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リリーの子犬達

サティが6歳の頃
うちの小さな庭で白い雑種犬の
リリーが子犬を産んだ。
サティは母親と一緒に介助の手伝いをした。
目の前でリリーは苦しみながら一匹一匹
全部で六匹産んだ。

最初に出てきたのは丸々とした
可愛い白い子犬だった。
二匹目も元気な茶色い子犬だった。
三匹目は白と茶色のまだらの
少し小さな子犬だった。
四匹目位からなんだか弱々しい
小さく細い子犬になってきた。
五匹目はガリガリの小さい
目も開かないような子犬だった。
六匹目は悲しいかな死んで生まれてきた。


その日から母親犬リリーと一緒に
子犬達の成長を見守る日々がスタートした。


一番目と二番目の元気な子犬達は
いつも一番よく出るオッパイにありつく。
ゴクゴクいっぱい飲んでドンドン育つ。
次は三番目。
四番目五番目の子犬は
オッパイにも辿り着けず
大きな子犬達に押されてヨロヨロしている。
サティは可哀想になり
リリーのよく出るオッパイに近づけるのだけど
吸い付くエネルギーも乏しいし
すぐに押されて大きな子犬達に奪われる。

月日が経つにつれ
その弱肉強食さは目に見えて
身体の大きさは歴然たる差がついた。
上の二匹はコロコロ可愛く
三番目はギリギリ生命力があり
四番目五番目は小さくガリガリで動きも遅い。
サティは『おーい。しっかりしろー』と
いつも応援していたが
当の子犬達から
生きるガッツみたいなのが感じられず
いつまでも弱く小さいままだった。


世の中生まれつき元気な子もいれば
病弱な子もいる。
強靭な肉体を持ち
力強く明るく生きる人もいれば
虚弱体質で自信無さげで
俯きながら生きる人もいる。
あのリリーの子犬達みたいに
生まれながらにしてこの世は
本当に不公平だ。


あの子犬達を見ていると
生まれながらにして見えている世界も
違うように思えてならない。
元気な子は世界を明るく観
虚弱な子は世界を暗く観ている。
一方は生きやすく
もう一方はとても生きにくい。


同じ場所で同じ日に同じ母親から
産まれた兄弟なのに
これから生きる未来は全然違う。
これはいったいどういうことだ。

サティは健康優良児ではなかったが
大した病気もせず
いわば三番目の子だ。
だけど不思議とサティと仲良くなる友達は
四番目五番目の子。
頭痛持ちだったり喘息体質だったり
すぐお腹を壊したりデリケートで
いつも薬を手放せない。

サティは四番目五番目の人が好きだ。

きっとサティも三番目風でありながら
四番五番に近いのだろう。


四番五番の魅力は何といっても
思慮深さだ。
肉体の自由がままならないから
じっと動かず深い思索に耽っている。
人間動かないとネガティブになるらしいが
やはり至ってネガティブだ。
だけどネガティブの何が悪い!
彼らは痛みや自分の弱さを知っている。
だからとても優しい。
とにかく話していて楽しいのだ。


思い起こせば人生で
あまり一番二番の子達とつるまなかったな。
元気で明るく痛快な姿が
羨まし過ぎて
筋肉バカとかセンスのない奴などと
陰口叩いて妬いていたな(笑)


努力が云々、気の持ちようが云々
叱咤激励されても
どうにもならないことは
どうにもならない。


この世は生まれながらにして
見事に不公平。

あのリリーの子犬達と一緒。

この不公平さに帳尻合わせるアイデアは
この条件で今世生きてみようと
天から決めて生まれてきた!
自分で選んだチャレンジだ!
という論理しか成り立たない。
厳しい条件下で生まれてきた人は
超難易度の高い上級者コースを
志願してきた勇者。
自己鍛練、克己心に篤い魂。


そうでなけりゃ
つじつまが合わない。


実際サティはそう思う。

厳しい条件下で生きてる人は
本当に魅力的な人が多い。
生まれながらにして
深い眼差しを持っている。
さすが上級者コースの志願者だ。


健康云々、家庭環境云々
才能云々、容姿の美醜云々
こうなればキツイ条件下の元で
耐え忍び生ききってやれ。
結果がどうとか勝ち負けがどうとか
意味が有る無し関係ない。

その与えられた条件を引き受け
逃げずに今を生き抜いてやる。
その中で見える世界、感じる世界を
思い存分楽しめばいい。


負け惜しみじゃなく本心で
そう思えた人は真の勇者だ。
この世の不条理を笑って凌駕する
真の勝者なのだ。




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最後まで読んでくれてありがとう(*^^*)♪

またサティに会いに来てねー(^з^)~.:*:・'°☆



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