ払ってなぜか合コンに持ち込んでいたアルトサックスで三代目J Soul Brothersの「R.Y.U.S.E.I.」(リュウセイ)を弾いていた。

何これ??????

「(あれ…合コンってこんなだっけ…..?)」と思ったけど、相手は真剣だったから真面目にきいた。
流石にこの時は「(ワイって…相談役の才能があるのかも...)」と思った。それと同時に「(これお金取れるな)」と悪魔が囁いた。

詳細は省くがこの時に芽生えた好奇心で私は後日、ある人から合計5万円の報酬を受け取りそうになった。
いつものように話を聞いていると、話が段々と深刻なっていったので、調子に乗って「フゥン…この後は課金してくれないと…時間もないし、私にも色々あンだわ!」とウシ●マくんのように焚きつけると、その人は簡単にお金を出してきた。なんの抵抗もなく財布から出てきた諭吉が怖くて仕方なかった。


コワすぎ…………….。この時ばかりは自分がコワかった。


自分で金銭を匂わせたくせに自分に嫌気がさして、申し訳なさでいっぱいになった。無邪気でいやらしい好奇心に私自身が耐えきれなかったのだ。
最終的に私が罪悪感で大泣きしてしまい、そのお金は全額相手に返した。

私は自分のことを多動でとにかく騒がしい人間だと思っているんだけど、人は私のことを「しっかりしている・落ち着いている」と褒めてくれる。
全然そんなことはないのだけど…

きっとそれはこれまでいろんな人の相談・愚痴を聞いて「人にはそれぞれの地獄がある」と言うことを早い段階で理解していたからかな…と思う。
なので、こんな自分でよければ出来るだけ話を聞くようにしている。

つい最近東京時代の友人(と言っても結構年上)からかなり複雑な家系の相談をされた。これが本当に厄介な話で、「(なんでこんな話を高校の数学を仮進級で卒業したワイに…)」と思ったが、大事な友人なのでできる限りのことはしてあげたいなと思っている。

もはや顔が老けているとか関係なく、宿命のような気がしてきた。
老け顔を持つものの宿命として─

ちなみにアルトサックスで「R.Y.U.S.E.I.」弾いていた兄貴は、合コンの女子メンバーから「こっちが真面目な話してんだからそのうるさい音止めてよ!!!!!」と叱られていました。どんまいニキ…!

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