新しい挑戦は単調作業の連続だったりする

今週の「Go Around the World」は、豊田圭一さんがお休みだったので、僕が好きなゲストを呼んで話す会になり、世界を飛び回るゲストということで、現在公開中の映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のExecutive Producer福原秀己さんに来てもらいました。

福原さんは、僕が前に勤めていたメリルリンチ時代で代表取締役副社長まで勤められた大先輩で、10年前に突然「僕の夢はアカデミー賞のレッドカーペットを歩くことだった」と言って金融業界を去り、ハリウッドに乗り込んでいかれました。

本番の4時間前から会っていたので、いろんな話しをしたのですが、一番印象に残ったのは、仕事への取り組み方についてです。福原さんは新しい取り組みをたくさんされる方で、金融では事業法人営業や投資顧問を他に先駆け始められたり、「クールジャパン」なんて言葉の前から日本のコンテンツをアメリカだけでなく、ヨーロッパにも売り込まれたりと、その新しいものを始める力はなんなのかについてです。

そこで聞いた意外な答えは「僕は単純労働に強いんだよ」でした。

「他の人が嫌だなと思うような単純作業がちっとも嫌じゃない。例えば、この前、孫のジクソーパズルのピースがひとつ無くなったんだけど、点数稼ぎのためにそのなくなったピースを一から作ったんだよ。ボール紙を伊東屋で買ってきて、それを重ねて、ちょうどいい厚さにして、カラーコピーを重ねてピッタリになる形にして、更にそれをコーティングして完成。一日仕事。これ他の人だったら面倒だよね。僕はなんでもないんだよ、こういうことが」
「だからね、新しいことに挑戦しているようで、実はフィールドを変えているだけ。自分がやっていることは同じ。他の人が面倒だと思うようなことを、引き受けて淡々とそれをやっていたら、それなりの評価をもらえる。もちろん評価っていうのは、人からの評価も大事だけど、自分に対しての評価の方が大切。それが自信になるから」
「あとね新しいことに取り組むと自分の新しい長所が見えてきたりする。それも楽しいよね」

僕はメリル時代に福原さんから「大きなディールも小さなディールも手間は同じ。だったら、大きなディールをやった方がいい」と言われていたのを思い出しました。この一言は、いかにも20世紀の金融業界っぽいんだけど、今の福原さんにとっては、トム・クルーズが主演する映画のプロデューサーをすることも、お孫さんのなくしたパズルのピースを作ることも、同じ仕事で、同じだけ大切なことなのだろうと思いました。

そしてドラッカーの「全ての偉大な事業も、日々の単純作業の積み重ねでできている」という言葉が頭をよぎったのでした。

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